イスラエル兵がパレスチナ人少年を誤射か 2016.6.22

月曜夜、エルサレムからテルアビブに向う国道443号線で、パレスチナ人ユース数人が、路上に油をまいた上、走行中のイスラエル車両に石と火炎瓶が投げつけたため、車の窓が割れて乗っていた3人が負傷(軽傷)した。

これに対し、イスラエル軍兵士らの発砲でパレスチナ人1人が死亡、3人が負傷、2人を逮捕と伝えられた。しかし、翌朝になり、イスラエル軍スポークスマンは、死亡したパレスチナ人らが、たまたま近くにいて犯人グループと間違われた疑いがあると発表した。

これまでの調べによると、事件発生当時、後続して来た車に乗っていたイスラエル兵らが、路上にパレスチナ人らが道まいたとみられる油を発見。すすむうち、投石するパレスチナ人らがいたため、これを止めようと追いかける中、発砲したところ、1人が死亡。3人が負傷したという。この後、犯行にかかわったとみられる2人が逮捕されている。

パレスチナメディアによると、死亡したのは、マフムード・バドランさん(15)。イスラエル軍はバドランさんが犯行にはおそらく関わっていなかったことを認めている。

パレスチナメディアは、イスラエル軍が、パレスチナ人を裁判なしで処刑したと避難。パレスチナ自治政府は、これを「極右のネタニヤフ政権の本性だ。」と避難する声明を出し、国際人権組織に対し、「ただちに調査して記録し、この”犯罪”を国際法廷に訴える」よう要請した。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4818446,00.html

これについて、イスラエル外務省スポークスマンは、「だいたいパレスチナ自治政府が若者たちを煽動し、治安上困難な状況を作り上げなければ、発生しなかった事件だ。」と反論している。

国道443号線は、ラマラに近く、これまでも何度も投石の被害が発生している。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/213917#.V2lLO6UWnA8

<ヘブロンでパレスチナ人射殺の兵士について>

上記のような事件が発生したところだが、イスラエル軍内部では、3月にヘブロンですでに重傷のパレスチナ人テロリストを射殺したとして起訴されているアザリア軍曹についての軍裁判がまだ続けられている。

アザリア軍曹の行為について、軍は厳しく罰する姿勢だが、「相手はテロリストだったのだから、撃った者に罪はない。」と主張する右派勢力が激しく反発している。

直属の司令官だったトム・ナアマン少佐は、アザリア軍曹を告訴する側として証言したが、その後、極右勢力から、ソーシャルメディアにおいて、非難と脅迫も受けるようになり、警察に通報しなければならない事態になった。

そのため、アイセンコット参謀総長を含むイスラエル軍高官11人が、ナアマン少佐を支持するとの公式発表を行った。

ネタニヤフ首相は、「軍の高官を脅迫することは赦されることではない。私は軍の法廷の出す結果に信頼している。皆さんもそうしてほしい。」とコメントした。しかし、安全のため、今後、アザリア軍曹に関する軍法廷で、証言に立つ人の氏名は伏せられることになった。

イスラエル軍には、「Purity of Arm(潔癖な武器使用)」 というルールがある。武器を使用する時には、やむを得ない状況に限られ、不要に人間を傷つけることは禁じられている。国際的にも質の高い軍隊との評価を維持するためである。

しかし、こうした潔癖なイスラエル軍のルールに対し、相手がテロリストであり、戦場における敵なのであれば、自国の兵士は常に守られるべきだという意見が強く、対立しているのである。

今回も、パレスチナ少年の射殺をミスであったと、イスラエル軍は直ちに自ら認めている。今後詳しい調査が行われ、関わった兵士らに処罰が下るかもしれないが、非常に難しい問題である。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4818146,00.html

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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