パレスチナ世論:カリード・シカキ博士/Palestinian Center for Policy and Survey Research (ラマラ)
イスラエルや国際社会の話しになっているが、パレスチナ人はどう考えているのだろうか。
パレスチナ人の世論調査で知られるシカキ博士が、トランプ大統領のエルサレム首都宣言以降、パレスチナ世論がどう変わったのか発表した。それによると、エルサレムがイスラエルの首都になることに否定的な考えを持つ人は91%にのぼる。
興味深いことは、国際社会ではパレスチナ人の指導者とみなされているアッバス議長の支持率が、これまでからも低かったのではあるが、トランプ発言でさらにさがり、今では、パレスチナ人の70%が、辞任を望んでいるという。
その原因をシカキ博士に聞いたところ、まずは、パレスチナ自治政府の中では、あたりまえになっている汚職。それから、これまで長年議長をしてきたにもかかわらず、なんのよい変化ももたらさなかったばかりか、いよいよエルサレムを失いそうになっているからである。
なぜ、辞任に追い込まれないのかというと、ハマスとファタハが分裂したままになっているので、総選挙ができないからだという。
パレスチナ人は、またサウジアラビア、エジプト、ヨルダン、カタールなど、スンニ派諸国への信頼も失っている。特にサウジアラビアは、イスラエルに接近しているとも言われているせいか、これらのアラブ諸国が、パレスチナ人の益になるような和平案を提示することはないと見るパレスチナ人は、75%と高い数値になっている。
これらのことから、パレスチナ世論は、暴力に訴えることが、国家設立につながると考える人が、35%から44%にまで増加した。これを反映してか、もし、今総選挙が行われた場合、ハマス指導者のハニエが楽勝するとの結果になっている。
ところで、東エルサレムでは、イスラエルの市民権を申請するパレスチナ人が急増している。ということは、エルサレムが、イスラエルの首都になることを、パレスチナ人も、実際には喜んでいるのではないかと質問した。
シカキ博士はこれを否定した。エルサレムがイスラエルの首都になった場合、イスラエルが自動的に東エルサレム在住のパレスチナ人を自動的に市民として迎えるとは考えられないからである。
シカキ博士によると、東エルサレムのパレスチナ人が、イスラエルの市民権を取ることは、非常に難しい。「イスラエルは、パレスチナ人にはいってきてもらいたくないのだ。これが真実だ。」と語った。
シカキ博士は、西岸地区のパレスチナ人も東エルサレム在住のパレスチナ人も、今、国を2つに分け合う2国家案が、本当に可能かどうかを見極めようとしていると説明する。
パレスチナ人の国が立ち上がり、東エルサレムが首都になれば、その支配下に入ることが望ましいと考える東エルサレムのパレスチナ住民は少なくとも70%はにのぼる。しかし、今はまだそれが叶いそうもないので、とりあえず、イスラエルの市民権をとってパスポートを得ようとしているだけだということである。
余談になるが、これはイスラエル在住のアラブ人とは違っている点である。イスラエル国籍アラブ人は、たとえ、パレスチナ国家が立ち上がったとしても、その支配下へ入ることは拒否している。その場合でもイスラエルに残留することを望んでいるということである。