昨年、国連にパレスチナ国家の加盟を申請したが、安全保障理事会で棚上げのままになっているパレスチナ自治政府。今年は国連において、”団体PLO”から”国家パレスチナ”としてのオブザーバーへの格上げを申請する方向で動いている。
予定通り申請した場合、国連総会での採択は11月29日(木)。
オブザーバーの格上げの場合は、安保理を通過する必要はない。したがって、29日の国連総会で、日本を含む加盟国193カ国が採択するだけで結果が決まる。すでに150カ国以上は賛成する意思表示をしており、通過はほぼ確実とみられる。
29日といえば、1947年11月29日に国連でパレスチナ分割案の採択が行われ、イスラエルが独立する足がかりとなった日。アッバス議長はその日程をあえて選んだのである。
<ハマスも同調か?>
アッバス議長の組織ファタハと、ガザのハマスはライバルで、両者がこれまで一致することはなかった。しかし、先週の停戦以来、ハマスの動きに変化がみられる。イスラエルの存在を認めない方針にも関わらず、1967年の国境に基づき、東エルサレムを首都とするパレスチナ国家に賛同する動きを見せている。つまり二国家の存在を認めるということ。
アッバス議長も採択の後、ハマスとの和解をさらにすすめる意向を明らかにしている。
<国連総会での採択で通過した場合どうなるのか>
国連総会の採択によって国家としてのオブザーバーの認識を得ると、次に加盟国になる可能性が大きくなる。また国家としての立場で、様々な国際機関にアクセスできる。特に国際法廷にイスラエルを訴えることが可能になる。
*アラファト議長はイスラエルの毒殺か?
26日、ラマラでは、2004年に死亡したアラファト議長毒殺疑惑を解明するため、墓地から議長の遺体を掘り出し、遺体からサンプルを採取。スウェーデンなどで毒物ポロニウムの形跡を検査する。結果は来年3-4月頃になると予測されている。多くのパレスチナ人はイスラエルが毒殺したと信じている。イスラエルは堅く否定。
<イスラエルの脅迫と方向転換>
イスラエルはつい最近まで、パレスチナ自治政府の国連での動きに反発。もしこの申請を実行した場合、西岸地区でのユダヤ人住宅建設促進、税金の凍結の他、オスロ合意(パレスチナ自治政府の基盤となるパレスチナとイスラエルの合意)を破棄、結果的にアッバス議長をその立場から追放するといった脅迫をしていた。
しかし、国際法廷では、国家の資格を得る以前の過去にさかのぼった事例は取り上げないことになっている。仮に国家オブザーバーになっても実質的にできることは少ない。したがって、イスラエルは現時点では、大騒ぎして脅迫的な対処をすることを差し控える方針に方向転換した。
ただし、採択後のアッバス議長の出方によっては、時をみて対処すると言っている。
<アメリカも困る?>
アメリカは、この申請によって、イスラエルとパレスチナの和平交渉のチャンスがさらに失われるとして、パレスチナには申請しないよう、最終段階に入った今もまだ説得を続けている。
アメリカの法律上、もしパレスチナが国家としての国連オブザーバーになった場合、現在行っている支援から撤退する可能性がある。(例:昨年パレスチナがユネスコの加盟国になったとき、アメリカは法律上、ユネスコへの支援を停止している。)