イスラエルは、防衛のため、シリアで、イランからの武器がヒズボラに移送されそうになった場合、先手をうって、これを攻撃する作戦を続けている。その回数は、これまでに200以上とも言われる。
17日、イスラエル空軍は、地中海に面するシリアの町ラタキア北部のシリア軍施設を攻撃した。そこからレバノンのヒズボラに武器が移送されるとの情報があったからである。
イスラエル空軍機は、地中海側からこの施設を攻撃したが、同じ時刻に内陸からこの地域に飛来したロシア空軍機が、イスラエルの戦闘機を狙っていたシリアの地対空ミサイルに当たって墜落。乗組員15人が死亡した。皮肉にもこの地対空ミサイルはロシア製S200であった。
この直後、ロシア軍は、イスラエルがこうした攻撃の際にはロシアに通告することになっているが、それが遅すぎたと非難。さらに、イスラエル戦闘機が、ちょうどロシア軍機が近くにいる時にミサイルを発射し、ロシア軍機を地対空ミサイルのカバーに使ったと、イスラエルに責任があると非難した。
シリアのアサド大統領は、プーチン大統領に哀悼の手紙を出し、「傲慢なイスラエルの悪行のせいだ」と言い訳している。シリアのメディアによると、シリア政府は現在、ロシア機を撃墜した地対空ミサイルの担当官らを逮捕し、調査しているという。
www.timesofisrael.com/iaf-chief-heads-to-moscow-to-present-findings-on-downing-of-russian-plane/
イスラエルは、軍事施設への攻撃は認めたが、ロシア機をカバーに使ったことは否定。これは、悲惨な事故であったと主張している。イスラエルは20日、イスラエル空軍のアミカム・ノルキン長官をモスクワに派遣し、独自の調査結果と作戦の詳細についてを報告している。
ロシア軍機墜落の直後、ネタニヤフ首相は、プーチン大統領に電話し、遺憾を伝えるとともに、イスラエルには何の計算もなく、事故であったと伝えている。
<プーチン大統領:これは悲惨な事故>
ロシア軍がイスラエルを非難する発表を行ってまもなく、プーチン大統領は、「イスラエル機が撃墜したのではないのだから、これは悲惨な事故であったとみられる。」との見解を発表した。プーチン大統領は、詳細な調査を行うと言っている。
ロシアにとっても、今はイスラエルと親密な関係を継続する方が有益なのである。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/252169
<イスラエルの攻撃は失敗だった:ナスララ・ヒズボラ党首>
ヒズボラのナスララ党首が18日、テレビ演説で、「イスラエルの(ラタキアでの)攻撃は失敗だった。非常に命中率の高い精密なミサイルはすでに、我々の手に搬入された後だった。」とコメントした。
これを受けて、ネタニヤフ首相は、「イスラエルを攻撃するなら、いまだかつてない想像をこえる規模で、反撃する。ヒズボラはイスラエルを攻撃しない方がよい。」と釘をさすコメントを出した。
また、ラタキアを攻撃したのは、イランがイスラエルを攻撃しようとする準備が進んでいたからだとし、イスラエルには自衛の権利があると述べた。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5354754,00.html
<イスラエルの懸念はイランの回廊>
シリアの内戦は、ロシア軍の介入でアサド政権が国土を奪回する方向で終焉に向かいはじめている。これは、反政府勢力支配域にアサド政権のせい協力が戻ることを意味する。その地域に、これまでになくイランやヒズボラの存在が目立ち始めていることはすでにお伝えしている通りである。
今回、イスラエルが攻撃したラタキア地域は、地中海に面しており、イランからイラク北部のシーア派地域、シリアを通って地中海に抜ける”イランの回廊”の一部分であった。
アサド政権がシリア領土を奪回することによって、今や、この回廊が地続きとなり、イランが、地中海にまで進出することが可能になった。これは、イスラル史上、最も危険な状況だという。
これを抑えているのが、ロシアなのだが、言い換えれば、このロシアの動き次第では、一気にロシア、イラン、そしてトルコも加わって、イスラエルに攻め込むことも可能になるということである。このため、イスラエルは、ロシアの機嫌とりに忙しいのである。
現時点ではまだ、ロシアはイスラエルとの戦争は望んでいないらしく、むしろイランの進出を抑え込む政策を続けているようである。