3日夜から始まったガザからのロケット弾の雨。ラマダン入りの6日、深夜すぎから、停戦のニュースが出始め、4:30以降、平穏が戻った。
仲介は、エジプトとカタール、国連。ハマスは、停戦の条件をイスラエルが実行するのを1週間待つと言っている。その条件とは、物資の搬入制限を解くなどで、カタールの資金搬入を許可したとの情報もある。*カタールの資金は西岸地区へ搬入される予定
www.timesofisrael.com/gaza-official-israel-agreed-to-implement-ceasefire-concessions-within-a-week/
イスラエル政府は、停戦が成立したとして、6日、南部住民に通常の生活へ戻るよう指示した。
www.haaretz.com/opinion/.premium-when-will-death-stop-falling-from-our-skies-1.7209255
この3日間の衝突で、ガザが発射したロケット弾は、700発以上。市街地へ着弾するとみられたものは迎撃ミサイルシステムが撃墜したが、その防護率は86%であった。一方、イスラエル軍のガザへの空爆は、350箇所以上であった。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/262734
この衝突で、イスラエル人4人、パレスチナ人は23人が死亡した(ガザ側発表)。
イスラエル人で死亡した4人は、以下の通り。(報道の混乱で一時死者は5人に見えたが、最終的には以下の4人)被害地域は、ガザ周辺にとどまらず、アシュケロン、アシュドド、スデロット、ベエルシェバにまで拡大した。
①モシェ・アガディさん(60)/アシュケロン
②ジアド・アルハメムダさん(47)ベドウイン/アシュケロン
③ハス・メナヘム・プレズアズマンさん(21)/アシュドド
④モシェ・フェデルさん(68)/クファル・サバ
リブリン大統領は、すべての犠牲者家族を慰問した。ガザでは、カイロに集まっていたハマスの指導者ヤヒヤ・シンワル、イスラム聖戦のジアド・アル・ナクハラが、ガザへ戻った。
<カタール資金:西岸地区へ搬入へ>
ガザは、現在、崩壊ギリギリの限界にきている。(失業率51%)。これを助けていたのが、カタールからの援助金であった。これまで、イスラエルは、ガザとイスラエルの衝突が発生するたびに、カタールの資金がガザへ入ることを承諾してきた。
資金がなくなって、ガザが崩壊すると、イスラエルが、ガザを再占領することをせまられるか、そうでなければ、ハマスよりやっかいなものが入ってくる可能性があるからである。このため、ハマスは、資金を得る手段として、イスラエルへのロケット攻撃を使うというサイクルになりつつあるとみられた。
これを「弱さ」と見たリーバーマン当時防衛相は、昨年11月、これ以上、ネタニヤフ政権とともに歩めないとして、辞任を表明し、以後、ネタニヤフ首相が防衛相も兼任するようになった。
今回もカタールは6日、ラマダン前に、4億8000万ドルを、パレスチナ人支援に送金すると発表した。その直後に、ハマスは攻撃を停止した。
しかし今回の搬入先は、ガザではなく、西岸地区のパレスチナ自治政府である。ガザにどのぐらい入るのかは、はなはだ疑わしい。ガザに資金が入らなければ、またイスラエルへの攻撃が再開されるだろう。
www.timesofisrael.com/qatar-pledges-to-send-480-million-in-aid-to-west-bank-and-gaza/
一方で、パレスチナ自治政府が、この資金を使って、ハマスを手なづけて、パレスチナ地区を統一する可能性を指摘する分析家もいる。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5505730,00.html
7日、エルサレムポストによると、ガザでは、イスラエルの攻撃で家を破壊された家族には一件につき、ハマスから1000ドルが支給されることになっているとのこと。西岸地区経由の資金かどうかは不明。
<南部住民の怒り>
同様のガザとの衝突は、昨年11月、3月に続いて3回目になるが、イスラエル市民に4人もの死者が出たのは今回が初めてである。
イスラエル南部住民は、夜中に何度もサイレンで起こされ、シェルターに駆け込む。子供達は学校が休校になるし、仕事にも行けない。これが日常になるのは受け入れられないと語る。
自国民が、深刻な被害にあっているのに、政府が、いつまでたってもガザに対して決定的な政策をとらず、いつまでもこうしたイタチゴッコを続けていることに、南部住民は当然ながら怒りをぶつける。
今回も、死者を出しながらも、ガザを一掃しようとしないネタニヤフ首相とその周囲にいる右派たちを「弱い」と批判する声も決して小さくない。また、政府は、ユーロビジョンを開催したいばかりに、早期に妥協したとの見方が優勢で、南部住民らは、またもやその犠牲になったと怒っている。
www.timesofisrael.com/in-rocket-scarred-south-quiet-sets-in-and-anger-at-government-simmers/
しかし、4月の総選挙では、南部住民の90%が、ネタニヤフ首相に投票していたのである。
また、このような状況にありながらも、イスラエル南部に移住していくユダヤ人は増加傾向にあることは特記すべきであろう。
www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/The-next-round-of-rockets-is-coming-soon-analysis-589009
<ガザ情勢にゲームチェンジ?:ネタニヤフ首相>
イスラエル政府への不満がある一方で、ネタニヤフ首相は、今回、ガザとの関係において、流れを変えることができたと主張する。すなわち、ガザとイスラエルの衝突のペースを決めるのはイスラエルになったということである。確かに、今回は、いつものように、ハマスが「勝利宣言」を出していないのも興味深い点である。
これについて、Yネットの著名な中東評論家ロン・ベン・イシャイ氏は、次のように解説している。
1)”停戦”を要請したのはハマスであって、イスラエルではなかった。
今回は、ガザの方から停戦を要請し、イスラエルがまだ応じていないうちに、ハマスとイスラム聖戦は自分からロケット攻撃を停止していた。ハマスは、ラマダン入りなので、戦いをスローダウンしなければならなかった。
また、イシャイ氏によると、今回、イスラエルが、ガザに向かって証明したかったことは、「いくらやってもイスラエルは動かない。抵抗は無駄。」という現状である。確かに4人もの犠牲者を出しながら、イスラエルはあわてることなく、停戦を持ち出すことはなかった。
イシャイ氏は、ユーロビジョン(国際歌謡コンテスト)開催のために、ガザへの総攻撃を避けたという説は否定する。
2)イスラエルは反撃の正当性を維持した。
イスラエルは、ハマスやイスラム聖戦指導者らをピンポイント攻撃するなどして、ガザ市民への被害を最小限に抑えた。一方で、イスラエルは、市民4人が自宅などで死亡している。トランプ大統領が言ったように、イスラエルは、防衛の権利を持つという立場を維持することができた。
3)政府と軍が一致し、イスラエルの脅威を示した
イスラエル軍参謀総長は、今年1月に就任したばかりのアビ・コハビ氏である。今回、政府と軍は一致して動いており、その作戦の内容の詳細が、メディアに漏れることはなかった。
また今回、イスラエル軍は、どういうわけか、ハマス指導者らの自宅や居場所を知っていて、正確にピンポイント攻撃に及んだ点も、ハマスやイスラム聖戦には改めて、脅威になったのではないかという点。
しかも、イスラエルは、地下に潜んでいるテロ組織の司令官らに、自宅を攻撃するので、家族を避難させるよう予告してから、攻撃していたという。この点もまた、ハマスやイスラム聖戦にイスラエルの大きさと余裕を示す結果になったはずである。
3)イスラム聖戦を攻撃した
イスラエルはこれまで、ガザの管理者はハマスだと断定し、ハマスの拠点ばかりを攻撃してきた。ところが、今回は、イスラム聖戦(イラン配下)の拠点も攻撃している。イスラエルが、イランを恐れていないということを示した。
とはいえ、これらは、ガザからの攻撃を抑止する助けにはなっても、解決ではない。ハマスが、その存在基盤をイスラエルの破壊においているテロ組織である以上、戦いは、またすぐ発生するだろう。
結局のところ、ハマスには、ガザから出て行ってもらい、もっとガザ市民のことを考える指導者に入ってもらうしかない。今の所、そういう人物がいないというのが、問題である。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5505129,00.html
イシャイ氏は、今回のガザへの対応を評価している形ではあるが、市民に4人の犠牲者が出たことについて、迎撃ミサイルの配備をもう少し増やしておくべきだったと述べている。
<石のひとりごと>
ネタニヤフ首相については、課題も多く、賛否両論ではあるが、実質を見れば、今回もできるだけ兵士に犠牲を出さず、比較的短期間で平穏を取り戻したことは、確かである。
イスラエルでは、8日から戦没者記念日、独立記念日と大事な日がつづく。また、ユーロビジョンを成功させることは、ヨーロッパからBDS(ボイコット)運動に苦しめられてきたイスラエルにとって、政治的にも非常に重要である。ガザと戦争をしている場合ではない。
そういう意味では、南部住民は、国全体のための犠牲になっているといえる。ネタニヤフ首相はこれをどう捉えているのかはわからないが、国の指導者としての決断とそれに伴う責任の重さは、想像を絶するほど重い。
特にイスラエルという国の運営は、世界一難しい仕事である。それを13年以上もやっているネタニヤフ首相の知力、体力、精神力は、驚異的である。イスラエルの繁栄を守るという信念が、ネタニヤフ首相の中にはあるのだろう。自分の地位や権力を守るためだけに動いている政治家には、決してできない仕事である。
日本の国を運営している阿部さんはどうなのだろう。命がけで、日本の繁栄を守ろうとしてくれているのだろうか。それならば、私たちは、日本国民として、特にクリスチャンとしては、批判ではなく、彼のために祈るということが非常に重要である。