イラン、シリア、エジプト(シナイ半島)など日々緊張が高まっている中東情勢。20年前の湾岸戦争の時と違ってイスラエルは戦いに突入する準備ができていない。以下に今の現状と、イスラエルの準備状況についてまとめた。
1.イラン
核兵器疑惑の続くイランだが、いよいよ核弾頭(爆弾)完成に近づいていると言われる。イスラエルのネタニヤフ首相とバラク国防相は、これまでよりも強い言葉で、イスラエルがイランを攻撃する可能性について世界に発信している。
しかし今回、世界はこのイスラエルの警告にほとんど耳を貸していない。本当にイスラエルが攻撃を実行するとは考えていないのか・・・。しかし、攻撃しないとも言い切れず、微妙な状況が続いている。
なお、実際にイスラエルがイランへの攻撃を実行した場合、イスラエル国土は、イランからのミサイルの雨となり、イスラエルとアメリカが反撃するなど、地域をまきこむ戦争に陥ると思われる。
<どうしたらイランの核開発を止められるか>
これまでのところ、アメリカ、EUともかなり厳しい経済制裁を行っているが、イランの方針を変えるには至っていない。昨日、イランのタンカー36隻が船旗を無断でタンザニアと偽って原油の輸出をしていたことがわかった。経済制裁には抜け道もあるということである。
軍事攻撃について、専門家は、「たとえ今イランの核工場を爆破したとしても、その後に開発を再開するだけで意味がない。サイバー攻撃や科学者の暗殺で、開発を若干送らせることも可能だが、それも抜本的な解決にはならない。」と言っている。
イランの核開発を止める唯一の方法、それは、イランの最高権威者であるハメネイ師が自ら、止めることである。世界は、その道を模索しなければならない。
<対立の図式>
イラン、シリア、レバノン(ヒズボラ)ロシア 北朝鮮/ 対 /イスラエル、アメリカ、EU諸国、湾岸アラブ諸国
*そのイランだが11日、北西部でマグニチュード6.3の地震が発生。捜索活動が続いているが、これまでに227人の死亡が確認されている。1万6000人が避難所生活を強いられている。(2003年のイラン南部ボムの地震では3万人が死亡・イランは地震が多い)
2.シリア
シリアの内戦が混迷を増している。先週政府軍がアレッポの要所を奪回し、激戦となっている。ダマスカスでも大きな爆発があった。金曜には、ヨルダン領内でも衝突があったもよう。死者の合計はこれまでに21000人。
難民はさらに増え、現時点で15万人が周辺のトルコ、ヨルダン、レバノン、イラクの国境に設置されたキャンプで避難生活を送っている。最も難民を多く受け入れているのがトルコで、その数50000人にのぼる。アメリカは、これまでに難民支援金として8200万ドルを供出している。
シリアには、現在、アサド政権を支援するイラン革命軍兵士数千人、対する反政府勢力の中にはアルカイダの存在が目立ち始めている。時間がたつにつれて、シリアの外からのテロリストがより複雑で危険な状況を作り始めている。
アサド大統領がいよいよ追いつめられた場合、化学兵器を使う可能性が高いとして、イスラエルはじめ、ヨルダン国王もその懸念を表明している。
*シリアは1982年、現アサド大統領の父ハーフェズ・アサド大統領の時に、ハマ虐殺で、シリア市民(スンニ派)20000人を殺害している。この時、化学兵器を使ったいう報告もある。
また、シリアへの圧力を軽減するため、イランがヒズボラに命じてイスラエルを攻撃させる可能性もある。
<対立の図式>
イランと西側の対立と同様の対立の図式だが、シリア問題についてはトルコが大きく関わっている。現在、アメリカとトルコが協力して反政府勢力を支援しながら、アサド政権が倒れた後の対処について協議している。