地中海に消えたガザの難民たち 2014.9.21

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4572948,00.html

前回のオリーブ山便りで、地中海で難民を乗せた船が沈没し、少なくとも500人が死亡または行方不明になっているとお伝えした。このうちの多数が、ガザからの難民だったことがわかった。(正確な数字は不明)

ガザでは悲惨なほどの破壊で、将来への希望が失われている。そのため、持ち物を全部はたいてガザを脱出しようとする人が数千人にのぼっているという。

ガザとエジプトの間の地下トンネルの中には、まだ通過可能なものもあるらしく、シナイ半島からエジプトへ脱出する道があるらしい。しかし、その際には、ハマスに3500ドル(40万円)、さらにトンネルを通るのに2000ドル(25万円)を支払うことになる。

その後はアレキサンドリアなどから、難民船に乗ってイタリアなどヨーロッパをめざすのである。難民船に乗るには、さらに数千ドルを支払う。

今回生き残ったガザ難民の証言によると、破壊された家の補償金を脱出につぎ込んだ人もいる。しかし、こうした難民脱出斡旋業者は当然ながら違法な業者である。証言によると、今回難破した難民船は、業者がわざと事故をおこし、沈没する様を笑いながらみていたという。

悲しい事に、地中海に沈んだ500人のうち、少なくとも100人は子供だったという。あるガザのパレスチナ人夫妻は、船が沈むのを見て、かろうじてライフジャケットを着ていた19才のシリア人女性に幼児のわが子をたくして、他の子供を救いに戻った。この女性と幼児は助かったが、この子の両親は海に沈んでしまった。

救出され、カイロで保護された難民は、ガザの家族に連絡され、連れ戻されることになる。また多くの家族が愛する家族の訃報をガザで受け取った。

今回のガザでの戦争は、ハマスがしかけた戦争だったかもしれない。しかし、イスラエルがもたらした破壊がこのような悲惨な結果をもたらしていることがあるということも知らなければならない。これこそスリホットにおけるとりなし事項ではないだろうか。

なお、地中海を渡ろうとする難民の数は、ニュヨークタイムスによると、昨年は6万人だったのが、13万人と倍になっている。このうち、約2800人が船の難破で死亡し、118000人がイタリアへ入っている。

www.nytimes.com/2014/09/19/opinion/refugees-fleeing-to-europe-face-death-from-smugglers.html?_r=0

<ガザでちょっといいニュース?> http://www.jpost.com/Experts/Some-good-news-from-the-Gaza-front-375391

悲惨なガザ地区だが、ちょっといいニュースとして伝えられたところによると、ガザ地区の家主たちが、ハマスメンバーとその家族に、部屋を貸し渋っているという。

いつかはイスラエルの攻撃の的になるからである。もちろん公のデータではないが、ガザの住民が、何が原因で悲劇が終わらないのか、本質を見抜き始めているということかもしれない。 

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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