イランと対峙するアメリカとイスラエルへ:ヒズボラ・ナスララ党首演説 2019.7.16

アメリカとイランが軍事衝突になりそうで、ならない事態が続いている。そうした中、ヒズボラのナスララ党首が13日、第二次レバノン戦争(2006年)を記念して、テレビを通したビデオ演説を行った。

ヒズボラ支援者へのメッセージなので、多少、誇張もあると思われるが、「今もしアメリカがイランを攻撃すれば、ヒズボラがイスラエルを総攻撃して、撃滅させる。」と脅迫している。具体的には以下の通り。

①シリア内戦が終焉となったことで、ヒズボラは、シリアに派遣していた戦力を呼び戻し、以前のイスラエルとの戦線に備える位置に配備した。

②ヒズボラは、今や戦況の流れを変えうる弾道ミサイル、ドローン、軍事技術など、量・質ともに向上した軍備を備えている。*ベングリオン空港、テルアビブとアシュドドの海水の淡水化工場は標的内にある。

③イスラエルは、シリア領内のイラン基地を時々攻撃しているが、イランがシリアから撤退することはない。逆に、攻撃はイスラエル自身に危険を招くだろう。

④サウジアラビアやUAEに危機が及ぶとわかってもアメリカがイラン攻撃を思いとどまることはない。しかし、イスラエルが、一掃されるとわかれば、思い留まるだろう。アメリカとイランの軍事衝突が、地域を巻き込んで大戦争に発展していくからである。

www.jpost.com/Middle-East/Nasrallah-Israel-will-vanish-in-next-war-with-Hezbollah-595528

*アメリカ対イラン:イギリスもペルシャ湾に軍備増強

一触即発状態が続くイラン情勢。

先週、イギリスが、ジブラルタル海峡で、シリアへ違法に原油を運んでいたとみられるイランのタンカーを拿捕した。シリアが内戦中であるため、国際社会は、シリアへの原油輸出を違法と定めている。

イランからシリアは、陸続きですぐ隣なのであるが、陸路で原油を搬入すれば違法になり、イスラエルに爆撃される可能性が高い。そのため、あえて、アフリカ大陸を大回りして、地中海からシリアに入ろうとしたのである。

これを受けて、イランは、報復としてイギリスのタンカーを拿捕すると脅迫した。実際、イギリスによると、イランは先週、報復だとして、ホルムズ海峡を通過中のイギリスのタンカーを拿捕するよう命令を出したという。(イランは否定)

イギリスは、自国籍の船を護衛するため、ペルシャ湾に戦艦を一隻追加派遣することを決めた。また、アメリカと地域への軍備増強について協議していることを明らかにした。

www.jpost.com/Middle-East/Tensions-Rise-in-Gulf-as-US-UK-Up-their-Forces-595676

<ネタニヤフ首相コメント>

ナスララ党首のコメントに対し、ネタニヤフ首相は、「ヒズボラが、大胆にもイスラエルを攻撃したら、イスラエルは、ヒズボラとレバノンに壊滅的な攻撃を行う。」と言い返した。

また、攻撃対象を明らかにしているナスララ党首に対し、「我々は手の内を明かさない。」と言った。また、ビデオメッセージで、最新鋭ステルス戦闘機F35の前に立ち、「この飛行機は、イラン、シリア含め中東全土に到達できるということを覚えておいたほうがいい。」と述べた。

言うまでもないが、ヒズボラは、戦闘機は持っていない。

www.jpost.com/Breaking-News/Netanyahu-answers-Nasrallahs-threats-in-cabinet-meeting-595606

<戦争の可能性は・・?>

メディアを通じた言い争いや行動からは、危険極まりない匂いがするが、実際にトランプ大統領が、イランを攻撃することはないだろうとの見方がちらほら出始めている。これを”トランプ大統領のオバマ化”といった表現をする記事もある。

トランプ大統領が、先に150人の死者が出ることを理由に、イランへの攻撃を思いとどまったが、結局、トランプ大統領も、来年の大統領選挙に勝つための備えの時期に入っているからではないかとの分析である。

また先週、トランプ大統領のライバルである民主党から立候補しているバイデン元副大統領は、イランとの核合意に戻るとしながらも、イスラエルとの友好関係は保証すると有権者に訴えるコメントを出した。トランプ大統領の支持層、福音派を分裂させかねないコメントである。

一方、イランも、アメリカとの戦争どころではない。厳しいかんばつと、経済制裁で、国民生活は疲弊している。エルサレムポストが、ワシントンの研究所によるとして伝えたところによると、イランでは、200から300万人が薬物中毒だという。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5547681,00.html

イランのロウハニ大統領は、「アメリカが、経済制裁を緩和するなら、話し合う用意があると言っている。しかしこれは、アッバス議長が、「イスラエルが東エルサレムから撤退したら、話し合いに応じる。」と言っているようなもので、アメリカが応じるはずのないオファーである。

<石のひとりごと>

ニュースを見ていると、トランプ大統領自身が予測不能なので、中東で何が起こるということもまた予測不能だというコメントが多くなってきた。今に始まったことではないが、トランプ大統領の決断一つで、非常に大きな戦争にもなりうることを考えると、末恐ろしいポジションである。

トランプ大統領、またその周囲にいる側近たちの精神的霊的健康を祈ることは非常に重要である。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイド、イスラエル政府公認ガイドとして活動しています。 イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて18年。学校・企業・教会などで講演して15年になります。