イスラエル治安閣議がハマスとの合意承認:バルグーティら主要テロリスト4人は残留 2025.10.10

Ma'ayan Toaf / GPO

ハマスとの合意をイスラエル閣議が承認

ハマスとイスラエルの人質解放を含む、トランプ大統領停戦案第一段階に合意したことを受けて、ネタニヤフ首相は、10月9日(木)夜10時、予定より4時間遅れで、アメリカのウィトコフ特使、クシュナー補佐官を交えての治安閣議を開催した。

結果、賛成票を投じた議員が大多数であったことから、ネタニヤフ首相は、10日(金)朝、ウィトコフ特使とクシュナー補佐官とともに、閣議での承認を発表した。

トランプ大統領の第一段階に関する合意書 署名がなされている。

ネタニヤフ首相は、「2年間、目標を達成するべく戦ってきた。その中心の一つは人質を取り戻すことだった。それを今達成しようとしている」と語っている。

またそのために、アメリカのウィトコフ特使、クシュナー氏の並外れた支援なしにはありえないことだったと感謝を述べている。

ウィトコフ特使は、ネタニヤフ首相が難しい決断をしたことを称賛。過去に、ネタニヤフ首相が時に強情だと思うこともあったが、それがなかったら、今の状況には至らなかったというのが真実だと述べた。

www.timesofisrael.com/gaza-ceasefire-takes-effect-as-government-approves-deal-to-free-the-hostages/

バルグーティら主要テロリスト4人は残留

Marwan Barghouti, a popular Palestinian militant, during a court appearance in Israel in 2004.Credit…Pool photo by David Silverman

ハマスが、人質全員を解放するにあたり、イスラエルは、国内刑務所で終身刑になっているテロリスト250人と、ガザで拘束した1700人(10月7日の虐殺には関与していないがその後の戦闘に関与していた)と、攻撃には関与していない中で、拘束された未成年22人を釈放する。

現時点でイスラエルに、収監されているテロリスト(治安囚人)は270人なので、250人ということは、その大部分を釈放することを意味する。

250人のリストはまだ公開されていないが、Ynetによると、ハマスが要求していた、「4人のエース」と呼んでいる主要テロリスト、マルワン・バルグーティ(66・ファタハ幹部)、アフマド・サアダト(72)、アッバス・アル・サイード(59)、ハッサン・サラメ(85)は、除外されている。この他にも2人の終身刑テロリストがリストから除外されている。

これはハマスが、仲介者の圧力で譲歩したということだろう。

Aziz Salha with bloody hands during lynching in Ramallah in 2000. (credit: Wikimedia Commons)

しかし、リストの中には、ラマラで、迷い込んだ2人のイスラエル軍予備役兵をリンチして殺したテロリスト2人が含まれている他、イスラエル人18人を殺して、終身刑18回のイブラヒム・アリカムはじめ、相当な極悪テロリストがあがっている。

子供を殺したテロリストや、終身刑の判決を受けたが、服役が10年未満の者は、リストにはあがっていないとのこと。

www.jpost.com/israel-news/defense-news/article-870000

釈放先はガザ地区と、大半は、トルコとカタールに送られるとのこと。ガザ地区というのがどうにも理解に苦しむところだが。。

www.ynetnews.com/article/rypftxipgl

反対票を投じたベングヴィル氏とウィトコフ氏の激論

National Security Minister Itamar Ben Gvir visits the Temple Mount in Jerusalem’s Old City, October 8, 2025. (Temple Mount Administration)

ハマスとの合意に反対した議員は、次の通りであった。宗教シオニスト党スモトリッチ氏、強硬右派オツマ・ヤフディ党のベングヴィル国家安全保障相とその関係者数人である。

ベングヴィル氏とウィトコフ特使は、30分にわたって、激論になっていた。

ベングヴィル氏は、「釈放するテロリストのリストには、赤ちゃんを殺した者や女性を強姦した者も含まれている。

アメリカでこんなことがありうるだろうか。仲介には感謝するが、私たちを殺そうとしているハマスとの和平はありえない。」と訴えた。

ウィトコフ特使は、気持ちはわかるとしながら、自身の息子が、薬物過剰摂取で亡くなったというエピソードをあげ、「犯人を殺したいと思ったが、裁判で、その両親が恥じながら、許しを乞う姿を見て、許すことにした」と語った。

ベングヴィル氏は、「まさにそこが違う」と反論。10月7日に、私たちを殺害した者たちの両親は、息子たちの殺人を誇りにしている。彼らはユダヤ人を殺したいということだと述べた。

するとクシュナー氏が、ハマスは今や、世界から孤立しており、抑止されていると反論。ベングヴィル氏は、「ヒトラーと和平を結べというのか。ハマスはヒトラーだ。私たちを殺したいのだ」と言い返した。

その後、ベングビル氏は、人質が返還されることには、大きな喜びを感じているとは行っているが、その後、ハマスが武装解除されないなら、政府を倒すと言ったとのこと。

www.israelnationalnews.com/news/416056

石のひとりごと

人質を全員取り戻すためにこれほどのテロリストを釈放することに、とんでもない不条理を感じている人は少なくないだろう。しかし、人質を全員取り戻したら、条件は白紙に戻る。

もしハマスが約束を守らず、条件が整うなら、イスラエルは遠慮なく、ハマス殲滅に着手できる可能性が出てくると思う。まずは、人質全員が、戻ってくること。その完成を祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。