史上初・イスラエル政府と福音派が共同開催:1000人以上の福音派牧師がイスラエル訪問 2025.12.6

Members of Christian delegation visit Nova site and Mount Herzl (credit: YOSSI ZAMIR)

福音派牧師1000人以上の親イスラエルツアー:イスラエル政府協力

12月2日(火)から4日(木)、史上最大数となる、1000人以上の主にアメリカからの福音派キリスト教会の牧師たちとインフルエンサーなどが、イスラエルを訪問。聖書を土台とする、ゆるがないイスラエルへの愛と支持を表明した。

教職者ということは、彼らを送り出した教会員たちが、その背後にいるということなので、1000人どころか、その何十倍、何百倍もの福音派クリスチャンたちの思いが、今回、イスラエルに届けられたということである。

*福音派:プロテスタントのクリスチャンで、特に聖書をそのまま受け取っており、今のイスラエルは、神である主の御心により存在していると信じている。

今回、特に記念すべき点は、これまでで最大規模というだけでなく、イスラエル政府が、福音派団体と、このイベントを共同開催した点である。これは史上初のことだった。

かつてユダヤ人たちは、キリスト教会と聞くだけで、迫害する者であり敵対者という認識が普通だった。

また、近年では、有識者の間で、福音派は、ユダヤ人が救われる時に自分たちのメシア(イエス・キリスト)が再臨すると信じているので、結局、自分たちのために支援しているのだと、怒りを燃やす人も少なくない。

しかし、特に10月8日以来、世界のイスラエル批判が深刻化する中、反ユダヤ主義が露骨になり、暴力にまで発展していることを受けて、イスラエル政府や外務省は、福音派への接近と、大きく方向転換している。

福音派のイスラエル支援が、信仰(聖書)に基づくもので、揺らぐことがないとわかったからである。

イスラエルは、世界62ヵ国に、親イスラエル議員連盟コーカス(Israel Allies Caucus(IAF)を展開。これに参加する政治家はほとんどが福音派である。日本でも今年9月に、牧師でもある、金子道仁参議院議員が日本のコーカスを立ち上げたところである。

10月7日被害への理解と遺憾表明

牧師たち1000人一行は、3日間の訪問中に、ハマスの襲撃があったノバ音楽フェスティバルの現場を訪問した。

また、イスラエル建国を記念するヘルツェルの丘を訪問し、戦死者と、テロ犠牲者、特に10月7日の犠牲者の墓石に献花した。

嘆きの壁では、それぞれが、10月7日の犠牲者の名前を書いたメモを石壁に入れて、祈りを捧げた。

同行した、嘆きの壁担当のラビ・ラビのビッツは、詩篇121を読み、イスラエルには神の保護があると語り、アメリカの福音派牧師たちの今回のイスラエル訪問を称賛。

イスラエルを支持するアメリカ政府と、クリスチャンたちに深い感謝を表明した。

また、一行は、神殿の丘の南側階段で、讃美と祈りを捧げた。ここは、ダビデの町に面するところであり、多くのパレスチナ人が住む地域でもある。

この霊的にも戦いが最も激しい場所の一つで、福音派教職者たちが、讃美と祈りを捧げる様子からは、将来、定められている勝利を宣言しているようにも見える。

エルサレムの福音派指導者たちから世界の牧師たちへメッセージ

この共同イベントで福音派を代表したのは、2015年にエルサレム中心地に発足した、FOZ、Friend of Zion museum(シオンの友ミュージアム・代表は福音派のマイク・エヴァンズ博士)だった。

fozmuseum.com/about/

Friends of Zionミュージアムには、イスラエル建国から今にいたるまで、自分のことを顧みず、ユダヤ人やその国、イスラエルを支えてきた福音派クリスチャンたちを紹介するミュージアムである。

イスラエル建国に貢献した鍵となるクリスチャンたち、政治家のトゥルーマン米大統領、チャーチル英首相や、独立への闘いを助けたウインゲート英少佐、ホロコースト時代にユダヤ人を助けたシンドラーや、コーリー・テンブーン、杉原千畝が紹介されている。

若干、恩着せがましい一面もあり、イスラエル人の中には敬遠する人もいる。しかし、ユダヤ人以外でも、真剣に、イスラエルを支えてくれる人がいるという事実を見て、感動するイスラエル人もいる。

設立以来、FOZは、福音派とイスラエル政府との連携に努力してきた。10年後の今年、FOZに登録する人の数は、29万人を超えている。この中で、今回、1000人を超える牧師教職者や、有力なインフルエンサーが集まることとなったのである。

マイク・エヴァンズ博士と、福音派牧師であり、現在は、在イスラエル米大使を務めるマイク・ハッカビー氏(写真)も、最近アメリカでは、今のイスラエル国家は聖書とは関係ないとの考えが広がっていると警告する。

教会の講壇からもイスラエルが、語られない傾向にあるという。

ハッカビー大使は、これは非常に危険だと語る。なぜなら、もし神がイスラエルとの契約を破棄したと考えるなら、私たちとの契約も破棄される可能性があることを認めるようなものだからである。

ハッカビー大使は、「反ユダヤ主義のプロパガンダが横行する今こそ、牧師たちは、教会の講壇からイスラエルを支持する声を出してくべき時だ」と語っている。

マイク・エヴァンズ博士は、来年も同様のイベントを計画している。来年のビジョンは、世界中の1億人の牧師、1億の教会にアプローチし、主がイスラエルとの契約を忘れていないという、典型的聖書的な世界観を伝えたいと語っている。

石のひとりごと

世界では、イスラエルを憎む人々の様子が報じられている。終わりの時に向かう中、主は、隠れキリシタンならぬ、イスラエルを支持する福音派を世界中に準備しておられるようである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。