ロシア主導のシリア和平会議開催へ:ロシア、イラン、トルコ3首脳会談 2017.11.26

サウジアラビアのスンニ派勢力と、イランのシーア派勢力の対立が深まる中、ロシアが登場してきた。ロシアは、破滅の危機にあったシリアのアサド大統領を、軍事介入によって存続させ、地域での影響力を独占している。

オバマ大統領は、反政府勢力を支援したが十分ではなく、地上介入はほとんどしなかったため、中東でのアメリカの影響力は著しく落ちた。現時点では、ロシアこそが、アサド大統領を支援するイランとその配下のヒズボラを動かす立場にあるということである。

プーチン大統領は、22日、黒海沿岸の町ソチで、イランのロウハニ大統領、トルコのエルドアン大統領と3人で会談し、来月、シリア内戦後の和平会議を開催すると発表した。

この3者会談の前日には、ソチにて、シリアのアサド大統領にも会談している。ということは、ロシア、イラン、トルコ主導のシリア和平会議にアサド大統領は協力するということである。

アサド大統領は、多くの人々に憎まれいつ殺されてもおかしくない人物。この会談は、20日に数時間で極秘に行われ、発表は21日になってからであった。映像では、アサド大統領は、プーチン大統領に助けられたとばかりに、笑顔で感謝でいっぱいといった様子である。

www.reuters.com/article/us-mideast-crisis-putin-assad/russias-putin-hosts-assad-in-fresh-drive-for-syria-peace-deal-idUSKBN1DL0D5

<サウジアラビアの反政府勢力会議>

ロシア、イラン、トルコの3国が、集まったと同じ日、サウジアラビアのリヤドでは、シリアの反政府勢力の指導者たちが集まり、これからのシリアについての会議が行われた。こちらは、国連のシリア問題担当ミスチュラ氏が参加した。

反政府勢力を統一することが目的だが、やはり一致には至らなかったようである。会議の声明としては、アサド大統領は退陣することを要求しており、ロシア、イラン、トルコの意見とは相変わらず対立している。

シリア問題については、来月、ジュネーブで、国連主導の国際会議が開かれる予定で、ロシア、イラン、トルコのソチでの会議はその前ということになっているようである。

この問題にアメリカは不思議なほど沈黙である。シリアの和平に関しては、国連などより、地元で実際に戦ってきたロシア、イラン、トルコの方が影響力があることは明白なので、負け戦さには加わらないというところだろうか。アメリカ不在の現実が、今後の中東にどう影響してくるだろうか。

www.timesofisrael.com/russia-iran-turkey-agree-to-advance-syrian-peace/

www.nytimes.com/2017/11/22/world/europe/russia-turkey-iran-syria-war-peace-talks.html

<今後の注目点はトルコの動き:バル・イラン大学/エフライム・インバル博士> 

インバル博士は、中東は、いまやロシアの流れになっていると指摘する。シリアの内戦、ISISとの戦いなどをうまく利用して、ロシアは、イラン、シリア、レバノンを味方につけ、目標としていた地中海へのアクセスを手にいれたと指摘する。

また、ロシアとイランの目標は、中東からアメリカを追い出すことであり、オバマ大統領、トランプ大統領らが、中東への野望が低下したことで、その目標もいまや実現したと分析する。インバル博士は、アメリカはもう完全に不在だと語る。

シーア派勢力の背後にいるロシアの支援に比べ、反政府勢力を一応支援すると言っていたオバマ大統領のスンニ派勢力への支援はお粗末だった。そのため、現状において、スンニ派はシーア派より弱いという。サウジアラビアは大国だが、軍事レベルはまだまだ低いのである。

中東情勢において、今、アメリカはロシアとイランに遅れをとってしまったということである。加えて、今のトランプ大統領も中東介入への意欲はあまりないとわかる動きをしているとインバル博士。

そうなると、今後注目される点は、トルコとイランの関係である。トルコは、スンニ派で、大きな軍事力を持ち、シリア・イラクにも拠点がある。最初は、アメリカ主導のISIS空爆チームにいたが、アメリカが、トルコの宿敵クルド人勢力を支援しはじめたために、シーア派イランチームに寝返ったのである。

しかし、トルコはスンニ派で、エルドアン大統領は、シーア派とは徹底的に対立するムスリム同胞団。今はイランチームに寝返ってはいるものの、片足はまだ、欧米NATO軍に入っている状態である。トルコは最終的に、いったいどちらにつくのか。トルコに出かたによって、中東は大きく左右される。

少々専門的になるが、インバル博士は、トルコが今後、国として動くのか、ムスリム同胞団として動くのかで流れはまた変わってくると注目している。ムスリム同胞団は中東全域にメンバーをもつ非常に大きな組織なので、こちらの立場が全面に出てきた場合、中東全域に影響が出てくるのである。

聖書には終末時代にゴグ・マゴグの戦闘があり、イスラエルが攻撃されると預言されているが、それにかかわるのが、地理的な場所でいえば、トルコ、ロシア、そしてペルシャ(イラン)である。そこに北アフリカが加わる。

エジプトとサウジアラビア、ヨルダンもこの戦いには関わらないとみられる。なにやら、そういう図式にやはり近づいているようである。

www.m-central.org/video/#lg=1&slide=0

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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