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12月、アッバス議長が、国連安保理に要請した、イスラエルの西岸地区からの1年以内撤退を含むパレスチナ国家を推進する和平案について。
当初、この件に関する安保理での採択は、イスラエルの総選挙の結果が出る3月まで棚上げと報じられていたが、アッバス議長が正式に要請を出したため、安保理は30日、採択を行った。
結果、賛成8カ国、反対2カ国、棄権5カ国と、可決に最低必要な賛成9カ国に1カ国足りず、アメリカが拒否権を発動するまでもなく、否決となった。
<賛成>:ロシア、中国、フランス、ルクセンブルク、ヨルダン、アルゼンチン、チリ、チャド
<反対>:アメリカ、オーストラリア
<棄権>:イギリス、ルワンダ、ナイジェリア、リトアニア、韓国
反対票を投じたアメリカはじめ、イギリスも、「アッバス議長の案は一方的で、イスラエルの治安に関する項目が欠如している。この案は建設的ではない。」と語っている。
<功を奏した?イスラエルのアフリカ支援>
今回、アッバス議長の提出した和平案が、広くアラブ同盟に支持されたいたにもかかわらず否決となった背景には、アメリカ外交筋の、相当な水面下での根回しがあったと伝えられている。
また、今回、否決への鍵を握っていたのはナイジェリアの票だった。ナイジェリアは伝統的に反イスラエルの立場をとって来た国だった。それが予想外の方針転換を行い、棄権にまわったことで、今回の否決が決まったのである。
ナイジェリアなどアフリカ諸国では、近年、イスラム過激派によるテロが頻発し、死者も多数出ている。そうした中、イスラエルが、武器を調達するなどして治安維持支援を行って来た。
また、イスラエルのリーバーマン外相は昨年あたりから、アフリカ諸国を訪問。治安維持支援の他、様々な支援やビジネス強化を通じてアフリカ諸国を味方につける方針で働きかけていたのである。
特にナイジェリアは、毎年政府支援で毎年30000人ほどのキリスト教徒をイスラエル旅行に派遣していることもあり、両者の関係は良好になりつつあった。これが、ナイジェリアが方針を180度転換し、イスラエルの側に立つ票を投じた背景である。
<今日から安保理のメンバー一部交代>
安保理は、本日1日から、非常任理事国の1部が入れ替わる。イスラエルに友好的なオーストラリアとルワンダが出て、変わりにマレーシアとベネズエラが入る。両国とも、反イスラエルの国々である。
つまり、アッバス議長は、もし、あと数日待って、新メンバーになってから採択を要請していれば、おそらく賛成票9票を難なくクリアし、アメリカは拒否権を発動せざるを得なかったと考えられる。
なぜアッバス議長があえて、旧メンバーの時に採択を要請したのかについては、アメリカに拒否権を発動させて怒りを買い、今後のアメリカとの関係が悪くなるという事態を避けたかったのではないかと考えられている。
<アッバス議長:国際刑事裁判所加盟へ申請>
安保理で国家承認案を拒否されたアッバス議長は、ラマラの閣議で、「これが終わりではない。」と語り、この直後に、国際刑事裁判所への加盟を申請した。
*国際刑事裁判所(International Criminal court)
国際刑事裁判所は、国際法廷とは別の機関。後者が国家間の紛争を扱うのに対し、前者は、集団殺害犯罪などの戦犯を取り扱う。署名国139。
これについて、ネタニヤフ首相もリーバーマン外相も、「もしパレスチナ自治政府が訴えた場合、困るのはパレスチナ自身だ。」として一笑に付すコメントを発している。
ハマスは、アッバス議長の国連への要請自体を「無駄」と非難していたが、「安保理での否決は、妥協の失敗に失敗を加えたようなものだ。」と厳しく批判した。