シリアの化学兵器処理について、予定を延長してジュネーブでの会議を続けてきたアメリカのケリー国務長官とロシアのラブロフ外相。14日午後、今後のアウトラインを共同で発表した。
両者は、まずこの問題は武力では解決しないという認識で一致。また、化学兵器処理問題を入り口として、内戦の解決へも視点をひろげていくことで合意したと発表した。
●化学兵器処理に関する今後の手順は以下の通り。(実際は6項目をまとめたもの)
1.シリアのアサド政権は化学兵器の種類、量、場所などのリストを提出する。期限は1週間以内。(来週中旬めど)
2.そのリストに基づいて国連の査察団が入る。期限は11月まで。
3.2014年中旬までに、すべての化学兵器を破棄する。(シリア国外に出して破棄する事も含む)
もし、シリアが、今後1週間以内にリストを提出しないなど、ロシアとアメリカの上記要請に従わない場合、第7国連憲章により、国連安保理で武力を含めた対処を講じることになる。・・・が、これについては、ロシアは、あくまでも軍事攻撃には反対する姿勢をくずしてはいない。
<シリアの反政府勢力は受け入れず>
シリア難民や反政府勢力はひたすらアサド政権の崩壊を願っている。今回アメリカの攻撃が先送りになったことは、シリア人にとっては落胆のできごとだった。
シリアの反政府勢力・自由シリア軍の代表は、ロシアとアメリカの上記合意事項について、アサド政権の時間かせぎにすぎないとして、これを受け入れず、今後も戦闘を続けていくと発表した。つまり協力しないということ。
ダマスカスにいるBBC特派員は、アメリカの攻撃が先送りになった時から、シリア国内での戦闘が激しくなっていると伝えている。
こうした条件下で、50個所近くに分散されている化学兵器を、無事確保することが、実現可能なのか。アサド政権が、化学兵器のリストを提出する期限が1週間以内というのもかなり厳しい制限である。
これについてケリー国務長官は、「アサド政権は、化学兵器を反政府勢力が届かない場所に確保しているはず。いくら内戦中でもそれらを確保することは、いわれているほど難しいことではない。」との見解を語った。
<国連の化学兵器査察隊の結果>
ところで・・・という感じだが、8月末にシリアの化学兵器が使われたとみられる地域でサンプルと持ち帰った査察隊が、調査結果を整えたとの情報がある。「シリアは間違いなく化学兵器を使った。」という事で、すでにわかりきったことだった。
なお、査察隊結果では、犯行がアサド政権かどうかは明らかではないが、バン・キ・ムーン国連総長は、その可能性を示唆する発言をしている。
<シリアのためのジュネーブ国際会議にむけて>
ロシアとアメリカは、問題を化学兵器だけに終わらせず、内戦解決にむけての国際会議を開く方向で一致している。しかし、実際には先行きはかなり厳しい。
会議にはアサド大統領、反政府勢力、アルカイダなどの聖戦主義者、またアサド政権を支援しているイラン、反政府勢力を支援しているサウジアラビアの参加も必要になる。
現時点ではありえない状況だが、何が起こっても不思議がないのも中東だ。今後、米ロのリーダーたち、特にシリアに特別な影響力を持つロシアの動きが注目される。
*ケリー国務長官は、続いて15日、エルサレムのネタニヤフ首相訪問予定。