アメリカ(トランプ大統領)とロシア(プーチン大統領)が、ドイツでのG20にて個別会談を行い、シリア南西部、ヨルダンとシリア国境周辺(ダルアとスウェイダ)と、クネイトラ(ゴラン高原シリア側)での停戦開始で合意したと発表。日曜正午から停戦が発動された。
合意によると、アメリカは、支援している反政府勢力へ圧力、ロシアはシリア軍、イラン、ヒズボラに停戦への圧力をかけたということである。発動から約48時間、限局的な紛争はあったが、今の所、空爆等の戦闘はなく、停戦は守られているとされる。
この停戦は、米ロにシリア難民の流入に困っているヨルダンも加わり、ここ数週間話し合いが行われていた結果だという。
表には出ていないが、この停戦にはゴラン高原のクネイトラも含まれているため、実際にはイスラエルも関係国である。停戦監視にはイスラエルが大きな役割を果たすことになると伝えられている。(地図参照)
www.jpost.com/Opinion/How-long-will-the-Southern-Syrian-ceasefire-last-499248
なお、シリア内部の部分的停戦への試みはこれが初めてではない。昨年に引き続き、今年5月にも、ロシア、イラン、トルコが別の地域での停戦を試みた。この時はアメリカは抜きであった。いずれの場合も失敗に終わっている。
edition.cnn.com/2017/05/04/middleeast/syria-ceasefire-talks-deescalation-zones/index.html
今回の米ロとヨルダンの停戦合意も、いつまで続くやらと、期待薄のようであるが、国連もとりあえず、今はまだ停戦は守られているとの認識を発表している。
<イスラエルへの影響は?>
イスラエルでは、先週、この地域からの流れ弾が相次ぎ、毎回、クネイトラ周辺のシリア軍関係施設への空爆という報復を繰り返さなければならなかった。これについては、この停戦は、イスラエルにとってもありがたいことである。
しかし、問題は、米ロとも、この停戦を監視し、責任をもつということにはなっていないという点が問題である。停戦の空白を利用し、イランが、イスラエルとの国境に展開し、居座ってしまう可能性もある。
イスラエルとしては、たとえ停戦であっても、この地域で、イランやヒズボラの武器搬入などの動きがある場合は、これまでと同様、先手攻撃は辞さないつもりである。
また一方で、反政府勢力が、同じスンニ派のよしみでもあり、経済力のあるISISの袖の下に協力してしまうという例もあり、停戦の空白に、ISISが入り込んでくる可能性もある。
この停戦については、雲の上の大国の政治的ねらいと地上の詳細には違いがあること、しかしそれでも大国ぬきでは平和の実現の可能性もないということを物語っていると言われている。
www.jpost.com/Middle-East/Analysis-Who-wins-and-loses-from-Syria-ceasefire-deal-499178