ガザで一家10人死亡・海外メディアビル破壊でイスラエルへの批判殺到 2021.5.16

ガザとの戦闘は7日目に入り、激しさをましている。今のところ、イスラエルはハマスを壊滅させようとしているかのごとく、怒涛のような攻撃を行っている。しかし、13日夜が最大で、この日に出動した戦闘機は160機。40分の間に、150ヶ所に向かって450発のミサイルで反撃している。

ちなみに、テルアビブからガザまでは、車で1時間ないだろう。空軍機が基地を発進してから、ガザに到着するまでは、わずか数分である。発進と同時に爆撃体制に入るというのは相当な技術を要すると聞いている。

ガザで家族10人死亡

これらの空爆で、イスラエルが破壊しているのは、ハマスのロケット弾発射地と地下にめぐらされたトンネル。また幹部の住んでいるビルである。しかし、特にハマスの幹部は市民の中に住んでいることもあり、ガザ市民が犠牲になることは避けられない。

これまでに、ガザの死者は、子供39人を含む139人。14日夜のシャティ難民キャンプの3階建てビルへの攻撃で、モハンマド・アブ・ハタブさん家族ら10人が死亡した。このうち8人は子供であった。

この日、モハンマドさんの妻は、ラマダンのエイド・アル・フィトラの例祭で、5人の子供を連れて親戚の家を訪問中であった。この攻撃で、モハンマドさんの妻と6歳、14歳の子供は死亡。11歳は不明(瓦礫の下などになっている可能性が高い)。モハンマドさんに残されたのは、5ヶ月の息子だけだという。

イスラエル軍によると、この時、ハタブさん一家が在住するビルで、ハマス高官らが、会議を行っていたという。イスラエル首相府のアラビア語部門は、ハマスが、意図的に市民の居住地に武器や爆発物を保有していることを指摘し、それこそが戦争犯罪であり、この悲劇もハマスに責任があると訴えた。

www.timesofisrael.com/israeli-airstrike-hits-gaza-house-killing-at-least-7-including-kids/

イスラエルは、市民をターゲットにしていないことと、爆発の映像を見ると、空爆であるのに、下からの大きな爆発の様子がみられる。全部ではないにしても、地下のトンネルで繋がった膨大なロケット弾の蓄積がイスラエルの空爆によって爆発していると考えられる。

しかし、それをどう証明するのか。また、実際に死んでしまった子供たちはもう帰らない。難しい問題である。

ガザの海外メディア・オフィスのビルを破壊

15日、イスラエル軍が破壊したガザの12階建のビルに、AP通信、アルジャジーラなど海外メディアのオフィスが入っていたことから、国際社会からは、イスラエルは、「ガザで起こっていることを封印しようとしている」と激しい非難を受けた。

www.youtube.com/watch?v=jow7y8wRWok

これに対し、イスラエルは、「このビルは、ハマスが、諜報活動に使っているもので、軍事用であった」と述べ、ハマスは、海外メディアを隠れ蓑にしていたと主張した。

また、攻撃の前に、いわゆる“屋根へのノック”と呼ばれる小さい攻撃を行い、ビルに在住する市民たちと、海外メディアオフィスに大規模な攻撃が来ることを予告。住民と記者たちも機材を持って、無事脱出することができていたのであった。これにより、ハマス関係者も避難できてしまうことも承知の上である。

twitter.com/Ali_reports/status/1393616068564987905

この直後にハマスは、テルアビブに攻撃が来るとして、住民はその準備をするようにとの警告を発した。そうして実際に実施したのが、上記記事で消化したテルアビブ地域へのロケット弾攻撃であった。ハマスのターゲットは、明白にイスラエル市民である。

この後、AP通信のCEOは、これまで15年間、このビルに事務所を置いていたが、ハマスがいた気配はなかったとして、イスラエルはその証拠を出すべきだと主張した。

アルジャジーラのエルサレム支局主任は、「イスラエルは破壊と殺戮を行うだけでなく、それを報道しようとする者をだまらせた」と批判した。これについては、イスラエル軍報道官は、強く否定している。

www.timesofisrael.com/idf-fells-gaza-tower-used-by-media-outlets-says-it-housed-hamas-military-assets/

しかしニューヨークタイムスによると、アメリカ政府がイスラエルに対し、ジャーナリストの安全は必ず守らなければならにと通達したもようである。また国連は、市民とメディアへの無差別な攻撃は国際法に違反するものであると警告を発した。これをいうなら、ハマスのイスラエルへの攻撃は、国際法違反ということになるということになるだろう。

イスラエル軍が偽情報流してメディアを利用の疑い

国際社会がイスラエルを非難するもう一つのポイントは、イスラエル報道官が、昨日、あたかも陸軍がガザ内部への侵攻を開始したといったニュースをメディアに伝え、それを拡散させたのではないかという疑いである。

15日夜、イスラエル軍のヒダイ・ジルベルマン報道官が、ツイッターで、地上軍がガザへ侵攻を開始したことをほのめかすような書きこみをしたため、世界のメディアがこれをとりげて騒動となった。

この直後、イスラエル軍が、ハマスの“メトロ”と呼ばれる地下トンネル移動システムを破壊したことから、イスラエルの地上軍侵入を信じたハマスが動いたことで、このシステムの情報がイスラエルに入った可能性が指摘された。言い換えれば、イスラエル軍が、メディアを利用したのではないかとの疑われることになったのである。

ツイッターに書き込まれた一文は、「IDF空軍と地上軍は現在、ガザを攻撃している」というもので、実際には、地上軍はイスラエル領内から攻撃していたものの、ガザへの侵攻は行っていなかった。

しかしこれを見たワシントンポストは、「イスラエル軍によると地上軍がガザに入り、紛争は悪化度をましている」と伝え、テレグラフも、同様のタイトルで、“イスラエル軍のガザ侵攻開始”を伝えたのであった。

これについて、IDFジルベルマン報道官は、メディアを操作するといった意図については否定。係官が、意図的でなく単純なミスで誤った情報を流しただけであったとして、正式な謝罪文を発表している。

これが事実かどうかは不明だが、長い目でみると、IDFの報道への不信感につながっていく可能性があると懸念されている。

www.jpost.com/international/idf-tweet-leads-to-inaccurate-foreign-reports-of-idf-gaza-incursion-668162

 

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて18年。学校・企業・教会などで講演して15年になります。