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ネタニヤフ氏がベネット政権崩壊を高評価
ベネット首相と、ラピード外相の突然の国会解散の発表を受けて、おおいに喜んだのは、リクードの前ネタニヤフ首相と右派勢である。ネタニヤフ氏は、「市民にとってすばらしいニュースだ。イスラエル史上最悪の政府が終わった。これから、リクードが主となって、幅広い政権を導いていく」と述べた。
また、ネタニヤフ氏は、もし今、リクードに背を向けている右派議員たちが、戻ってくることが確実となれば、総選挙を待たずに、国会で過半数を持つ代表として、大統領の指名を受けて、新ネタニヤフ政権を設立する可能性にも言及した。
来週、ベネット政権が、国会解散法案を提出する前に、今与党にいる右派勢を説き伏せ、リクードにつかせることで、過半数を実現できれば、それで大統領から組閣を勝ち取る可能性はありうるということである。
www.ynetnews.com/article/rj3behay9
ネタニヤフ氏首相復活なるか
これまでのベネット政権が、8政党もの多種多様な政党が一つになった大きな要因は、実は、汚職、背信疑惑で刑事訴訟の中にありながら(ネタニヤフ氏はこれを否定)、首相の座に12年も居座っていたネタニヤフ前首相を、その座から下すという一点から始まっていた。当初はそのために、それぞれの党が妥協も受け入れたのであった。
ベネット政権は、ネタニヤフ氏が、首相に返り咲く機会をなくすことを目標に、刑事訴訟にある人物が首相になれないとか、首相は2期(8年)までとの法案を成立させることを目指した。しかし、根強いネタニヤフ支持派の圧力もあり、最高裁が間に入るなどして、達成するには至らなかった。
一方、政府内部からは、これまでの功績をかんがみ、栄誉ある大統領になる道も提示され、その場合は、訴訟も反故になるといった話もあった。しかし、ネタニヤフ前首相は、これに応じず、エルサレム地方裁判所に汚職、背信などの罪で出頭し、被告席に一人立つ様子まで報じられたのである。
しかし、そこまで追い詰めらても、また、かつては自分の部下であり、若輩と言えるベネット首相の後ろに座る野党になってもなお、ネタニヤフ氏は、まだ政治から降りようとはしなかった。実際、ネタニヤフ指示派も以前強く、国会でも、リクードが29議席と最大議席数を維持している。
とはいえ、29議席では、過半数にはほど遠い。ユダヤ教政党や、極右までが加わってもまだ、過半数にはならず、その状況は、今も変わっていない。世論調査では、次回の総選挙でも、リクードが過半数になる確証はないのである。
エルサレムポストが、103FMが行った世論調査によると、次回総選挙では、リクード勢59議席、ラピード勢55議席で、いずれも過半数に至らないとの結果だった。ただこれは現時点でのことで、これからいくらでも変わるだろう。特に今、ベネット政権が崩壊したとなると、今、与党にいる右派議員たちが、リクードへ戻る可能性は少なからずある。
www.jpost.com/israel-elections/article-709954
このネタニヤフ氏の執念、また執念、また執念。。絶対にとことんあきらめない、この執念は、ベネット首相とはまた違う、イスラエルへの愛に基づいているのだろうが、ただただ驚かされるところである。
イスラエル国内の分断について
ベネット首相たちの政権解散の発表の夜、右派指導者たちはネタニヤフ氏のオフィスに集まり、歓喜の中、ベネット政権への厳しい言葉をなげつけた。
ミリ・レゲブ氏(リクード):あなた方は終わった。イスラエル民衆はあなた方の本性を見破ったのだ。帰れ。
ミキ・ゾハル氏(リクード):やっと世界から消えてくれる。
ベツァルエル・スモルトビッチ氏(宗教シオニズム党):ユダヤ人はシオニズムで一致して国を導くのだ。
イタマル・ベン・グブール氏(極右):ついに危険な政権が家に帰ってくれた。真に右派による政権で治安を守るのだ。
モシェ・ガフニ氏(統一トーラー党):神が私たちに命を与え、この時を与えてくださった。神に感謝する。
アリエ・デリ氏(シャス党(ユダヤ教政党):イスラエルの民は生きるのだ。
こういう様相からして、これからたとえしばらくの間とはいえ、暫定政権を導くラピード氏と、それを助けるベネット首相がどれほどの困難に突入するかと思う。
また、イスラエルととりまく困難は非常に厳しくなる中、仲間同士でこのように分裂することこそ、イスラエルにとって危ないと懸念する。バビロン捕囚も、ローマ帝国によるエルサレム崩壊も、ユダヤ人同士で分裂していた時だった。
いつの代も、イスラエルは多様な社会である。その違いを認めながら、イスラエルの国を維持するというたった一つの目標で一致しようとしたのが、自らも右派政治家のベネット首相であった。
その試みは、やはり続かなかったわけだが、これからどうなるのか、未来がこの短い政権がどうであったのかを証明することになるだろう。