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バイデン大統領とネタニヤフ首相の電話会談
16日、ようやくバイデン大統領からネタニヤフ首相に電話があった。これまでのアメリカの大統領で就任から4週間もたってからイスラエルの首相に初電話したのは、バイデン大統領が初めてである。中東諸国の中では最初だが、国際社会の中では12番目。G7とミュンヘン・セキュリティ会議の前であった。
首相府によると、両首脳の電話は約1時間。バイデン大統領は、アメリカはイスラエルの治安維持へのコミットすること、治安問題も含めてのアメリカとイスラエルのパートナーシップを継続すると約束したとのこと。
また、今すすめられている中東諸国とイスラエルとの国交正常化をさらにすすめていくことも話し合った。しかし、バイデン政権は、イエメン問題でもサウジアラビアとの関係がギクシャクしており、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化には、あまり良い影響がないかもしれない。
バイデン大統領は、パレスチナ問題でも平和を進めることで話をだしたが、ネタニヤフ首相はこれには反応しなかったとのこと。
イランの脅威については、緊密に連絡を取り合っていくと話し合った。しかし、イスラエルはバイデン大統領のイランとの核合意に戻るとの方針には、反対するとの意思を明確に表明している。ネタニヤフ首相は、2015年の際のイランに課された条件には不備があるとして、そこから離脱したトランプ大統領の方針を支持するとの方針を変えていないことを伝えている。
これについて、バイデン大統領は、先週、先にイランが、イランと主要5カ国、EUとの核合意、JCPOAとの約束に戻ることを条件に、核合意の話し合いに戻ると発表した。
これに対し、イランは拒否を表明し、そうではなく、先にアメリカが、イランへの経済制裁をすべて解除するなら、イランとの核合意の話し合いに戻ることを受け入れると、強気の姿勢を崩さなかった。
壁にぶちあたったような状況だが、アメリカは今、イランとの関係を改善しながら話し合いに至るよう、動き始めている。
こうした状況の中、ネタニヤフ首相は、イランとアメリカの話し合いがどうなるのかに関わりなく、必要に応じて自己防衛していくとの意思表示をしている。ネタニヤフ首相は、アメリカとの関係について、「ポリシーが一致するかどうか」であり、強い結束で結ばれた関係ではないとの見方を語っている。
言いかえれば、利益が一致しているなら共に歩くが、もし我々に危険をもたらしそうなら(たとえばイラン問題)、それには反対していく。相手が民主党であっても、その方針には変わりはないと語った。イスラエルにとって益になるかならないかが、焦点だということである。
www.timesofisrael.com/after-four-weeks-of-waiting-netanyahu-receives-coveted-call-from-biden/
この話し合いの3日後、バイデン大統領は、就任後初となる重要なオンラインG7サミットと、ミュンヘン安全保障会議に出席したのであった。
G7:オンライン・サミット:民主国家が共に共産諸国に立ち向かう方針
G7(主要国首脳会議(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本)は、昨年6月、アメリカ主導ワシントンで行われるはずだったが、トランプ前大統領が、ロシア、オーストラリア、インド、韓国を入れて拡大会議にしてはどうかと言い、合意できなかったことや、コロナ情勢もありで中止となっていた。
そのG7が19日、イギリスのジョンソン首相が議長を務める中、本来のG7のメンバーで開催された。G7に初主席となったバイデン大統領は、「アメリカ・ファースト」の時代は終わったと宣言。「アメリカは戻った。」と繰り返し、民主主義を皆で守っていく重要性を訴えた。
また、世界の世界の動勢は大きく変わったとし、今は直面している試練をよく見て、競争するだけでなく、共に働く必要があると述べ、もしそれに失敗したら、世界中が共に沈むと述べた。
ロシアをG7に含めようとした前トランプ大統領と違い、バイデン大統領は、中国、ロシアといった共産圏に押されないようにしなければならないと、G7民主国家首脳たちに結束を呼びかけた。
近年、中露は、サイバー攻撃やテクノロジー、ワクチン外交を展開しており、西側諸国の脅威になってききている。ドイツのメルケル首相も、中国とロシアの進出に危機感を表明した。
この他、G7で特に緊急の課題としてあげられたのが、①新型コロナワクチンの均等配分、②気候変動への対策としての脱炭素化運動である。
①コロナ対策
ワクチンの囲いこみをやめ、途上国にも行き渡るよう、ワクチンの支援金として75億ドル(7900億円)を拠出する。(アメリカは40億ドル、ドイツが12億ドル、日本は2億ドルなどとなっている)
これについては、前にも解説したとおり、中国とロシアのワクチン外交が目につくようになっており、西側が先か、中露が先かの競争になっている。
②気候変動対策に向けた脱炭素計画
11月に第26回国連気候変動枠組条約締結国会議(COP26)が開催される。このときに各国が脱炭素の目標を計画を発表する。
www.nytimes.com/live/2021/02/19/world/g7-meeting-munich-security-conference
ミュンヘン治安会議:イランとの話し合いに向けて
ミュンヘン・セキュリティ・カウンシルは、独立した国際社会の治安会議で、1963年から毎年、70カ国以上から350人以上の治安担当者が集まって、それぞれの治安問題に関する方針を発表する重要な国際会議である。
バイデン大統領は、改めて、2015年のイランとの核合意に戻る意欲を表明。アメリカは、イランの核兵器開発に関する協議を行う国連安保理に戻る準備があると述べた。
同時にイランが中東で平和を阻止するような動きをしていることについても協議し、アメリカとヨーロッパが共にパートナーとなって対処する必要があると述べた。そのためにいくつかのイランへの好意を示すような緩和措置(国連安保理に大使、トランプ大統領が、イランへの国連制裁の復活を宣言したことを取り下げるなど)も講じており、口だけではないことをイランにも表明している。
しかし、イランは、すでに明らかに、核兵器への歩みを始めてしまっている上、またアメリカについては、現在の経済制裁を全て解除するなら話し合いに応じると強気の姿勢を崩していない。
www.nytimes.com/2021/02/18/us/politics/biden-iran-nuclear.html
ブリンケン国務長官:これまでのイラン対策から方向転換が必要
ブリンケン国務長官は、バイデン大統領のG7での発言後、BBCのインタビューで、これまでの厳しい圧力が、状況を悪化させたとの見方を語った。
基本的にアメリカとイスラエルは、厳しい経済制裁で、イラン人自身が、今のイスラム政権を変えてくれることを望んだが、結局そうはならなかった。逆にイランは反発を強め、ウランの濃縮を進めるなど、合意から逸脱している上、中東では過激派への支援を継続している。
この状況を変えるためにも、イランに好意的な対策を講じながら、合意に至る必要があると述べた。これについては、イスラエルのエキスパートの中にも同様の意見を持つ声も出始めている。
これに先立ち、ブリンケン国務長官は、バイデン大統領と同様に、今の世界をとりまく危機、パンデミック、地球温暖化、無秩序な武器の横行に立ち向かうためには、G7のように主要国の一致が必要だと述べた。また、アメリカのリーダーシップの回復の重要性を述べ、アメリカが不在になったら、その空白に好ましくない勢力が入り込んでしまうとして、アメリカのリーダーシップの回復を急ぐ意欲を見せた。