イラクで前進を続けるISISは、シリアとの国境の石油精製施設をさらに制圧。シーア派も含め、スンニ派以外の者を、強制改宗させ、しないものはその場で首をはねるなどの残虐をきわめながら、バグダッドにせまりつつある。
そのISISの指導者で、カリフと称するアブ・バクル・アル・バグダティの姿が、初めてビデオで流された。イラク第二の都市モスルのモスクでメッセージを行ったときの映像である。検証がすすめられているが、本人であると考えられている。
バグダティは、豊かなひげと黒の法服に身をかため、いかにもイスラム指導者といった感じである。
www.bbc.com/news/world-middle-east-28177848
<海外にしみ出す危機>
ISISは、海外のイスラム教徒に、この動きに賛同するよう呼びかけている。すでにイギリス人をはじめ、オーストラリア人など、海外のパスポートを持つ者がシリアに入って、テロの訓練を受け、それぞれの本国に帰りはじめている。そこで、テロを決行する可能性がある。
ISISの呼びかけを受けて、イラクに入ろうとする欧米人もいる。欧米諸国はシリアやイラクに行く者は犯罪者として逮捕するなどの処置を講じている。
<今が勝負?>
BBCの解説によると、ISISは、あまりにも残酷で、極端なイスラム主義であるため、アルカイダやハマスのほうがましといわれるほどである。今のところ、イスラム諸国はそろってISISを警戒している。
サウジアラビアは、ISISの侵入に備えて、3万の軍を国境に配備している。
今、最も危ないところにいるのはヨルダン。イスラエルとアメリカは、ヨルダン防衛に備えている。もしISISがヨルダンを攻めてくれば、イスラエルも巻き込まれることになる。
イラク軍は、現在、アメリカなどの支援を受けて、ティクリットを奪回しようとしている。もし今ティクリットを奪回することができれば、ISISに大きなイメージダウンを与えることができる。
しかし逆にイラク軍が、テシクリット負けた場合、ISISは一気に勢いづくことになる。そうなると、小さな聖戦主義グループからISISに傾倒していき、その勢力が増し加わり、イラクは消滅、本当にイスラム帝国になってしまうかもしれない。
こうした状況に対し、アメリカはまだ思い切った対処はしておらず、中東でのアメリカの権威はますます失墜方向である。
なお、アメリカがイラクに派遣している軍関係者は、現時点で650人。470人は、バグダッドの大使館関係者の保護のためで、約200人がイラク軍の訓練にあたっている。かつては15万のアメリカ軍が、イラクに駐留していた事を考えると、これはまさに何もしていないといわれても仕方がない数。