緊張する北部ヒズボラ前線:アメリカは停戦崩壊抑制の動き 2025.12.3

Lebanese army soldiers look at the Israeli military post of Hanita, left, and the Labbouneh post, one of five hills occupied by Israeli forces since last year, right, from a Lebanese military position in the village of Alma al-Shaab in south Lebanon, Friday, Nov. 28, 2025. (AP Photo/Bilal Hussein)

北部ヒズボラとの停戦から1年目の緊張

先月23日、イスラエルが、ヒズボラ指導者がNO2の軍事参謀総長、ハイサム・アリ・タバタバイを暗殺した後、約1週間後の29日(金)に、ヒズボラのトップ、ナイム・カッサムが、ヒズボラは反撃する権利があると表明。対戦姿勢を明らかにした。

北部国境が緊迫する中、ネタニヤフ首相は12月2日(火)、アメリカのレバノン特使モルガン・オルタガス氏と会談。イスラエルはあらゆるシナリオに備えているとして、停戦合意から1年を迎え、それが崩壊する可能性も示唆した。

トランプ大統領は、これを阻止したいと考えているが、ネタニヤフ首相は、これはイスラエルが決めることだと言っている。

www.jpost.com/israel-news/defense-news/article-879004

こうした中、現ローマ教皇のレオ14世(アメリカ人)が、トルコに続いて、11月30日から、レバノンを訪問。レバノンには、3日間滞在して、12月2日(火)に出発した。

イスラエルは、この間に、攻撃することは控えると表明していた。教皇が出立した本日以降、どうなるのか注目される。

最新のニュースでは、アメリカは、停戦を維持するため、オルタガス特使をベイルートへ派遣するとのこと。

イスラエルが黙認できないヒズボラ回復の流れ

ヒズボラについては、2024年11月に、イスラエルとレバノン政府が停戦の合意に至った際に、レバノン政府が、ヒズボラを、リタニ川以北まで追放し、それより南部からは一掃することになっていた。

しかし、レバノン政府は、ヒズボラを十分に制圧できておらず、レバノン南部には、ヒズボラが、再度武装強化しているため、イスラエル自らが攻撃をしなければならなくなっている。

(Photo: REUTERS/Mohamed Azakir)

その中で、ヒズボラの最高司令官であるアリ・タバタバイの暗殺に踏み切ったのであった。

これに対し、レバノン軍は、11月28日(金)、これまでの成果を強調するかのように、レバノン南部で発見された、ヒズボラの地下トンネルをメディアに公開した。

レバノン政府によると、南部ではこのようなトンネル74本が見つかっているとのこと。公開されたトンネルは、電気や水道など生活設備に加えて、医療施設らしき部屋もある。

トンネルは、相当古く、かなり長期間にわたって、ヒズボラが潜んでいたことがわかる。

イランから停戦中にヒズボラに送金:10億ドル(約1550億円)

in Tehran, Iran, Friday, April 11, 2025. (AP Photo/Vahid Salemi)

停戦中、主要な支援国であるイランから遮断されていたはずのヒズボラが、なぜこれほどに武力を再構築しているかについて、WSJ(Wall Street Journal)が、トルコからの支援と、イランからも多額の現金が届いていたことを報じた。

それによると、イスラム教徒たちの間では、何世紀も前からある、「ハワラ」と呼ばれる信頼に基づくマネーロンダリングの方式があり、それによって、イランから、UAEのドバイを経由して、ヒズボラに現金が届けられていた。(UAE政府は否定)

またレバノンも、イランからの密輸を防止するため、直行便の停止や、空港での検査を強化しているが、個人レベルで持ち込む少額の現金や、宝石などは、それらを回避して、ヒズボラに届いていたという。

アメリカの対テロ・金融情報担当者が、2024年の停戦からちょうど1周年に当たる2025年11月に発表したところによると、停戦後の1年間野間に、イランからヒズボラへ届いた現金は、約10億ドル(約1550億円)だったと発表していた。

www.timesofisrael.com/iran-said-funneling-funds-to-hezbollah-via-dubai-in-attempt-to-help-it-rebuild/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。