イスラエルとUAE合意 :イランとトルコの敵意 2020.8.15

ナスララ党首 出展:wikipedia
www.bibleinthenews.com/Podcasts/Print/32 (Bible in the news)

今回、イスラエルと手を組んだUAEについては、これを支持する国々に対し、徹底的に嫌悪を表明する国や団体に分かれつつある。

昨日の記事でも述べたが、イスラム教国の中で、エジプト、オマーン、バハレーンは、アブラハム合意を支持すると表明した。サウジアラビアからは、まだ正式な表明はないが、反発を出していないというだけでも、これまでならありえなかったことといえる。これらの国々は、聖書の預言書、エゼキエル書38章でイスラエルを攻撃する国々には入っていないとみられる国である。(黄色部分)

ヨルダンは、すでにイスラエルとは和平交渉を結んでいるが、アブラハム合意については、国民の7割がパレスチナ人であるため、さすがに明確な承認は表明していない。しかし、隣国イスラエルとの平穏は、維持したいというのが、ヨルダンの変わらぬ姿勢である。ヨルダンも将来、イスラエルを攻撃する国には入っていないと考えられている。

今、中東でこの”アブラハム合意”に真正面から反発しているのは、パレスチナ自治政府の他では、イランとトルコである。

イランとヒズボラの反応

1)イラン政権

イランのザリフ外相は、14日、今月4日に大爆発にみまわれたベイルートを訪問し、その支援を協議するとともに、UAEとイスラエルの合意は、「レバノンや中東の人々を背後から斬りつけるようなものだ。」と述べた。

www.newsweek.com/iran-vows-lebanon-support-uae-israel-stab-back-1525174

15日、イランのロウハニ大統領は、怒りを込めて、湾岸諸国の裏切りだと非難し、「UAEは巨大な間違いを犯した。」と述べた。また、合意のタイミングからして、トランプ大統領の選挙に協力したとも非難した。

ハメネイ・イスラム最高指導者は、「UAEは、自ら抵抗運動の標的になった。」と述べ、イラン革命軍は、「”子殺し”のシオニスト政権の崩壊を早めることになった。」と述べた。

www.jpost.com/breaking-news/irans-president-says-emirates-made-huge-mistake-in-israel-deal-638732

2)ヒズボラ

イランの傀儡ヒズボラは、シリアでヒズボラ司令官をイスラエルに殺害されたとして、イスラエルへの攻撃姿勢に転じたとみられ、ここ数週間、イスラエルとの間に、暴力の応酬が続いて、イスラエル軍は北部に高い警戒態勢をしいていた。

しかし、今月4日にレバノンの首都ベイルートでの大爆発で、ヒズボラも、レバノン市民からも批判を受けるようになり、その後イスラエルへの挑発的な動きはない。さすがに今は、イスラエルとの戦争をする余裕はないだろうとの判断で、イスラエル軍は、先週ぐらいから、北部での警戒態勢を若干緩めたとのことであった。

そうした折の、この合意の知らせである。ヒズボラは14日、ナスララ党首がビデオメッセージで現れ、UAEとの合意について、「アラビズム(アラブ哲学)」への裏切り、エルサレムへの裏切り、パレスチナ人への裏切りだ。UAEは、トランプ大統領個人に大統領選挙を優位にする好意を与えたのだ。」と述べた。

ヒズボラは、イスラエルに対し、シリアで殺された者の復讐をやめたわけではなく、やがてゲームチェンジになるような攻撃を行うと述べた。これが実際の攻撃につながっていくかどうか、イスラエル軍はよくみきわめていることと思う。

www.timesofisrael.com/nasrallah-to-israel-expect-game-changing-retaliation-for-death-of-group-member/

*レバノン大爆発その後

4日にレバノンのベイルートの港で発生した大爆発。死者の数は、メディアによっていろいろだが、170人ぐらいになっているもようである。その後、市民の怒りが爆発してデモになり、結局レバノン政府は全員総辞職した。レバノンは、今は港なし(食料搬入ルートなし)、政府なしという状況になっている。

今回の爆発の原因になった硝酸アンモニウムについては、レバノン政府の要請で、アメリカのFBIも加わって、調査が進められているが、ロイターによると、今の所、詳細は不明で謎のままだとのこと。

jp.reuters.com/article/lebanon-security-blast-ship-idJPKCN2580KD

市民の怒りは、武器を国内に持ち込んでいるヒズボラにも向けられているが、14日、ナスララ党首は、この大爆発の背後にイスラエルがいた可能性があると示唆。もしそうなら、ヒズボラだけでなく、全レバノンはイスラエルと対峙しなければならないと述べた。

トルコの反応:アブダビから大使を召還?

トルコのエルトアン大統領は14日、イスラエルとUAEの国交正常化合意と、その直後にパレスチナ自治政府がアブダビから代表を召還したことを受けて、トルコもアブダビにいる大使を召還し、UAEとの外交活動を停止する可能性を示唆した。

これに先立ち、トルコ外務省は、トルコ政府の声明として、「パレスチナ人を裏切るこの動きを歴史はゆるさないだろう。」と表明していた。

www.timesofisrael.com/erdogan-says-turkey-could-suspend-relations-with-uae-after-israel-deal/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。