イスラエル感染者213人:さらに厳しい措置発令 2020.3.15

隔離を守っていない人を逮捕する治安部隊 出展:ynet

増加続く感染者:213人

イスラエルでは、安息日中も明らかになった感染者が増え、200人となった。重傷者は2人。中等度は11人。死者はなし。保健省の発表では、自宅隔離している人は現時点で4万人。(帰国後などで2週間の隔離を終えた人は社会復帰できている)

ヨーロッパ、アメリカで感染が急激に拡大している現状から、イスラエルでも感染者は、まだまだ増えると懸念されている。ネタニヤフ首相は、14日安息日開けの夜、「イスラエルは、今新型コロナという見えない敵と戦っている。」と述べ、15日朝から実施されるさらに厳格な隔離政策を発表した。その追加措置とは以下の通り。

①幼稚園を含むすべての学校を、例外なくすべて休校。②スーパーマッケット、銀行、ガソリンスタンドをのぞくすべての商業施設の閉鎖。(レストランは、テイクアウトとデリバリーのみ一部オープン)③10人以上の集会禁止(10人以下でも互いの間は2メートル以上あけること)

これを受けて、最後まで閉鎖していなかったヤドバシェム(ホロコースト記念館)も閉鎖を決めた。

公共交通機関は、運営を続けているが、「できるだけ利用しないように」と指示され、運転手への運賃現金支払いはなし。バスカード・ラブカブでの支払いのみとされた。仕事については、できるだけ家庭からの遠隔で行うよう指示されている。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/277263

また、対テロ作戦に準ずる対策をとると述べ、サイバーテクノロジーを使って、携帯電話を利用し、隔離を監視すること明らかにした。司法庁もこれを許可したとのことである。

www.haaretz.com/israel-news/.premium-israel-to-use-cyber-tech-to-track-coronavirus-patients-1.8675008

これにより、政府は、携帯を使って、新型コロナに感染している人の動向を、本人の承諾なしに監視することができる。感染者が誰と話していたのか、どこへ行ったのかなどを特定し、特別なアプリで紹介されるほか、隔離を必要としている人の動向を監視できることになる。

コロナアプリ:https://www.jpost.com/Israel-News/New-Israeli-app-to-notify-users-of-potential-coronavirus-exposure-620991

実際、隔離を守っていない男を逮捕する保護服姿の治安部隊が逮捕する様子も伝えられている。

www.timesofisrael.com/video-shows-man-in-tel-aviv-being-arrested-for-violating-quarantine/

これが著しく個人のプライバシー侵害にあたるということは、ネタニヤフ首相も認めている。しかし、自分と他者を守り、感染の拡大を阻止するためと説明。また、「これから数週間、”新しいライフスタイル”を受け入れてもらいたい。」とよびかけた。

www.jpost.com/HEALTH-SCIENCE/WATCH-LIVE-Netanyahu-addresses-Israels-plans-amid-coronavirus-panic-620971

なお、手洗い、消毒等の個人レベルでの清潔維持、握手の禁止については、以前から強調されている。特にインド式の両手を胸の前に合わせて頭をさげる「ナマステ」を、ネタニヤフ首相自ら奨励している。

また、ユニークな例では、エルサレム市が、一回の入場者を10人、借りるためだけとして、図書館への入場を許可している。

www.timesofisrael.com/no-more-daycare-restaurants-gyms-or-prayer-quorums-the-new-virus-regulations/

これに先立ち、安息日入り前のスーパーは、食料を買い込む人でぎっしりとなっていた。

youtu.be/dJfmRJm0-40 (Eretz Normadさん youtubeより)

イスラエル軍兵士は基地滞在延長も

現時点で、新型コロナに感染した兵士は、少なくとも4人。現時点で、イスラエル軍諜報部服司令官を含む兵士2700人と、軍関係民間人75人が自宅隔離となっている。

新しい措置が発動される15日(日)朝は、週末を実家ですごした兵士たちが一斉に基地に戻っていく日である。公共交通機関は、こうした兵士たちで枚中ごったがえっている。このため、防衛省は、防衛上の緊急事態に必要不可欠な兵士たち以外については、自宅待機にするという。

一方、現時点で訓練中であった最前線兵士などは、通常、週末には帰宅するところ、基地に残留することになった。この兵士たちは一ヶ月以上、家に帰れないということになる。

www.timesofisrael.com/idf-to-tell-some-troops-to-stay-home-in-fight-to-slow-spread-of-virus/

これとは別に、コロナ感染拡大で、国内対策で軍の手が必要になる可能性があるため、ベネット防衛相は、予備役2000人を招集しておくよう指示した。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/277286

経済支援策

15日朝に発動された制限は、現時点で、来月の過越の祭(4月8−15日)が終わるまでと予測されている。経済省は、この約6週間の経済損失は110億シェケル(約30億ドル/3300億円)と推測する。

新しく発動された規制により、たとえば、イスラエルの人気衣類のチェーン店カストロ(日本で言えばユニクロ)は、日曜から全国454店舗を閉鎖するが、これによって、6000人が無給休暇に置かれることになる。同じ業種ザーラも同様とのこと。

経済省は、「いくら保健省ががんばっても感染をすべて予防することは不可能だ。」として、経済を麻痺させない中での予防策を講じるべきだと反論した。

パレスチナ人を労働者として雇用している工場などでは、西岸地区からパレスチナ人たちが入国できずに、生産が麻痺している。政府は、ウイルスのキャリアになるリスクの高い若者の入国を減らし、55歳以上の労働者の入国許可を5万5000人にすることを検討中。(これは紛争時の手順の準ずる)

また、西岸地区との出入りの煩雑を避けるため、パレスチナ人労働者が一定期間、イスラエル国内に滞在することも検討しているとのことである。

労働力不足を補うため、イスラエルは、来週、中国人1000人、ウクライナ人800人を迎える予定だという。この人々は、2週間の隔離を終えてから、仕事につく予定。大丈夫かと思わざるをえないが・・・

イスラエル銀行は、建設業に880億シェケル(240億ドル/2兆5000万円)の貸付を実施しているので、仮に返金できなかった場合は、イスラエルの銀行システムが崩壊することになる。

www.timesofisrael.com/finance-ministry-said-to-predict-nis-11-billion-hit-to-economy-in-6-weeks/

エルアル機を物資の運搬に利用へ

イスラエルが鎖国状態になっていることから、エルアルなどの旅客機が、停泊したままになっている。これらの飛行機が、コロナ感染で苦しむヨーロッパやアメリカへの物資の運搬に使われることになった。運搬するのは、薬や防護服など。一機につき2万トン搭載できる。

運搬料は、それぞれの企業が航空会社に支払うことになる。これにより、通常の収入の8%は得られるが、赤字対策とまではいかないもよう。

www.jpost.com/Israel-News/El-Al-to-use-empty-passenger-planes-for-cargo-621018

石のひとりごと:政府と国民は運命共同体

イスラエルは、総人口900万の小さな国。しかも四方八方から実在の敵に囲まれているので、国民の危機意識はおそらく世界一だろう。首相を決めるのに1年もかかっているが、それは、本当に命がけでこの国を守れる人を真剣に選ぼうとしているからである。立候補している側も超・真剣である。

今も、上記のような極端ともいえる政策が、ネタニヤフ首相の決断でどんどん発せられているが、今は国会がまだないこともあり、いちいち国会で承認を得ているわけではない。そんなことをしていたら、敵に先手をとられ、イスラエルは生き残れないからである。

実際、(裁判の延期は別として)、コロナ対策についての国民からの批判や反発は、今の所、あまり聞こえてこない。しかし、一方で、これほどの権力を行使できる首相という立場が独裁に陥らないように見張るということもまた、優れた民主国家でもあるイスラエルは怠っていないはずである。

危機に際して何を優先するべきか。危機を乗り越えるためなら多少のことは今はめをつむる。しかし、平和になったら、これをきっちり裁く、というのがイスラエルである。

イスラエルの首相は、聖書時代でいえば、イスラエルの王。彼が主に従うかどうかで国の運命は変わる。次にだれが首相になるかはもとより、よくも悪くも、今はまだ、ネタニヤフ首相の上に主の目と手が置かれているはずである。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイド、イスラエル政府公認ガイドとして活動しています。 イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて18年。学校・企業・教会などで講演して15年になります。