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IAEA(国際原子力機関)がイランを非難:イランは監視カメラ27台撤去
イランの核兵器開発に関する交渉が危機的様相にある。3日、イスラエルに来てベネット首相と会談し、ウイーンでの交渉に戻ったラファエル・グロシIAEA長官は、6日からの会議でイランで複数の施設から核が見つかったにもかかわらず、十分な説明を行っていないことについて話し合った。
その後、イランを非難するかどうかの決議を行った結果、ロシアと中国以外は賛成票を投じたため可決された。これを受けて、IAEAのグロシ長官は、8日、正式にイランへの非難声明を発表した。ベネット首相はこれに歓迎の意を表した。
この直後、ベネット首相は、UAE(アブダビ)へ電撃日帰り訪問を実施。アブダラ・ビン・ザイード・アル・ナヒヤン大統領と会談した。主にはイラン情勢や、中東に関すること。ウクライナ情勢について話し合われたとみられる。
www.timesofisrael.com/bennett-makes-unannounced-visit-to-abu-dhabi-to-meet-with-uaes-ruler/
すると、これに反発したイランは、9日、国内の核施設に設置したIAEAの監視カメラ27台を撤去した。IAEAは、数週間以内に、もはやその動向を監視できなくなるとの見通しを発表し、緊張が高まっている。(ただし、イランは、まだカメラ40台は残しており、核拡散防止条約からも逸脱するにはいたっていないとのこと。)
続いてイランのモハンマド・エスラミ原子力組織代表は、新しく導入した最新式ウラン濃縮用遠心分離機の稼働に入ったと発表。今のIAEAは、シオニスト(イスラエル)の人質になっていると非難した。
しかし、では、ここからどうなるのかだが、このままであれば、イランと世界諸国との核交渉(JCPOA)は、アメリカが復帰しないまま破綻する可能性がきわめて高い。そうなると、イスラエルは、いよいよ、イランに核攻撃されないよう、自衛するという主張を声高にしていくと思われる。
実際、ベネット首相は、エスラミ氏の発言の後、イギリスメディアのインタビューで、「西側が今圧力を強めないと、イランはすぐにも核兵器を完成してしまうだろう。」と述べた。
ダマスカス空港閉鎖:イスラエルによる攻撃か
このように、イランの核兵器開発はすでに最終段階にあるとみえ、今はそれを運搬するミサイルやドローン開発を妨害するような攻撃が目立つようになってきている。イランでは5月中、それらに関係する指導者や科学者4人が暗殺や毒殺で死亡した。これらは、イスラエルによるものとの見方が優勢だが、イスラエルは、ほとんどの場合、ノーコメントである。
シリア領内のイラン関連組織へのイスラエルによるとみられる攻撃もその頻度や大胆さが、増してきている。
シリアの首都ダマスカス近辺への攻撃も頻回になる中、10日(金)夜明け前には、ダマスカス空港南部にあったイラン関係倉庫への空爆が行われた。
すると、その数時間後、シリア政府は、滑走路に深刻な損害が出たとして、一時、民間航空のダマスカス空港からの離着陸を停止すると発表した。
イスラエルは、今回もノーコメントではあるが、これまでに、イランが、シリアの民間機を使って、武器をヒズボラへ搬送していると避難していたことから、おそらくはイスラエルによるものと考えられている。
シリアの実質有力者であるロシアは、こうしたイスラエルのイラン攻撃を、これまでのところ黙認してきた。これは、イスラエルが、ウクライナ情勢において、ロシアを避難せず、経済制裁もせず、ウクライナへの直接的な武器支援を行わないということの見返りとみられている。
しかし、今回、ロシアは、ダマスカス空港の滑走路が、ダメージを受けているのが明らかな航空写真を提示し、きびしくイスラエルを避難する声明を出した。
ロシアは先のJCPOAの非難決議の際にもイランへの理解を表明しており、全体的にイスラエルとロシアとの関係が徐々に悪化へ向かっているという感じである。