バイデン氏が勝利した場合のイスラエルへの影響 2020.11.6

世界を揺るがしているアメリカ大統領選挙

アメリカ大統領選挙の開票作業が続けられ、速報が文字通り、欧州も中東も、アジア、そしてテロ組織に至るまで、全世界を振り回している。バイデン候補が勢いづいている中、国々は、それぞれに及ぶ影響を警戒しながら、アメリカの選挙の結果を、慎重に見守っている。

日本にとってはは、やはり、中国の問題だろう。今は、トランプ大統領が強力な立場で、中国をあらゆる方向から牽制しているが、バイデン候補になったらどうなるのか。

香港を取り込もうとしている中国に抑えがきかなくなれば、東シナ海、台湾、そして日本にまで迫ってくる可能性も懸念される。また北朝鮮がどう出てくるのかもわからない。

イスラエルは、特にネタニヤフ首相がトランプ大統領との緊密な関係の中で様々な計画を進めているところなので、バイデン候補に変わった場合、どうなるのかといった予測も飛び始めているところである。

ここでは、バル・イラン大学政治学教授で、エルサレムのベギン・サダト戦略研究所アソシエートのジョナサン・リンホルド教授の解説をまとめる。

バイデン候補は親イスラエル?

リンホルド教授によると、バイデン候補は、ゴルダ・メイヤー前首相に会ったことを話しに出すなど、アメリカでは最も長い親イスラエルの政治家だという。副大統領候補のカマラ・ハリス氏(55)の夫はユダヤ人である。

したがって、右派ではないとはいえ、トランプ大統領がエルサレムに移した米大使館をテルアビブに戻すというような極端な動きはまずないとリンホルド教授は見ている。

パレスチナ問題については、交渉再開を目指すかもしれないが、パレスチナ人たちは、今ハマスとの関係を深めようとする動きや、トルコ、イランに接近する動きもあるので、いくら右派でなかったとしても、国の治安は優先するので、これまでとさほど大きな方今転換はないとみられる。

また、アメリカ・ファーストであったトランプ大統領に比べ、国際思考(要は紳士ぶり)であり、自国の利益だけに集中しないということで、中東に派遣している米軍をどんどん撤退させるという心配も、トランプ大統領のときほどではなくなると見る。

左派的な平和思考という路線からいえば、トランプ大統領がはじめた、イスラエルと湾岸諸国との国交正常化の流れを止めるということもないとみられる。しかし、湾岸諸国側としては、アメリカの流れを見極めて、これまでと違う動きをするかもしれない。

また、リンボルト教授は、バイデン陣営が、サウジアラビアについては、トルコのサウジ大使館でカショギ記者が殺害され、ムハンマド皇太子に疑惑がかかったにもかかわらず、そのままになっている件を、慎重に見守っていることを指摘する。バイデン政権担った場合、サウジアラビアとアメリカの関係に影が落ちる可能性があるという。

このため、アメリカの信頼を確保しようと、サウジアラビアが、逆にイスラエルとの国交正常化を急ぐ可能性も考えられるとのこと。

イスラエルにとってはイラン対策が最大の注目点

リンホルド教授によると、バイデン候補に関して、最も警戒しなければならない点は、イラン問題である。トランプ大統領は、2015年のイランと世界諸国との核兵器問題に関する合意から離脱。イランが核開発を続けているとして、厳しい経済制裁を続けている。

もし、バイデン政権になり、経済制裁を弱めるようなことがあれば、イスラエルは、黙っていないだろう。今は2015年の時より、イランがもっと核兵器に近づいていると考えられる。

もしバイデン政権になり、経済制裁をどうするかによっては、イスラエルがイランを攻撃を辞さないといった以前の様相になると考えられる。

もう一つの注目点は、イランのミサイル開発にどう対処するかである。ミサイルは、核兵器を搭載するものなので、核兵器と並んで注意しなければならない。これを制するのが、経済制裁なのである。

こうしてみると、バイデン候補になったからといって、急に大きな変化が出てくることはないのかもしれないが、ともかくも、なにがどうなっていくのかは、まったく不透明と言っておいたほうがようだろう。

ネタニヤフ首相に危機?

説明するまでもなく、ネタニヤフ首相は、右派政権として、トランプ大統領に受け入れられていたといえる。このため、いくら親イスラエルであっても右派でないバイデン候補が大統領になった場合、国連や国際社会でのネタニヤフ首相の立場が懸念される。

国際社会での孤立を深めないためとして、今後、中道左派のガンツ氏、ラピード氏の声が強くなってくる可能性もある。そうなると、また総選挙といった事態になる可能性も出てくるとリンホルド教授は指摘する。

アメリカのユダヤ人77%はバイデン候補に投票

イスラエルでは、おおむねトランプ大統領を支持する人が多いが、アメリカのユダヤ人有権者の77%がバイデン候補に、21%がトランプ大統領に投票していたことがわかった。(GBAO poll by J street)

アメリカのユダヤ人は、民主主義を重んじており、自らを民主党支持者と表現する人が49%にのぼっており、右派勢力を敬遠する傾向にあるからである。

またアメリカのユダヤ人の最大の関心事については、第一に新型コロナ、気候変動、健康保険、経済と答えており、1、2位に重要として、イスラエル情勢を上げたユダヤ人は、わずか5%であった。

www.jpost.com/us-elections/american-jews-vote-overwhelmingly-for-biden-with-56-point-margin-poll-647964

アメリカからイスラエルへ移住するユダヤ人は、増加傾向にあるものの、全体的な視野でみるると、アメリカのユダヤ人のイスラエル離れは進んでいると言われている通りである。

www.jpost.com/us-elections/american-jews-vote-overwhelmingly-for-biden-with-56-point-margin-poll-647964

石のひとりごと>

アメリカはここからどうなっていくのだろうか。今朝から、トランプ大統領のネクタイの色がかわっていたようだが、トランプ大統領はもはやこれで終了ということになるのだろうか。いやいや、まだ大逆転はありうる。まだしばらくはニュースを見る日々が続きそうである。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイド、イスラエル政府公認ガイドとして活動しています。 イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて18年。学校・企業・教会などで講演して15年になります。