パレスチナとの関係悪化の一途:イスラエル兵またテロの犠牲に 2013.11.14

イスラエルとパレスチナの和平交渉から3ヶ月。先週、ケリー国務長官が来て進捗を確認したが、実際は、進展するどころか、西岸地区でのテロが急増し、関係は悪化傾向にある。

この3ヶ月の間に、パレスチナ人のテロで死亡したイスラエル人は4人。うち3人はイスラエル兵だった。一方、イスラエル軍の掃討作戦や、テロ現場での銃撃戦で死亡したパレスチナ人は10人である。

<18才のイスラエル兵ナイフで刺されて死亡>

今日13日朝、ナザレ・イリット(ナザレユダヤ人地区)から、一般のバスで、任地へ向かっていたイスラエル兵エデン・アティアスさん(18)が、座席で眠っていたところ、首を刺されて死亡した。

事件は、イスラエル北部、アフラの中央バスステーションに停車中のバスの中で発生。乗客が犯人を取り押さえ、治安部隊に引き渡した。

犯人は、西岸地区ジェニンに住む16才のパレスチナ人。犯人のいとこは、イスラエル人2人の殺害と多数の殺人未遂により終身刑3回で服役中。別のいとこも殺人未遂で12年の刑にて服役中ある。警察は、後に、犯人の父親、兄、友人らも逮捕している。

死亡したイスラエル兵アティヤスさんは、従軍してまだ数週間。父親は、刑務所にいるため、母1人子1人だった。昨夜行われた葬儀には、父親が刑務所の服のまま、警備員に付き添われての参列となった。

事件発生後まもなく、アフラのバスステーションでは、150人ほどが集まって、パレスチナ人の囚人釈放に反対するデモを行った。国会でも「もうパレスチナ人を釈放するべきではない。」との声が上がっている。

<パレスチナの交渉チーム辞任か?>

イスラエルでは、昨日住宅担当大臣が、グリーンライン(1967年ライン)よりパレスチナ側に、24000軒の家屋を建設すると申請した。ネタニヤフ首相は「今はイラン問題に取り組んでいるので時期が悪い。」として却下した。

「今、国際社会からの批判を受けては、イラン問題において、イスラエルの主張を聞いてもらえない。」ということである。ただし、首相は建築をいっさい却下したわけではなく、時間をかけてかしこく建設するとの意向を述べている。

一方、パレスチナ側では、エレカット氏を中心とする交渉チームが、イスラエルの建設活動に抗議して、辞表を提出したことがわかった。アッバス議長がそれを受理したかどうかはまだ不明。

これについて、イスラエルは、「いつものパレスチナのうやりかただ。」として、特に大きな反応はしていない。いつものやり方とは、決断を避け、危機的状況をつくって世界の注目を得るというもの。

いつものパターンともいえるが、和平交渉が始まると、両者の溝はさらに深まっていくようである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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