ケリー国務長官が、またまたやってきた。6日、イスラエル入りしたケリー氏は、テルアビブの故ラビン首相記念を訪問して献花。7日は朝からネタニヤフ首相と会談。
7日からジュネーブで始まるイランとの交渉を前に、イランの核問題、シリア問題、危機的状況にあるパレスチナとの和平交渉について話し合った。
午後はパレスチナ自治政府のベツレヘムでアッバス議長と会談し、エルサレムへ戻ってペレス大統領と会談。ネタニヤフ首相と夕食をはさんで再度の会談となった。場合によっては8日にもう一度アッバス議長に会う可能性もある。
<世界で最も長期で難しい問題>
3ヶ月前に、ケリー国務長官のシャトル外交で、ようやく再開されたイスラエルとパレスチナの和平交渉だが、3ヶ月たった今、「やっぱりこれは無理・・」というムードが双方に広がっている。
その原因として、イスラエルのネタニヤフ首相は、パレスチナ側がイスラエルへの挑発的な発言や行為やめようとせず、すぐに交渉から降りるといって逃げてしまうことをあげた。
一方、パレスチナ側は、イスラエルが囚人釈放の見返りとして、まだ最終地位が固まっていない西岸地区(入植地)と東エルサレムに3000件以上もの建築許可をだしたことが、問題の根元だと主張している。
双方の主張に対し、ケリー国務長官は、ネタニヤフ首相には、セキュリティの必要性に対する理解を示し、パレスチナ側には「イスラエルの入植地は違法であり、和平推進の助けにはならない。イスラエルはこれを最小限にするべきだ。」との見解をのべて、いわば両者に理解を示す形となった。
ある大手通信社の記者が「結局8割ぐらいはイスラエルのいうとおりにしないと交渉は成立しないのに、パレスチナは自分たちの意見の9割を通そうとする。」と言っていた。
現実問題として、パレスチナとイスラエルでは、比べられないほどにイスラエルのほうが国力があるというのが事実。従って、ある程度はパレスチナが譲らない限り、話は平行線をたどるということである。
あきらめムードが広がる中、ケリー国務長官は、8日、ベツレヘムでアッバス議長と会談後、「交渉は悲観的だと言われるが、オバマ大統領も私も、和平は必ず達成と信じている。」と語った。
アメリカは、パレスチナ市民の生活改善が、和平達成を推進することになると考えている。今回、ケリー国務長官は、パレスチナ自治政府に対し、すでに約束している2500万ドルに7500万ドルを加えて、1億ドルの支援をすると約束している。
<一般市民はほとんど無関心?>
ベツレヘムで、とてもかれんでかわいらしい、イスラム教徒の若いパレスチナ人女性で、ベツレヘム大学の学生さん2人にケリー国務長官について聞いてみた。
すると、「俳優のですか・・?」との返答。ケリー国務長官が来ていることはおろか、ケリー国務長官がだれかすら知らなかった。
エルサレムに戻って、「ケリー国務長官が来ていますね。」と4人ぐらいに聞いたが、全員「へっ?知らなかった。」「ケリー国務長官は毎週くるんだよ。」との返答。
エルサレムでは、今日外務大臣に復帰することになったリーバーマン氏の話題で、ケリー氏の来訪はほとんど影に隠れてしまった状態だった。
<石のひとりごと:目力について一言>
今回、ベツレヘムでの取材で、はじめてケリー国務長官とアッバス議長を直接拝見することができた。
ケリー国務長官の動きは、実に精力的だが、その目は、ニュースで見る通り、灰色に濁っていて、失礼だが見た目はまさに「腐った魚の目」。しかし、逆にこの濁った目が、サタン的なほどの冷静さと奥深い冷たさにも見えた。(写真)
一方アッバス議長は、ころっとしていて、ちゃかちゃか動く。アッバス議長にインタビューしたことのある日本の大手新聞社の記者によると、「アッバス議長の目は、かなりするどい。民主主義にみせかけているが、実質独裁者。」なのだそうである。
しかし、目力といえば、一番はネタニヤフ首相だろう。その目には「国を守る」決意と覚悟でまさに、腹のすわりきったすごみがある。世界の歴史を動かす人々はそれぞれ孤独に戦っているということを改めて思わされた。