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ネタニヤフ首相がヘルツォグ大統領に恩赦を要請
ネタニヤフ首相は、2020年に、詐欺、贈収賄、背任などの罪で起訴され、以来、定期的に裁判に出頭して、6年目になる。最近ではこの激務の中でも週3回、法廷に出頭している。
これについて、ネタニヤフ首相は、11月30日、ハダッド弁護士を通じて、ヘルツォグ大統領法務部に正式な恩赦を要請する公式の書簡(111ページ)を提出した。
恩赦とはいえ、ネタニヤフ首相が自らの罪を認めたわけではない。ネタニヤフ首相は、今も訴えの正当性に意義を唱えている。
しかし、恩赦を受けることで、イスラエルの国益をより効果的に推進できると主張している。
また、ハダッド弁護士が提出した書類には、恩赦により、イスラエル国内で続く議論と分断を終わらせることになるとも訴えている。
ネタニヤフ首相がこうした動きに出た背景には、先月、トランプ大統領が、ヘルツォグ大統領にホワイトハウスからの公式書簡として、ネタニヤフ首相の恩赦を要請したことがあげられる。
www.timesofisrael.com/trump-writes-to-herzog-asking-him-to-pardon-netanyahu-amid-unjustified-trial/
トランプ大統領は、その書簡の中で、ネタニヤフ首相が、戦時中に示した恐るべき決断力を上げ、中東におけるアブラハム合意の推進を通じて、イスラエルを平和へと導いている指導者だと述べていた。
ネタニヤフ首相は、「トランプ大統領が、早急な恩赦を要請したのは、二度と戻らない短い期間(トランプ大統領就任期間)に、私とトランプ大統領で、イスラエルとアメリカが共有する国益を大胆に推進できるからだ」と述べた。
また、トランプ大統領も言っていたことだが、ネタニヤフ首相は、こうした裁判の下にあった期間も、ずっと民主的に首相として選ばれ続けてきたことも、恩赦の理由として挙げた。
これに対し、国内では、かなりの論議になっている。野党政治家たちは、ヘルツォグ大統領は、恩赦すべきでないと反対を表明している。

野党のラピード氏は、「ネタニヤフ首相が罪を認めていないのに「恩赦」はあり得ない」と述べた。
また、リーバーマン氏は、「ネタニヤフ首相は罪を認め、辞任するべきだ。それが国を一つにする道だ」と表明した。
イスラエル国内の分断は、ネタニヤフ首相への支持不支持がもたらしている部分もあるからである。
ネタニヤフ首相が、2020年に汚職で訴えられた後、今の政権は、最高裁が首相を訴えることを不可能にすることを含む、司法制度改革案を国会に提出した。
行政が司法の上を行くようなこの法案が出ると、国内では、激しい論議となり、分断の様相にもなった。
そうした中で発生したハマスの襲撃とそれに続く戦争となり、司法制度改革問題は、二の次になっている。
こうした動きから、野党はじめ、国民の中にも、ネタニヤフ首相は、政権に止まるために、戦争や問題を利用しているのではないかとの不信感を持つ人は少なくない。
とはいえ、他に首相となる適任者がいないということも、皆が、ネタニヤフ首相の在任を認めざるをえない状況にあるという見方もある。このため、恩赦については、与党内からもでも否定的な意見も出ている。
www.timesofisrael.com/netanyahu-requests-presidential-pardon-in-corruption-trial-doesnt-admit-guilt/
ヘルツォグ大統領はどうする!?:国益が判断の全てと表明

イスラエルの大統領は、日本の天皇的な部分もあり、政治とは直接関わらないものの、社会的レベルで活動し、国を一つにする立ち位置にあると言われている。
こうした中で、イスラエルの大統領は、首相を恩赦することが認められている。
大統領が、この件について、決定を下すのは、数週間先になるとみられている。
大統領は12月1日(月)、恩赦については、国の利益だけを考えて決定すると表明した。
また、大統領は、国内で論議になっていることは認識していると述べ、強い論説を恐れないとして、大統領官邸HPで、意見がある者は意見を表明するように呼びかけた。
ヘルツォグ大統領は来週、ニューヨークを訪問する。トランプ大統領と会うかどうかは未定。
石のひとりごと
ネタニヤフ首相が、100%正義ではないことは明らかで、大統領自身もそれは思ってはいるのだが、国益の実質面を重視した場合、ネタニヤフ首相を恩赦すべきと判断せざるをえない可能性は低くないだろう。
しかし、ヘルツォグ大統領は、今大きなジレンマに立っていると言われている。
恩赦で思い出すのは、イエス・キリストの時代に、ローマ帝国からエルサレム管理者として派遣されていた、ピラト総督を思い出す。
ピラトは、イエスには罪がないとみて、イエスを恩赦しようと考えていた。しかし、当時のイスラエル市民は、大祭司たちに煽られて、イエスではなく、犯罪者バラバの恩赦を要求したため、ピラトは、バラバの方を恩赦にしたのであった。これにより、イエスは十字架刑となった。(マタイ27章)
この結果、今、私たちの罪の身代わりになることが実現し、そこからの復活も実現するということになったのである。
ネタニヤフ首相の件も、ヘルツォグ大統領の権限ではなく、結局、その背後にある主のみこころがなるものと確信するところである。
