COP26にむけて:地球温暖化問題は国家安全保障の問題とベネット首相 2021.10.25

COP26 BBC

COP26は地球のターニングポイント

地球温暖化で異常気象が目立ち始めている。国際社会は、一丸となり、温室効果ガスを削減するなどして、地球の温暖化を抑止しようとする会議を定期的に行っている。これをCOP(Conference of Parties:締約国会議)と呼ぶ。

この国際会議は、1992年、ブラジルで開催された地球サミットで採択された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に基づき、各国の脱温室効果ガスの削減などの取り組みと、その効果を検証しつつ、地球規模の視点で、共にこわれかけた地球を守ろうとする会議である。

今年のCOP26は、コロナで昨年の会議が中止となったため、2年ぶりに国際社会がイギリスのグラスゴーに集まることになっている。期間は10月31日から11月12日。参加国は197カ国で議長国はイギリスである。

気候変動が明らかである。今後、温室効果ガスを削減、植林などによる温室効果ガスの吸収などをはかって、平均気温の上昇を1.5度以下にとどめなければ、21世紀が終わるまでに3度近くにまで上がると言われている。このため、今回のCOP26は、人類の将来に対するターニングポイントになると、警告されている。

地球温暖化が人類に示すもの:なかなか一致できない国際社会

COPは、1995年から毎年開催されるようになった。1997年のCOP3は、日本で開催されたが、この時、世界は初めて、それぞれの具体的な温室効果ガス削減値を約束し、合意書に署名した。これを京都議定書という。

温室効果ガスとは、二酸化炭素、メタン、一酸化ニ窒素などで、京都議定書当時は、まだ欧米など先進国が、圧倒的に多く排出している時期であった。このため、義務とは定義づけずに、先進国が自主的に、ガスの排出を削減するという形であった。

2015年のパリ協定Paris COP21 (Roberto Stckert Filho/PR)

京都議定書においては、温室効果ガスを2008年から2012年までに1990年比で約5%削減する(気温の上昇幅を1.5度以下にする)という目標のもと、EUが8%、アメリカが7%、日本も6%の削減を約束した。

しかし、その4年後、温室効果ガス最大排出国の一つであるアメリカが、京都議定書から離脱する。また、国際社会も大きく変化してきた。たとえば、京都議定書では、後進国と認識され、ガス削減の提示をしていなかったブラジルや中国、インドといった国々が、経済的にも発展して温室ガスを排出するようになってきた。しかし、発展途上国に、温室効果ガス規制を下手に制限させると、その国の経済を圧迫する懸念もあった。

世界は大きな成果を出すことなく、18年後で、京都議定書の包括的な期限(2020年)を前にした2015年、ようやくパリ協定を締結することとなった。しかし、この時もアメリカが5年後に離脱。バイデン大統領に交代後の2021年に復帰という混乱が続いていた。

こうした中で、今年のCOP26ということである。

www.nikkei.com/article/DGXZQODE138IE0T10C21A5000000/

www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3536.html

COP26:地球温暖化対策にとどまらず、国際社会の経済と構図にも影響

温室効果ガスを排出する国
経産省 エネルギー庁

地球温暖化は加速しており、異常気象も発生するようになっている。COP26は、人類のターニングポイントと言われる中、この会議で、各国がどういう取り組みを発表するのかが、国際社会でのそれぞれの国の信頼や立場、さらには、経済にも影響を及ぼすと予測されている。

会議の目標は、COP冊子によると、①21世紀中旬までに温室効果ガスゼロにする。(温暖化を1.5度に抑える)②気候変動の影響が避けられない国や自然を保護する。

主な議題は、①2030年の温暖化ガス削減目標、②石炭火力発電縮小、③途上国への資金支援、④自動車など交通の脱炭素化、⑤森林再生など。

ukcop26.org/wp-content/uploads/2021/08/COP26-Explained-JAPANESE.pdf

これらを実現する方策として、①先進国は、(温暖化ガス削減ができない)後進国支援として年間1000億ドル(12兆円)以上を捻出する、②パリ協定に基づき、温室効果ガスを抑制するルールを決める、などとなっている。

結局のところ、この1000億ドルを誰が出すかということが最大の問題だという。後進国は先進国は当然出すべきだという。しかし、おそらくそれは無理だというのが予想となっている。

また、非常に妙なことだが、先進国が、温室効果ガス削減を自国で達成できない分、他国の削減量をクレジットの形で購入し、その先進国は、自国の削減量を達成したと言えるようにできるというシステムがあるとのこと(パリ協定13条)。

この点が透明度が十分でないので、先進国がいったいどの程度の削減を行っているかはわからないのだという。特に中国は、温暖化ガスの最大排出量であるのに、実態がどうなっているのかは不明だと言われている。今回は、このシステムの透明化も議論されるという。

結局のところ、地球温暖化というよりは、お金の問題を話し合うことにもなるようである。

project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00005/100100121/

注目は1-2日の首脳級会議。バイデン大統領はじめ、フランス、ドイツ、イタリアなどは首脳が出席するが、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領はオンライン参加となる。日本の岸田首相は、COP26にて、初の国際会議出席を予定している。

イスラエルは気候変動を国家安全保障の位置付けと発表

Haim Zach (GPO)

イスラエルは、小さい国なので、温室効果ガスでの世界への影響はほとんどないと考えられるが、それでも、2015年と比較して2030年までに27%、2050年までに50%削減すると世界に約束している。

ヘルツォグ大統領は20日、様々な専門家からなるイスラエル気候変動フォーラムを立ち上げると発表した。国際社会にイスラエルのこの問題へのコミットを表明するものである。しかし、これが危機対応だけでなく、未来へのチャンスになるとの見方も語っている。

www.timesofisrael.com/state-of-emergency-demands-emergency-steps-herzog-forms-israeli-climate-forum/

また、COP26に出席するベネット首相は、その開始1週間前の24日、「気候変動は、火災、洪水、熱波など現実の脅威になっている。このため、気候変動への対処は、国家安全保障の位置付けである。」と述べ、作業部会を設置すると発表した。

設置される作業部会は、ベネット首相を議長として、エネルギー省、環境保護省、経済産業省、農水省が関係し、政府だけでなく、民間や学会も含まれる。また別に、治安と外交の専門家からなるチームも結成するとのこと。イスラエルは、イノベーションの最先端国として、この分野でも世界に貢献したい考えもある。

具体的な対策として、クリーンエネルギーを目指して、再生可能エネルギー関連のイノベーションに力を入れる。また、二酸化炭素を発生させる有機体の処理技術、産業におけるエネルギーの効率化、公共交通機関の電力への移行、気候関連のイノベーションに予算を計上することになっている。

しかし、実際には、予算も計上されておらず、実際には、口ばかりで、イスラエル自身が宣言している目標にすら、まったく達していないとして、国内の自然保護団体からは、批判も出ている。

www.timesofisrael.com/government-announces-new-climate-steps-to-derision-of-environmental-groups/

石のひとりごと

人間たちが集まって、壊れかけた地球にどんな影響をもたらすことができるのだろうか。世界の人間たちが、頭をよせあつめて、大きな天地にたちむかおうとしている。おもしろいイノベーションも出てくるかもしれない。しかし、この事態になってもそれぞれの考えの違いや利害で揉めている様子もある。

また、一方では、今日生き延びる食料がない人、コロナに感染して死んでいこうとする人がいる。難民として橋の下にいるハイチの人々。核兵器を作るイランの要人たち。中国と対立するバイデン大統領。

かとおもえば、日々絵を描いているアーティスト、人々を笑わすコメディアンもいる。人間は本当におもしろい存在だ。すべての創造主であり、総合的にすべてをみておられる神は、この人間たちの営みをどうみておられるかと思う。

私は神が人の子らに与えて労苦させる仕事を見た。神のなさることは、すべて時にかなって美しい。神はまた、人の心に永遠を与えられた。しかし人は、神が行われるみわざを、初めから終わりまで見きわめることができない。(伝道者の書3:10-11)

結局のところ、もう全てが聞かされていることだ。神を恐れよ。神の命令を守れ。これが人間にとってすべてである。神は、善であれ悪であれ、すべての隠れたことについて、すべてのわざをさばかれるからだ。(伝道者の書12:13-14)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。