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ハマスとイスラエル合意第一段階の停戦発効:13日(月)正午までに人質解放完了予定
10月10日(金)早朝、治安閣議でもハマスとの合意が承認されると、イスラエル軍はただちに撤退を開始。
同日12:00(日本時間18:00)、合意したラインまで撤退を完了したと発表した。
CENTCOM(米軍)がこれを確認し、停戦が発動となった。(以下は撤退するイスラエル軍の様子)
ハマスは、この72時間後の13日(月)12:00までに、人質生存者と遺体48人を全員解放することが義務付けられる。報道によれば、早ければ、12日(日)にも人質解放が始まる可能性があるとのこと。
2年前にハマスが、イスラエルに侵入して、1200人を虐殺、251人を拉致して行った日は、シムハット・トーラーの朝だった。残りの人質は、その2年後のシムハット・トーラーの日に、戻ってくるということである。
トランプ大統領がイスラエル・エジプト入りへ

トランプ大統領は、13日(月)までにイスラエルに到着し、解放された人質と、エルサレムの国会で面会する予定である。
さらに、その後エジプトに行って、交渉現場に出るとともに、国際カンファレンスを行うと言っている。
ハマスは、イスラエルが釈放するパレスチナ囚人のリストに不満を表明している。しかし、さすがに、トランプ大統領が来る中で、合意をひっくり返すことはできないだろう。トランプ大統領の直々の来訪は、ハマスに極め付けの圧力といえる。
しかし、今後数日の間、中東では、セキュリティから何から相当忙しくなる。とりなし手も忙しくなりそうである。
ネタニヤフ首相が市民に向け勝利宣言
ネタニヤフ首相は、10月10日、停戦発効から1時間後の13:00、国民にメッセージを発した。
ネタニヤフ首相は、この2年間、国内外からガザへの侵攻に反対する圧力に耐えてきたが、ハマスへの軍事圧力こそが人質解放につながると信じていた。今まさにそれが起ころうとしていると語った。
「私の焦点は、ただ一つ、イスラエルの治安維持だった。すべての人質を取り戻すこと、私たちの存在を脅かす、イランの核兵器と弾道ミサイルの脅威をなくすこと、ハマスを中心とするイラン傀儡勢力を打破することであった。
あらゆる圧力の中で、戦い続けた。トランプ大統領が就任する前にも、158人の人質(生存者は117人)を取り戻した。トランプ大統領が就任後には、58人を取り戻した。しかし、最後の48人(生存者20人)の奪回は本当に難しかった。
私は、「ハマスに譲歩せずに人質を取り戻すことはできない。イスラエル軍をガザからすべて撤退すべきだ」との圧力を夜昼構わず受けてきた。
しかし、私はそうは思わなかった。私たちが最大級の武力で、本気でハマスの拠点ガザ市に突入しようとするなら、ハマスは存続する(逃げる)方を選ぶと信じていた。
武力による圧力に加えて、友人たちによる膨大な外交的な圧力もあって、今、ハマスは、イスラエル軍が、完全に撤退するという要求を諦め、イスラエル軍が、ガザ内部に残留する中で、人質全員を解放することを認めた。
今後、もしすべてがうまくいけば、ハマスは非武装化され、ガザ地区の非軍事化に向かうことになる。しかし、もしそうでないなら、厳しい方法でそれをなしとげるまでだ。」とハマスの出方によっては武力再開も示唆した。
また、「はっきりさせておくが、これまでの2年の間に、今のこの人質解放が交渉のテーブルに出ていたことはない。ハマスが、人質全員解放に応じたことはなかった。今、剣が首に突きつけられ続けたことで初めて、これに応じたのだ」と述べた。
また、ハマスは、トランプ大統領の停戦20項目が出て、私も合意したことで、ハマスはこれまでになく、世界的に孤立していることも強調。ネタニヤフ首相は、今、この時点でのフォーカスは、人質を取り戻すことであると語った。
「この2年間、人質家族たちとの面会は本当につらかった。私と妻は、皆さんと同じだ。その痛みに涙していた。私は家族たちに、一人も取り残さないと約束していた。
しかし、今、ここ数日の間に、人質は全員が帰ってこようとしている。
彼らは、帰ってから、厳しい医療的心理的リハビリに向かわなければならない。イスラエル国家全部が彼らを支えることになる。
遺体で戻ってくる市民には、ユダヤ教の葬儀で葬る。できるだけ早く、全員を連れ戻す。成し遂げなければならない、聖なる義務だ」と語った。ネタニヤフ首相は、これから人質を迎えるプログラムを「祖国への帰還」と名づけたと語った。
ネタニヤフ首相は、これまで戦ったイスラエル軍兵士たち、戦死者家族、負傷した兵士たちにも感謝と回復の祈りを表明した。
また、トランプ大統領と国際社会の首脳たち、特に交渉にあたったウィトコフ特使とクシュナー氏に深い感謝を表明した。
「私たちは、中東を変えるような大きな勝利を獲得した。しかし、戦いが終わったわけではない。まだ厳しいチャレンジがあるが、それはまた大きなチャンスでもある。共に、立って、私たちの周りに平和を広げていこうではないか」と締めくくった。
イスラエル軍報道官:偶発的戦闘再開に警告
停戦に入ったとはいえ、イスラエル軍はまだガザ地区の53%を管理下に置き、軍を駐留させている。
ガザ市北部エリアのベイトハヌン、ベイトラヒヤ、シャジャイヤ、南部ラファ検問所近く、フィラデルフィ回廊、ハンユニスなど、これまで激しい戦闘があった地域も含まれている。
衝突が発生して、人質解放が妨害あれる可能性は否定できない。

イスラエル軍のデフリン報道官は、ハマスは、イスラエル軍が各地で勝利したので、2年前のハマスと同じではないとしながらも、軍はいかなる脅威にも対応すると警告。
ガザ住民たちに、軍に近づかないよう警告した。加えて海岸にも近づかないようにと警告した。
石のひとりごと
ネタニヤフ首相が言っていることは、今起こっていることは、ちょうど、双方が、勇気を試すために、正面衝突しよう加速接近する中、どちらが先に白旗を上げるかの勝負をしたが、今、ハマスが先に白旗を上げたということである。イスラエルは今にもガザ市に突入するところだったが、突入しないですんだ。
今、私たちが見ているのは、それまでイスラエルが完璧に孤立していた危機的状況から、一気にハマスが孤立する様相に激変している様子である。
この変化をもたらしたのは、イスラエルが、ドーハにいたハマス指導者らへの攻撃だったと言われている。アメリカ、カタール、トルコ、また中東諸国が戦火の拡大を恐れて、ハマスに強力な圧力をかけたのである。
イスラエルを、一気にアメリカ含む全世界からの孤立に落とし込んだこのドーハ攻撃、失敗とみられたこの攻撃が、逆の結果を生み出した形である。ネタニヤフ首相の計画だったかどうかはわからないが、主のどんでんがえしのパターンに見えなくもない。
それにしても、この2年、ハマスへの攻撃について、国内外からの批判を受け、軍からも批判され、市民たちからは、人質を見捨てるのかと嫌われ続けながらも、自分の信念を貫いてきたネタニヤフ首相。本当に辛かっただろう。その強靭さ、自分はどう思われても、ただただイスラエルを守るという、この信念は、すごいの一言である。
ただし、まだ終わったわけではない。人質が本当に全員解放され、その後、ハマスが武装解除すること。イスラエルとの戦闘が再開になることなく、ハマスが本当にガザから消えていくよう、特にここ数日の間の主の支配を祈る。
