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2月28日にイスラエルが、ヒズボラとイランの首都テヘランへの先制攻撃「吠えたけるライオン作戦」を開始し、アメリカも同時にイランへの攻撃「壮絶な怒り作戦」を開始して始まったイランとの戦争。3月20日(金)で、20日となった。
イスラエルとアメリカが、イラン政権をしていた指導者らを次々に暗殺。IRGCの民兵トップも死亡し、武力にもかなり致命的な打撃を与えている。
しかし、イランからは、まだミサイルやドローンが続いており、戦争はまだ終わる気配はないどころか、悪化を続けている。Ynetがまとめた数値的な現状は以下の通りである。(3月18日地点)
イラン戦争20日経過:まとめ
1)イスラエルとアメリカによるイランへの攻撃
これまでの攻撃回数は1万5600回。焦点を当てた暗殺で死亡したイラン幹部は45人。このうち、17人は、ハメネイ氏、ラリジャニ氏など、文字通り、イラン政権やIRGCを管理する最高指導者たちである。その他での死者は、1348人。(戦闘員、市民含む)
2)イスラエルによるヒズボラへの攻撃
イスラエルは、ヒズボラ撃滅を目指すとともに、イスラエルとの間に緩衝地帯を作るため、レバノン南部へ地上軍を進軍させている。攻撃は相当本格的である。避難民は、100万人以上とも報告されている。
3)イランからイスラエルへの攻撃
イランから発射された弾道ミサイル(クラスター爆弾含む)は480発。全国で鳴ったサイレンは6万3135回サイレンが鳴った。レバノンのヒズボラが発射したロケット弾は907回。
ミサイルや迎撃破片などによる死者は21人。負傷者は3727人。自宅から避難を余儀なくされている人は、3500人。
4)イランから米軍・中東諸国への攻撃
イランは、イスラエルへの攻撃のほか、中東の米軍基地13か所を攻撃。米兵13人が死亡。最新のニュースでは、
UAE、カタール、オマーン、バーレーン、クウェート、サウジアラビア、ヨルダン、イラク、トルコ、キプロス、アゼルバイジャンで、イランによる攻撃があった。石油関連施設、ING、天然ガス施設も標的に、発射したミサイルは1075発、ドローンは2067発。攻撃は今も続いている。
ホルムズ海峡が封鎖され、複薄のタンカーが攻撃を受けている。足止めになっている船は、タンカーだけで150隻以上(日本関係44隻)、他の船も含め船員4万人が足止めになっている。
世界への原油の供給は、たとえ、今すぐに戦争が終わって、搬送が再開されても、元に戻るまでに、少なくとも6ヶ月以上かかるという。人類前代未聞の地球レベルの危機に向かっている。
アメリカは、ロシアへの経済制裁を一時停止して、その原油販売を認めたほか、イランの原油で、すでにタンカーで海上に運び出されているものについては、販売を認めるとしている。このほか、IEA(国際エネルギー機関)が、備蓄原油の放出も計画しているが、効果は非常に限定的と言われている。
トランプ大統領は停戦を否定:新たに2000人規模の兵力を中東へ派遣
世界は、戦争の長期化を恐れている。しかし、トランプ大統領は、3月20日(金)、イランは今や指導者が不在で交渉相手がいないと語った。また、現政権を撃滅しようとしている中で、停戦はありえないと語った。
一方で、イランへの打撃はかなり大きいとして、攻撃は段階的に縮小するとしながら、同時に中東に新たに戦艦と、少なくとも2000人の兵力を派遣するなど、何を考えているのかわかりにくい様相である。
この戦争の本質:アメリカを中心とする世界秩序が中国中心に移動することを阻止する戦いとの説も
The Iran war is not about Israel, it’s about China – opinion By BRIAN BLUM MARCH 20, 2026 23:53
www.jpost.com/opinion/article-890440
エルサレムポストに興味深い記事があった。それによると、今のイランの戦争には、2つの層があるという。1つは、危険なテロ政権、イランとその傀儡を打倒することで、イスラエルの存在を守るとともに、中東、世界からテロ組織を排斥するという層である。
しかし、この記事は、この戦争には、もう一つの層があると指摘する。それは、アメリカを中心としたグルーバル秩序が、中国へ移行していくことを防ぐという層である。
イランは、世界から経済制裁を受ける中、今やイランの石油の90%は中国が購入している。石油収入はイラン総予算の25%に上っている。言い換えれば、イラン経済の25%が、中国に支配されているということである。
一方、中国は、イランに対し、通信システムの技術を提供しているほか、マッハ3(音速の3倍)以上の対艦巡航ミサイルを供給する過程にあるとのこと。このように、イランは、防衛でも経済でも中国にかなり依存しているといえる。
こうした中で、今に至るまで、中国がイランを助けに来ていないのは、疑問とも言えるが、中国は、今後アメリカと世界がどう出るのか、様子見をしている可能性もある。
世界は、戦争の長期化に伴い、エネルギー供給が危機的状況に向かっている。となると、イランとの戦争とエスカレートさせている原因は何なのか。それを止めなければならないと考えるのは当然である。
世界、またアメリカ国内からも、そもそも、トランプ大統領はイスラエルを助けるためだけに、この戦争を始めたのではないかと見て、今すぐ戦争をやめるべきだとの声が出ている。
また、トランプ大統領が、膨大な戦力を日本はじめアジアから中東へ移動させていることで、たとえば、中国は台湾への侵攻をしやすくなるとの懸念も出ている。
アメリカ国内外からは、トランプ大統領と、特にイスラエルへの批判も高まっており、反イスラエル反ユダヤ暴力が加熱している。
トランプ大統領は、今はまだ徹底抗戦の姿勢を崩していないが、将来、こちらの声に負けて、イラン政権を十分、打倒できないまま、戦争をやめる方向に転換を余儀なくさせられるかもしれない。
イスラエルは、この構図にも備えてか、今のうちにできるだけ、イランとヒズボラの武器を弱体化させようとしている様相にある。
もし、トランプ大統領が、国内外からの圧力に押されて、実際に、イランを打倒しきれないまま戦争を終わらせた場合、トランプ大統領は弱体化する一方で、イラン政権は生き延びることになる。
そうなれば、イランは、自衛のためにもいよいよ核兵器を持つようになるとも言われている。その時は、イランとその背後にいる中国を止められなくなるとも考えられるわけである。
今トランプ大統領は、イランの石油出を担う主要な港、カーグ島を、攻撃しただけでなく、地上軍を送って支配させる可能性が浮上している。これが実現すれば、イランへの打撃は非常に大きいが、中国へも一定の影響を及ぼすことになる。
中国は石油の7割を輸入しているが、そのうちの44%は中東からで、さらに、その10%はイランからである。トランプ大統領が、カーグ島攻撃の背後に、中国を意識している可能性もゼロではないかもしれない。第二層の戦いも理解できる様相である。
ところで、中国といえばロシアである。イランに関しては、ロシアも今は、中国と似たような行動をとっている。ロシアは、アメリカが中東で忙しい間、ウクライナへの攻撃を強化している。アメリカが弱体化すれば、ロシアは中国と共に、新たな世界秩序に出てくることになる。
不気味なことに、NHKによると、3月20日のラマダン最後の日に、ロシアは、イラン文化を紹介するイベントを行い、イランとの友好関係をアピールしていた。
news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015080781000
中東イラン情勢はこれからどうなっていくのか。今、アメリカを中心とする世界秩序から中国、ロシアを中心とする世界秩序にいよいよ変わっていく過渡期に立っているのだろうか。私たちは、今、大変な時代の変わり目に立っているのかもしれない。
