目次
ヴァンス米副大統領来訪中に右派議員たちが西岸地区併合への動き
アメリカが、トランプ大統領本人から乗り出して、成功させようとしているガザ停戦だが、それを妨害する動きが、イスラエル国内から出た。
ヴァンス米副大統領がまだイスラエルにいる時に、ネタニヤフ首相お足元の右派議員たちが、西岸地区のイスラエルへの併合に関する法案2つに関する法案の予備審議を行い、1つ目の案件について、賛成25、反対24とぎりぎりだが、初回審議を通過した形となった。
これが、法律になるには、今後国会で、3回の可決が必要であり、現在、国会の外務部門と、防衛部門で審議されている。
おそらくは通過しないが、ヴァンス米副大統領が来ている最中でのことで、ネタニヤフ首相にとっては、大きな恥になったと言われている。

なお、法案の1つは、西岸地区全域に、イスラエルの主権を発動するというもので、もう一つは限定した地域、マアレイ・アドミムを併合するという法案だった。
この法案を提案したのは、強硬右派のアヴィ・マオズ議員で、「“ユダヤ・サマリア地区(西岸地区)”は、聖なる方、主がイスラエルに与えた地域である。そこに戻ることは贖いであり国リバイバルを意味する。土地の繁栄にもつなが

る。ユダヤ・サマリア地区にイスラエルの主権を発動することは、ずっと前にするべきことだった。」と述べた。
ネタニヤフ首相とそのリクード党は、現時点ではまだこれには反対を表明する立場である。ところが、リクードのトップに近い、ユリ・エデルステイン氏が、反対票ではなく、棄権したことで、賛成25、反対24になり可決となったのである。
エデルステイン氏は、「祖国のすべての地域
に、イスラエルの主権を置くことが日常の秩序につながる」と述べ、右派議員は、全員この法案に賛同するべきだとも述べた。
ネタニヤフ首相にとっては、まさに足元からの反旗である。リクードでは、エデルステイン氏を今のポジションから下ろすという話になっている。
こうした動きに対し、トランプ大統領は、「これがこれまでのすべてを覆す可能性がある」と激怒。「もし西岸地区を併合したら、イスラエルは、アメリカのすべての支持を失うだろう」とも語った。
トランプ大統領は、すぐにルビオ国務長官をイスラエルへ派遣。後には、イスラエルがそんなこと(西岸地区併合)をすることにならないだろうと語っている。
右派議員の動きの背後にあるパレスチナ国家承認への懸念
エデルステインほどの議員を含む右派議員たちが、この時に西岸地区併合法案に踏み切ったのは、トランプ政権が、パレスチナ国家承認を、イスラエルに押し付けてくるのではないかという懸念が出ているからである。
トランプ大統領が出している停戦への20項目で行くと、パレスチナが国家として成立する可能性がゼロではない。どちらにもころべる形なのである。
アメリカはイスラエルに完全に味方なのかどうなのか。イスラエル国内では、生存する人質20人全員を一気に奪回したトランプ大統領を信頼しようとする考え方と、そうでない考え方と両方ある。

そのアメリカは、今、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化を進めており、その結果として、サウジアラビアが、アブラハム合意に加盟することを目指している。
11月には、ビン・サルマン皇太子をホワイトハウスに招待しており、この件を話し合うとみられる。
しかし、サウジアラビアは、その条件として、強力に、パレスチナ国家(ガザと西岸地区)設立を挙げている。このため、右派議員たちの間では、トランプ大統領が、イスラエルにこの件への譲歩を要求してくるのではないかとの懸念が広がっているのである。
強硬右派シオニスト政党のスモトリッチ財務相は、もしサウジアラビアが、イスラエルとの国交正常化の条件として、パレスチナ国家承認を要求するなら、「けっこうです。ラクダに乗っていてください」と、敬意を逸する発言をした。
国内からは失礼な表現だとして激しいバッシングを受け、スモトリッチ氏は後で謝罪を表明するという経過もあった。
www.timesofisrael.com/smotrich-on-saudi-normalization-no-thank-you-keep-riding-camels/
ネタニヤフ首相にとっても、パレスチナ国家承認は、ぜったいに受け入れられないことである。とはいえ、イスラエルにとって、アメリカの支持は絶対に失い得ないものである。
ネタニヤフ首相の難しいアメリカとのやりとりが続いている。
