休戦2日延長で合意:イスラエルに及ぼす影響は? 2023.11.28

26日、ガザ国境を訪問するネタニヤフ首相Avi Ohayon (GPO)

休戦と人質交換は2日間延長へ

イスラエルとハマスが合意した4日間の停戦は、28日朝7時(日本時間午後2時)に終わることになる。これまでに、イスラエル人人質50人が解放され、引き換えにパレスチナ囚人150人が釈放された。

またこの合意とは別のルートのイランとの交渉でタイ人17人、フェリピン人1人、ロシアとの交渉で、ロシア系イスラエル人1人が、解放された。

その後どうするかについて、カタールとアメリカの仲介で交渉が続けられていたが、昨日中に、2日間延長で合意できたとカタールとアメリカが発表した。

これにより、本日から1日につきイスラエル人10人が解放され、合計20人が帰還できるみこみ。今もガザで人質になっているイスラエル人は175人である。

ネタニヤフ首相は、すでに、本日28日に戻される予定の10人のリストを受け取っている。リストは現在、検討され、これで受け入れることが決まれば、それぞれの家族に連絡される流れである。

一方、引き換え釈放されるパレスチナ囚人は1日に30人。2日間の延長で、計60人が釈放される予定である。

釈放パレスチナ人リストに50人追加とその課題

これにともない、イスラエルは、候補者リストとして、すでに提出している300人の名前にあらたに50人の名前を追加したという。その中には、パレスチナ人女性活動家アヘッド・タミミ(22)が含まれているという。

タミミは、昨年、“勇敢に”IDF兵士に平手打ちをするなどして、対峙したことで英雄氏されるようになり、以後、さまざまな扇動行為を行なって、イスラエルの刑務所に出入りするようになった。

3週間ほど前には、西岸地区の入植者ユダヤ人たちに対し、インスタで、「ヘブロンからジェニンまでヨルダン川西岸地区でああなたがたを待ち受けて殺す。ヒトラー以上のことをする。あなたたちの血を飲み、頭蓋骨を食べてやる。さあ来なさい」と書き込んでいた。このため、逮捕されていた。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/palestinian-protest-icon-ahed-tamimi-said-on-list-of-50-prisoners-set-for-release-in-truce-extension/

石のひとりごと:ここからどうなる?

休戦の延長することとなった。ここからこの問題はどうなっていくだろうか。

人質、特に子供たちが家に帰ってくることは何にもまして重要なことである。人質が一人も取り残されないようにすることは、最優先である。バイデン大統領始め、国際社会は、このまま人質全部が返還されるまで続けるとの決意を語っている。

しかし、もしこのペースで、さらに延長するなら、あと175人なので、17-18日かかるということである。それほどの期間を開けた後で、イスラエルは再び戦闘に戻ってハマスを殲滅できるだろうか。

また、イスラエルが釈放するパレスチナ人テロリストは、これまでに釈放した数と合わせて、700人以上になる。これは非常に危険なことである。

ネタニヤフ首相は、休戦の延長は10日が限度で、その後は戦闘に戻ると言っているが、今後、どうなっていくかは確かではない。

延長することによって考えられることは以下の通りかと思う。

1)世界の目が停戦への圧力になる

ハマスが人質を返還する様子は、ハマスが人道的であるかのような世界へのプロパガンダになりつつある。

イスラエルメディアによると、ガザのハマスのトップである、アヒヤ・シンワルは、イスラエル人の人質に会っていた。完璧なヘブライ語で人質たちに、「あなたたちを傷つけることはない」と話したという。

休戦になったガザでは今、人道支援物資の搬入も加速しており、激戦であったシファ病院の片付けをする様子も見られている。休戦が長引けば長引くほど、次回、戦闘に戻った場合の世界のイスラエルへの反発は大きくなるのではないか。いやその前に、戦闘に戻れなくなる可能性も出てくるかもしれない。

そうなれば、ハマスは、またガザに残ってしまうことになり、イスラエルの敗北、パレスチナの勝利という図式になってしまう。

2)西岸地区でのハマスの支持率が回復する?

今、イスラエルの人質を返還することで、若いパレスチナ人テロリストが西岸地区へ戻りつある。この若者たちは、必ずしもハマス所属ではない。多くは個人的テロリストである。助けられた若者はハマスに仮ができたようなものだ。

いったん下がっていたハマスへの支持が、特に西岸地区においては、高まる可能性も懸念される。これほどの人数のテロリストが西岸地区、東エルサレムに戻り、ハマスと一体化することが、イスラエルにとっては、非常に大きな危機になりうる。

ハマスは、10月7日にイスラエルを襲撃した際、西岸地区まで突っ切って行き、イスラエル全土を制圧する計画だったとも言われている。今、このような形で、ハマスのおかげで西岸地区に戻れたテロリストは、今後、ハマスに協力していく可能性は否定できない。

今、西岸地区のパレスチナ人の間では、二国家解決案(イスラエルとパレスチナの2つの国にする)ではなく、一国家案こそ必要だという声が上がっているという。これは、イスラエルを追放してパレスチナという国1つにするという声である。

実際のところ、人数的に言えば、今のイスラエルと西岸地区・ガザ地区が一つになれば、この地域では、パレスチナ人が過半数を超える可能性も出てくる。パレスチナ市民の3分の1がこの考えを支持しているとのデータもある。

3)ネタニヤフ首相は大丈夫か?

イスラエル国内では、この戦闘において、ネタニヤフ首相はうまく陣頭指揮がとれていないという批判がでている。全くの素人ではあるが、なんとなくその懸念を感じなくもなくなってきた。

たとえば、人質交換においても、イスラエル人1人に対し3人を引き渡している上、停戦期間延長にあたって、釈放するパレスチナ人の名簿をすでに300人分出しているのに、50人分も増やしたという。その必要はあったのだろうか。

これまで、常に先手を打っていたイスラエルと違って、どうも後手に回っているような気もしてくる。とはいえ、人質の命を失うわけにもいかない。。厳しい駆け引きである。

ネタニヤフ首相は果たして大丈夫だろうか。今この時、首相とその周囲の指導者たちを覚えて、祈りとりなしが必要な時である。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。