イスラエルとパレスチナの関係は上記のように、相変わらず和平のかけらもみえない状況だが、今週水曜、大統領上級顧問で、中東担当のジェレッド・クシュナー氏が、和平交渉再開をめざして、エルサレムに来ることとなった。
クシュナー氏に先立ち、ホワイトハウスの交渉特使グリーンブラット氏が、エルサレムに日曜に到着した。グリーンブラット氏は、ネタニヤフ首相と会談した他、嘆きの壁を訪問。また、金曜テロで犠牲となったハダス・マルカさん家族を訪問した。水曜には、アッバス議長に会うことになっている。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4978310,00.html
クシュナー上級顧問は水曜に到着して1日だけ滞在する予定。その1日で、ネタニヤフ首相とアッバス議長それぞれ別に会談することになっている。この2人が何を持ってくるのかはまだ明らかでない。
<トランプ大統領へのジェスチャー?:エルサレム6000戸建築を保留>
アメリカからクシュナー氏ら中東和平使節団が来るのに先立ち、エルサレムの家屋建設に様々な動きがみられている。
エルサレムポストが、軍のラジオによるとして伝えたところによると、イスラエル政府は、2ヶ月前に、エルサレムに建築すると発表していたユダヤ人家屋25000軒のうち、6000軒を、事実上保留にすると発表した。
保留になったのは、ギロ、ハルホマ、ピスガット・ゼエブなど、いわゆるグリーンライン(1967年ライン)よりパレスチナ側にある地域である。
今年1月、ネタニヤフ首相は、イスラエル寄りとされるトランプ大統領が就任するやいなや、調子にのったかのように次々に東エルサレムや西岸地区入植地の建築許可を出したのだが、当のトランプ大統領は、これを抑えるようにと、イスラエルに釘を刺したのである。
一方で、エルサレムのカルマノビッツ副市長によると、同じエルサレムでも、東エルサレムのパレスチナ人地区で、テロリストも多数輩出しているジャベル・ムカバに隣接するエリアに、7000軒のアラブ人家屋を建設する案は、凍結されず、建築が始まるという。
副市長によると、この案は以前からすでに市議会でも許可されていたことであって、市にとっても特に問題はないという。しかし、アラブ人の家屋は建設され、同時にユダヤ人の家族は保留というのはどうだろうかとももらす。
リーバーマン国防相によると、今回、イスラエルは、まずはサウジアラビアなどのスンニ派穏健諸国(ヨルダン、エジプト含む)との関係改善が先で、それからパレスチナとの交渉に入る順番だと考えている。
東エルサレムや西岸地区の入植地拡大の停止は、ヨルダン、エジプト、サウジアラビアなどが条件として提示している点である。
トランプ政権は、これらのスンニ派諸国との結びつきを重要視していることから、イスラエルとしても今後をより有利に運ぶためのジェスチャーであるとも考えられる。当然、右派はこれに強く反発している。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/231292
<早急な交渉開始に警鐘:アッバス議長>
アッバス議長は、トランプ政権が、使節団を送り出し、和平交渉再開に乗り出しているのを見て、直接交渉、間接交渉、さらには両者を近付けるだけの場合でも、明確なビジョンと計画がないうちに、あわてて事を進めることに懸念を持っていると伝えられている。
今はまだ、交渉のフレームワーク(2国家解決なのか、1国家なのかなど)すらできていないからである。目標がなければ、どこにも行き着かず、そのうち、トランプ大統領が飽きてしまうのではないかとも言われる。
また、フレームワークもできていない早期から、クシュナー氏やグリーンブラット氏といった閣僚級を送り込むことに、アメリカ国内からも懸念する声があがっている。
トランプ大統領が、いったい何を考えているのか、失敗するのか、もしや思わぬ方法で、和平を成功させてしまうのか、まだまだ不透明であるため、やはり、皆がふりまわされているようである。