ガザ国境:ぎりぎりの平穏維持 2019.7.16

11日(木)、ガザ北部国境で、パレスチナ人2人が国境を超えそうになったため、イスラエル軍が発砲。パレスチナ人一人(28)が死亡した。ところが、死亡したのは、ハマスメンバーで、国境を越えようとする2人を止めようとしていたのであった。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5548212,00.html

これに対し、イスラエルは、”misunderstanding”(誤解)と釈明したが、ハマスは激怒。イスラエル南部にむけてロケット弾2発を発射した。これによる被害はなかった。再びの衝突も懸念されたが、その後、大きな動きはない。

今回の危機は、エジプトが、イスラエルとハマスの間を仲介していた最中のことであった。エジプトがなんとかハマスを説き伏せたのであろうか。12日には、エジプト代表団がガザへ入り、ハマスとイスラム聖戦と対話し、13日にガザを出た。

エジプトは、仲介者として、イスラエルとハマス、さらには、パレスチナ自治政府のアッバス議長とも交渉を行っている。

www.timesofisrael.com/egyptian-delegation-meets-with-palestinian-factions-to-prevent-new-gaza-flareup/

ここ数日中には、カタールと国連関係者がガザへ入り、イスラエルからの電力ライン(ライン161)、水道設備、国境付近の病院などの設立を視察するという。カタールが、これらのインフラ整備費用の出資者である。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5549809,00.html

こうした中、12日(金)には、相変わらず、ガザ国境で、6000人が、毎週のイスラエルへの暴力的なデモを行った。この衝突により、パレスチナ人33人が、イスラエル軍の実弾により負傷した。

<危うい非公式の”停戦”>

エジプトの仲介により、イスラエルとハマスの間には、非公式、非公開のあやうい停戦状態、衝突、また停戦という繰り返しが続いている。

ハマスは、イスラエルが存在していること自体が悪いという主張の元、イスラエルへの”反撃”の攻撃を行っている。しかし、イスラエルにしてみれば、先にハマスから攻撃されたことへの”防衛”であって、ハマスから”停戦”と言われるのは、理に合わない。

しかし、ガザへ、そのまま武力で反撃することが、イスラエルの益にはならないという特殊な状況がある。

ハマスは、多数のミサイルと持っているとはいえ、武力においては、イスラエルとは比べようがない。凧と戦闘機の戦いである。このため、まともに反撃すると、釣り合いがとれず、国際社会の非難を買うことになる。

また、ガザには、ハマス以外にも、イスラム聖戦など別組織がおり、ハマスとは別にイスラエルを攻撃してくることもある。ハマスはこれを抑えようとしているようではあるが、完全には支配できていないので、ハマスと約束しても、別組織がそれを破るという繰り返しである。

<ガザの特殊事情とイスラエルの現実的?対策>

ガザ地区は、もはや人間が住める状態にはない。このため、イスラエルは、エジプトの仲介で、平穏が保たれると、”ご褒美”として、人道物資などを搬入するという、ムチと反対のアメ対策を続けている。今回も同様に、平穏になったことを評価して、医薬品や、物資搬入に同意したとみられている。

www.timesofisrael.com/israel-said-to-promise-gaza-medicine-goods-in-return-for-continued-calm/

また、ガザでは、電力不足で、下水を海やイスラエル領内へ垂れ流すようになってすでに久しい。この状態でガザを攻撃しても、イスラエルが対処する問題が増えるだけである。

下水垂れ流しについて、イスラエルは、ガザの下水をスデロットロットの下水処理場へ引く地下パイプを建設し、処理するシステムを構築することを決めた。これに必要な資金は、1500万シェケル(約4億5000万円)にのぼる。イスラエルはこの費用を、パレスチナ自治政府への送金(税徴収)から差し引くとのこと。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5528090,00.html

攻撃されているのに、ハマスに様々な奉仕をしているかのようなイスラエル政府の対応に、南部住民は、業を煮やしている。

しかし、Times of Israel によると、ガザからの火炎凧による攻撃は、2018年に比べ、減少傾向にあるという。危ういながらも、ガザへのアメ作戦は、多少は効果があるのかもしれない・・・。

www.timesofisrael.com/south-sees-stark-drop-in-number-of-fires-caused-by-gaza-arson-attacks/

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイド、イスラエル政府公認ガイドとして活動しています。 イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて18年。学校・企業・教会などで講演して15年になります。