入植地エリで銃撃テロ・イスラエル人4人死亡:ジェニン大規模戦闘でパレスチナ人6人死亡 2023.6.21

現場の様子 Credit: AMMAR AWAD/ REUTERS

西岸地区でのイスラエル軍とパレスチナ人の間での衝突が激化してきた。19日(月)にジェニンで、パレスチナ人とイスラエル軍が大規模な戦闘となり、パレスチナ人6人が死亡。

100人近くが負傷した。イスラエル兵も8人が負傷。その後、別の西岸地区北部で、車突っ込みテロがあり、イスラエル兵2人が負傷した。

その翌日に、ユダヤ人入植地エリのガソリンスタンドで銃撃テロが発生。イスラエル人4人が死亡した。今後、イスラエル軍の反撃と、入植地の過激右派が反撃に出る可能性が懸念される。暴力のエスカレートに冷や水がかかるようにとの祈りが必要になっている。

20日・入植地エリのガソリンスタンドで銃撃テロ:イスラエル人4人死亡

ジェニンでの大規模戦闘の翌日の20日、西岸地区のユダヤ人入植地エリのガソリンスタンドでパレスチナ人による銃撃テロがあり、イスラエル人4人がその場で死亡。4人が負傷して病院に搬送されたが、1人は重傷で、2人は中等度、1人は軽症と伝えられている。

調べによると、パレスチナ人2人は、まずガソリンスタンドに隣接するフムス・スタンドで食事している人々に向かってライフルで乱射し、給油中の人にも銃撃を行っていた。

攻撃したパレスチナ人は、少なくとも2人。1人はその場で、銃を持っていた民間人に射殺されたが、もう一人は逃亡した。このため、地域は封鎖され、住民は家から出ないようにと指示が出された。しかし、犯人が車を盗んで地域から出たと判断されたため、約1時間後に解除された。

約2時間後に、2人目の犯人は、イスラエル特殊部隊に射殺された。

www.timesofisrael.com/four-killed-four-injured-in-terror-shooting-at-west-bank-gas-station/

死亡した4人は、ナフマン・モルドフさん(17)、エリシャ・アンテマンさん(17)、ハレル・マスードさん(21)、オフィル・ファイヤマンさん(64)アンテマンさんはこのレストランの従業員で、ブネイ・アキバ・エリ・イシバ(ユダヤ教神学校)の学生だった。

ナフマン・モルドフさんは、アチヤと呼ばれるユダヤ人前哨地(入植地以前の開拓地で、まだ法的に認められていない地域)の住民であった。

犠牲者の写真をみると、モルドフさん含め、少なくとも2人は、かなりの宗教シオニストの様相である。モルドフさんが17歳ということもあり、今後過激ユダヤ人たちが、報復に出る可能性は、決して低くないと思われる。(数時間後すでにパレスチナ人村への襲撃に出た)

それぞれの葬儀はエリとそれぞれの出身地で、まもなく行われることになっている。

www.timesofisrael.com/two-teens-recently-discharged-soldier-among-4-killed-in-west-bank-attack/

19日:ジェニンでヘリからの空爆含む大規模戦闘:パレスチナ人6人死亡

上記事件前日に19日朝、イスラエル軍が西岸地区のジェニンにテロリスト捜索に入り、2人を逮捕した。この時、パレスチナ人たちが激しく銃撃しただけでなく、イスラエル軍車両付近の道端で大爆発が起こり、車が吹き飛ばされる事態になった。

これを受けて、イスラエル軍は、実弾での反撃に加え、ヘリコプターが、上空からミサイルを発射するという、これまでになかったような武力行使に出た。これにより、パレスチナ人5人が死亡。合計91人が負傷し、少なくとも23人が重傷で、その中から1人が追って死亡し、死者は計6人となった。

この戦闘でイスラエル兵3人、国境警備隊5人が負傷した。重傷はおらず、中等から軽症とのこと。しかし、これほど大きな衝突は20年ぶりだという。

死亡したパレスチナ人は、パレスチナ自治政府保健省の情報で、カリード・アサ(21)、カッサム・アブ・サリヤ(29)、カイス・ジャバリーン(21)、アフマド・ダラグマ(19)、アフマド・サクル(15)この中の数人はイスラム聖戦メンバーであった。

この数時間後、西岸地区北部のパレスチナ人地域で、検問所にいたイスラエル兵たちに車がつっこみ、兵士2人が負傷。兵士たちは実弾で対応し、容疑者はその場で撃たれたもようである。

www.timesofisrael.com/idf-2-soldiers-wounded-in-car-ramming-attack-in-northern-west-bank/

あらゆる対策を取るとネタニヤフ首相:西岸地区のイスラエル軍部隊増強

イスラエル人4人が死亡した事件を受けて、ネタニヤフ首相は、あらゆる対策をこうじると述べ、皮肉にも国会ですすめようとしていた司法制度改革に関するプログラムを延期することとなった。

西岸地区では、テロ防止活動を行うイスラエル軍戦闘部隊を増加強化した。警察も同様に、国境警備隊を棄権地域に増強している。

警察庁を指揮下に置く極右政治家ベングビル氏は、現場を訪れ、「西岸地区で大規模に闘う時が来ている。テロリストには死刑を求刑しなければならない。(ベングビル氏は、今は死刑がないイスラエルだが、テロリストには法律で死刑を導入することを提案中)」と怒りをもって語っている。

石のひとりごと

イスラエルは、ここしばらく西岸地区、特に、ジェニンがある北部へのテロ活動摘発を毎日のように行っており、今年に入ってからの衝突で、死亡したパレスチナ人は126人。これに並行して、イスラエル人のテロ犠牲者も増えており、すでに24人となった。昨年を大幅に上まっている。

昨年末に、強硬右派政権となり、ネタニヤフ首相は、上記のような現状の中にあって、西岸地区入植地で、まだパレスチナ人との合意が完全でない地に、4500軒もの住居を合法化すると発表し、最友好国アメリカはじめ、国連、世界諸国からの非難を受けている。

さらに、ネタニヤフ首相は、強硬右派・宗教シオニストのスモトリッチ氏に西岸地区の治安維持業務への大きな権威を与え、かつ、極右政権のベングビル氏に最大限の警察庁を支配する権限を与えている。

右派となった政権を維持し、首相としての地位を守るために、強硬右派のいいなりになっているとも言われるのだが、はたしてこれほどのことが、それだけの理由でできるものだろうか。ネタニヤフ首相の心中に何があるのかははかりしれないものがある。

いずれにしても強硬右派政権である以上、パレスチナ人との衝突が激化するのは、必然的な流れであろう。しかし、今回の犠牲者は、強硬的な宗教シオニストの若者なので、今後、恐ろしいパレスチナ市民への報復に出ることが懸念される。(これを書いている間にすでに暴動となったことは先の記事でお知らせした通り)

今、パレスチナ過激派のテロだけでなく、彼らのパレスチナ人への残虐な行為が押し止められるように祈らなけれなならない。

また、今、イスラエルは、これまでのと同様、パレスチナ人のテロを、徹底した武力で抑えようしているのだが、これが新たな衝突という、悪循環になっている様相もある。

とはいえ、このまま何もしないでいると、パレスチナ過激派を放置するだけのことになることもまた事実。こうした悪いサイクルが、今、スパイラル状態になっているのだが、それを最も笑っているのは、イランであるとの分析もある。イスラエルへの攻撃を正当化するからである。

今、双方で燃え盛っている怒りと憎しみの思いに氷水がかけられるように。西岸地区に入っていくイスラエル兵たち、国境警備員たちが、大きな衝突に遭遇せずに、危険なテロリストを摘発できるように。ネタニヤフ首相が、冷静に決断をしていくようにと祈る。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。