18−21日までの4日間、マレーシアの首都クアラルンプールで、イスラム・サミットが開催された。参加国は、議長国のマレーシアの他、イラン、トルコ、カタールを含む約20カ国。
OIC(サウジアラビアが基盤のイスラム協力機構)に加盟するイスラム諸国は、57カ国で、この全てがマレーシアでのサミットに招かれていたが、サウジアラビアが欠席したため、参加は約20カ国にとどまった。
したがって、このサミットに参加した国は、イランとの貿易も継続しているシーア派か、その支持国ということになり、イスラム世界の二分化を印象付けることとなった。マレーシアは、国としてはシーア派ではないが、イランの側に立っていることを宣言したような形である。
マレーシアのマハティール首相は、イランとカタールが、制裁の下でも耐えていることを称賛。イスラム世界は、これからも、どこにも経済的に頼らないでいることが重要だと語った。また、デナリを共通通貨として用いて、互いの貿易を推進するビジョンを語った。
カタールは、湾岸諸国の国だが、イラン側についていることから、同じ湾岸地域のサウジアラビアやバハレーン、アラブ首長国連邦から、2年半前に国交を遮断されている。
www.jpost.com/Middle-East/Muslim-nations-consider-gold-barter-trade-to-beat-sanctions-611650
<ロハニ大統領来日>
イランのロウハニ大統領が、マレーシアでのサミットに合わせて来日、2日間滞在して、安倍首相と会談した。来日は、イランからの要望であったという。
イランは、アメリカの経済制裁を受けており、国内では、反政府勢力との衝突が激化しているような状況にある。ロウハニ大統領は、アメリカの制裁が一方的であると訴え、日本や周辺諸国が、イラン経済への支援を要請した。
しかし、アメリカと同盟国である日本は、マレーシアのように、イランの側に立つことはできない。一方で、イランは大事な原油供給国として友好国でもあるので、難しい対応であった。
安倍首相は、イランのホルムズ海峡はじめ中東での緊張が高まっていることの懸念を伝え、日本が、ホルムズ海峡近辺を航行する日本の船を守るために海上自衛隊を派遣することへの理解を求めた。イランからの攻撃を守るための軍の派遣をイラン大統領に理解を求めているわけで、どうも妙な感じではあるが、ロウハニ大統領はこれに理解を示した。
www.france24.com/en/20191221-rouhani-concludes-japan-visit-seeks-support-for-iran-economy
日本は、イランへの配慮から、アメリカが呼びかけている対イラン包囲網とは一線を引いた形で、独自に自国タンカーを守るための海上自衛隊を派遣する計画である。閣議決定は、27日の予定。
<ユダヤ教ラビがバハレーン訪問>
マレーシアでのサミットに先立ち、バハレーンでは、10日、カタール、クウェート、ヨルダン、エジプト、ロシア、アメリカ、イタリア、インド、タイから、様々な宗教指導者たちが集まった。いわゆるエキュメニカル運動である。
その中にエルサレムのチーフラビ・シュロモー・アマール(スファラディ)も含まれていた。ユダヤ教ラビが、イスラムの国バハレーンを訪問するのは、初めて。
イスラエルがアラブ諸国の中で、国交を持っているのは、ヨルダンとエジプトだけで、バハレーンとの正式な国交はまだない。しかし、バハレーンには、10月にネタニヤフ首相も電撃訪問しており、今回のラビの訪問も、バハレーン国王の招きで、イスラエル外務省が動いて手配したという。
バハレーン始め湾岸諸国は、近年、イランという共通の敵意識から、アメリカとイスラエルに近づく傾向にある。ラビ・アマールは、「中東の人々はイスラエルとの平和を望んでいる。」と語った。
www.timesofisrael.com/jerusalem-chief-rabbi-visits-bahrain-for-interfaith-event/
世界はやはり、イスラエルという国へどのような態度をとるかで、グループ分けがすすんでいるようである。日本は今の所、アメリカ、イスラエル側といってよいだろう。