エルサレム近郊1号線渋滞車列に銃撃:イスラエル人1人死亡・11人負傷 2024.2.23

The scene of a shooting attack on Highway 1, near Ma'ale Adumin, on February 22, 2024 (credit: ISRAEL POLICE)

エルサレムに入る検問所・朝の渋滞を狙った銃撃テロ

赤のエリアがマアレイ・アドミム

22日朝、エルサレムから東へ出て、すぐの検問所から数百メートル手間、入植地マアレイ・アドミムとの間の主要道路1号線上で、渋滞している車列に向かって、パレスチナ人3人が、マシンガンを乱射するというテロ時件が発生した。

これにより、イスラエル人1人が死亡。11人が負傷した。テロリスト3人のうち2人はその場で治安部隊と銃を所持していた民間人により射殺。3人目はしばし逃走を試みたが、まもなく逮捕された。

事件当時、検問所を通過しようとしてい渋滞は数百メートルになっていた。テロリスト3人は、2台の車で現場に到着し、車から降りて、車内にいる人々への銃撃を開始した。3人は、M16ライフルや、マシンガンと更なる弾丸、手榴弾などフル装備の様相であったという。

銃撃が始まると、パニックになった人々が車を降りて走って逃げている様子がみられている。

通達を受けて到着した救急隊は、5台の車に、死傷者を発見した。現場ですでに死亡が確認されたのは、マアレイ・アドミム在住のイスラエル人男性、マタン・エルマリアさん(26)。

この他11人が病院に搬送されたが、このうち妊娠中の女性(23)が重傷。女性2人(30代、52)、男性2人(23、51)の4人が中等度。5人が軽傷、1人が不安発作であった。

目撃証言によると、テロリストは窓越しに妊婦女性を撃ったという。女性は撃たれた後、一時隠れようとしたが、テロリストが離れると車から降りて別の車に助けを求めたという。

しかし、渋滞で救急車が現場になかなか到着できず、女性が妊婦であり、重傷負ったにもかかわらず無事だったのは奇跡だったと言われている。胎児も今もところは無事だが、長期的視点で何か障害が出てくるかどうかは現時点ではわからないとのこと。

メディアのインタビューを受けるハナニヤさん

中等度の負傷を負った、ハナニヤ・ベン・シモンさん(23)は、負傷したにもかかわらず、車から出て、テロリストの1人を射殺した。

ガザで予備役兵として従軍し、兵役を終えて帰ってきたばかりだったという。さらなる殺戮を防いだとしてヒーローと目されている。

テロリストは、ベツレヘムエリア在住のパレスチナ人で、ムハンマド・ズワラ(26)とその兄のハタム・ズワラ(31)、3人目がアフマド・アル・フシ(31)3人は、道が渋滞していて車内にいる人々が逃げられない状態にあるところを狙ったと考えられる。この渋滞に対する警告は、以前からも出ていたという。それが現実になってしまった形である。

www.jpost.com/breaking-news/article-788208

www.timesofisrael.com/one-killed-11-wounded-in-terror-shooting-attack-near-jerusalem-checkpoint/

イスラエル軍は、今回のテロリスト3人の出身地、ベツレヘム近郊のザアタラに突入し、家族など関係者の身柄を確保して尋問にあたっている。また、西岸地区の軍を増強して、治安の維持強化を行なっている。

www.timesofisrael.com/troops-raid-west-bank-hometown-of-terrorist-in-checkpoint-attack/

マアレイ・アドミムに3000件増設?:強硬右派スモトリッチ経済相が要求

上記テロ時件の後、強硬右派のスモトリッチ経済相は、その報復として、マアレイ・アドミムやその周辺に、ユダヤ人家屋3000件を増設すると発表した。

マアレイ・アドミムという地域は、エルサレム最も近く、多くのユダヤ人たちのベッドタウン的な町である。しかし、国際社会ではまだ正式なイスラエル領とは認められていないヨルダン川西岸地区に位置している。

E1エリアを挟むエルサレムとマアレイ・アドミム Jewish Virtual Library

強硬右派たちは、エルサレムとマアレイ・アドミムの間のE1エリアを併合してエルサレムにつなげようとする計画が以前からあり、パレスチナ人の反発を引き起こしているエリアである。

アメリカは現在、ハマスとの戦争の恒久的な停戦のためには、西岸地区とガザ地区にパレスチナ国家を設立するしかないと、イスラエルにも圧力をかけているところである。

その最中に、マアレイ・アドミム周辺エリアにユダヤ人の家を増やすというのだから、アメリカとの対立は避けられないと言われている。

まあ、今のところ、スモトリッチ氏が言っているだけなので、実際に家が立つかどうかはわからないのだが。。

これに加えて、物議耐えないベン・グヴィル氏は、もっと検問所を増やす(パレスチナ人には不便になる)を息巻いている。

いずれにしても、ラマダンを前に、緊張がますます高まっていると懸念されている。

www.timesofisrael.com/risking-spat-with-us-israel-to-advance-thousands-of-settler-homes-after-w-bank-attack/

石のひとりごと

イスラエルでは最近、死者が発生するテロが2件も発生している。しかし、前のテロ事件はおろか、今回の事件も、翌日には、もうその関連の記事は、もう探さないと見られなくなっている。

あまりにも次々に重要な事件が起こっているので、これほど重大な事件であるのに、すぐに過去のことになってしまうのである。

それにしても、テロリストはいったいなんの恨みがあって、イスラエルの市民たちを殺すのだろうか。

個人的な恨みで特定の殺人をしているのではなく、イスラエル人だから、ユダヤ人だからというだけの理由で殺しているのである。ユダヤ人たちを、イスラエルを存在否定しているということである。

にもかかわらず、イスラエル人(ユダヤ人)たちが、元気であるだけでなく、幸せ度世界第位なのである。これはやはり、イスラエルにいるユダヤ人たちが、民として国として、同じ運命を共有し、痛みも喜びも共有していることを自覚しているからではないかと思う。世界にただ彼らだけが持っている独特の、悲しい一致ともいえる。

しかし、それが度を越しているのが、強硬右派のユダヤ人たちで、逆にパレスチナ人を襲う者も出てきて、状況をさらに難しくしてしまうということである。

人間とはなかなかに難しいものである・・。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。