イスラエル日本学会:日本イスラエル国交65周年 2017.6.16

イスラエルにはイスラエル日本学会(IAIS)があり、2-3年ごとに、日本を研究する学者たちが、日本の文化、ビジネス、政治、アートなど様々な角度から日本に関する研究発表を行っている。

出資は、国際交流基金と日本大使館、つまりは日本外務省で、今年6月11-13日の3日間、ハイファ大学、エルサレムのベツァレル・芸術大学が中心となり、カンファレンスが行われた。ハイファ大学だけでなく、ヘブライ大学、テルアビブ大学からも教授や学者たちが招かれていた。

日本からは、在イスラエル日本大使の富田浩司大使はじめ、慶応大学教授、阪大教授、また今回は特にベツァレルアカデミーと提携を始める東京芸大の教授や学生さんたちが参加していた。また福島原発の今を発信しつづけている日本人活動家らも発表した。

今年は、特に平成時代がテーマになり、戦後昭和から、日本がどう変わってきているのか、どこへ向かっているのかなどが、多角的に論じられた。

政治経済では、バブル後の日本は、グローバルゼーションの波に乗り遅れたために、ビジネスが悪化の一途をたどっていると指摘された。

具体的には、日本の大企業が、市場を国内にのみ求める傾向にあり、海外への進出を真剣に求めていないこと。また、海外に進出した際に、現地の会社を買収せず、また、現地の人材を徴用することもしないため、失敗するケースが多いという。

こうしたグルーバリゼーションへの乗り遅れと、製造業の減少、また高齢化で労働力の低下などから、日本の将来は明るいとはいえない、と警鐘を鳴らした。日本を愛するイスラエル人学者たちが頭を揃えて、どうしたらよいのかと、懸念してくれていた。

しかし、国力は低下しているものの、日本の文化への注目度はむしろ上がっているということだった。私たち日本人はあまり気にもしていないが、イスラエル人の目からみると、日本文化は独特で、奇妙な点もあり、だからこそおもしろいようである。

特に日本には「かわいい」という感覚があるが、これを正確に表現する英語、ヘブル語表現はない。カンファレンスでは、心理学的視点なども含め、「かわいい」とは何か、詳しく、かつ細かく研究されていた。

「かわいい」は、日本では、警察などのイメージを変えたり、購買意欲を伸ばすなど経済効果もあげている。このため、日本の文化外交でもさかんに使われているようである。(イスラエル人の方がよく知っている。。。)

しかし、稲田防衛大臣が、文化外交だとして、「かわいい」コスチュームに身をつつんでいる写真に、イスラエル人たちは、驚愕していた。イスラエル人にとって、防衛大臣は、ハードボイルドでしかありえないからである。

それにしても、ハマスやヒズボラ、イランばかりを論じているのがイスラエルでない。日本の「かわいい」まで細かく研究しているという、この余裕がなんとも面白かった。

<国交65周年:リブリン大統領との交流会>

カンファレンス後、日本大使館が、キングデービッドホテルに主要な教授たちと、リブリン大統領を招いて、両国の国交65周年を記念するレセプションを行った。

リブリン大統領は、日本の「金継ぎ」をあげ、壊れたところに金で継ぎをすることで、以前より美しいものになる。そういう経験は両国が共有するものだと述べた。(GPO報告)

国交65周年ということは、日本は、建国後5年しかたっていない時期のイスラエルと正式な国交を結んだことになる。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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