トランプ大統領の中東訪問を受けて、各国はそれぞれ以下のような要請を出していた。加えて、本国アメリカでも上記のような状況となり、トランプ大統領の中東和平への意気込みはどうも尻すぼみのようである。
トランプ大統領への各国からのメッセージとトランプ政権の中東和平への姿勢は以下の通りである。
<アラブ諸国からトランプ大統領へ>
1)サウジアラビアー入植地建設をやめれば国交正常化
トランプ大統領の中東訪問に先立ち、サウジアラビアと、URE(アラブ首長国連邦)は、イスラエルとアメリカに対し、「もしイスラエルが、西岸地区入植地建設中止、ガザ地区封鎖解除、パレスチナ人との和平交渉再開を受け入れるなら、イスラエルとの国交を正常化する。(上空通過や、電話線など開通など)」と伝えた。
これについて、イスラエルは、正式なコメントは出していないが、水面下で、アラブ首長国連邦に係官が派遣されたという報道もある。
トランプ大統領は、サウジアラビアにて、サウジやUREなど、スンニ派の湾岸アラブ諸国の指導者たちと会議を行うことになっている。なお、これらの湾岸諸国は親米、対イラン(シーア派)である。つまり、イスラエルとも共通の敵を持つということ。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4963033,00.html
2)エジプトとヨルダン、パレスチナ自治政府ー東エルサレムはパレスチナの首都
トランプ大統領の中東訪問に先立ち、エジプトとヨルダンの代表、パレスチナ自治政府のサエブ・エレカット氏がアンマンで会合を持ち、「東エルサレムは、パレスチナの首都である。」との共同宣言を行った。
つまり、統一された東西エルサレムは、イスラエルの首都であるから、アメリカの大使館は、エルサレムにあるべきというイスラエルの主張、またトランプ大統領の公約に反対すると宣言しているということである。
これについて、Ynetによると、イスラエル首相府は、「米大使館のエルサレムへの移動は平和への妨害にはならない。むしろ、そうすることで、平和を推進する。
なぜなら、(エルサレムはイスラエルの首都であった)という正しい歴史の認識に立ち戻ることで、エルサレムがイスラエルの首都でないと信じるパレスチナ人の夢物語に終止符を打つことになるからだ。」とのコメントを発表した。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4962314,00.html
<現時点でのアメリカの姿勢>
1)アメリカ大使館・エルサレムへの移動宣言はなし
今回、最も憶測が飛び交っていたのが、アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムへ移動させることを宣言するのではないかという点だった。
訪問が近づくにつれて、ホワイトハウスは、大使館の移動についてはまだ結論が出ていない。。。と言っていたが、最終的には、「大使館を移動させると混乱を及ぼす。今は時ではない。」との結論に達したと伝えられた。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/229836
*親イスラエル入植地派の駐イスラエル米大使:5月になりやっと
トランプ大統領は、就任早々から、アメリカ大使館をエルサレムへ移動することを公約に掲げ、その第一歩として、親イスラエル、特にユダヤ人入植地を支援することで知られるデービッド・フリードマン氏を指名した。
ところが、フリードマン氏が明らかに入植地支持者であることから、米議会から反対意見が相つぎ、実際に就任し、仕事に着手したのがほんの先週になったということである。
フリードマン氏は、大統領がイスラエルを訪問する前に、大使館移動にメドをつけることを期待されていたが、もはやその時を逸したといえる。
フリードマン氏自身はトランプ大統領に、イスラエルとパレスチナの間に平和を実現する可能性は低いと伝えたと伝えられている。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/229550
フリードマン米大使は、エルサレムに在住し、テルアビブの米大使館へ通勤する予定。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/229142
2)トランプ大統領とネタニヤフ首相、アッバス議長が同席しての会談はなし
今回、トランプ大統領は、ネタニヤフ首相とアッバス議長を引き合わせる可能性もささやかれたが、最終的には、それぞれとは別々に会談することになった。
パレスチナ自治政府訪問は、当初ラマラになるとも報じられたが、最終段階で、ベツレヘムに変更になった。
トランプ大統領は、ネタニヤフ首相、アッバス議長に個別に会い、3者会談(米、イスラエル、パレスチナ)の再会を提案するとみられている。
*ホワイトハウスの意向はどこに??:入植地問題
失言なのかどうか。。。ホワイトハウスからは混乱したメッセージが発せられ続けている。
その最初が、エルサレムで嘆きの壁を訪問するにあたり、トランプ大統領は、ネタニヤフ首相同伴ではなく、単独で訪問するというものである。理由は、嘆きの壁が、「東エルサレム」であり、正式なイスラエルの領地ではないからという。
これについて、トランプ大統領は、ホワイトハウスの発表とは別に、「ネタニヤフ首相とともに行くかどうかは、まだ決めたわけではない。」と言っている。
www.timesofisrael.com/trump-hasnt-ruled-out-netanyahu-joining-him-at-western-wall-report/
さらにホワイトハウスが発表した、今回の8日間のトランプ大統領の外遊についての紹介ビデオの中で、訪問先イスラエルを紹介する場面で、「パレスチナを訪問」といい、西岸地区とゴラン高原が削除された形での地図で紹介がなされていた。
つまり、ホワイトハウスは、エルサレムを統一したイスラエルの首都と認めておらず、西岸地区とゴラン高原は、イスラエルの領地ではないと言っているのであり、これはイスラエルの主張を受け入れていないことを意味する。
問題のビデオは、メディアがこの件を報じた数時間後には、ネットから削除された。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/229886
親イスラエルと目されるトランプ大統領だが、ホワイトハウスには、そうでない勢力も相当多く、大統領一人の一存で決められることではない。トランプ大統領が言うように、アメリカは今2分しているということであろう。