人質全員解放へ:ハマスとイスラエルが停戦案第一段階に合意とトランプ大統領表明 2025.10.9

Relatives and supporters of Israeli hostages held by Hamas in the Gaza Strip celebrate after the announcement that Israel and Hamas have agreed to the first phase of a plan releasing the hostages and ending war in Gaza, in Hostages Square in Tel Aviv, Israel, Thursday, Oct. 9, 2025. (AP/Emilio Morenatti)

人質全員解放へ:ハマスとイスラエルが停戦案第一段階合意とトランプ大統領発表

エジプトのシェルム・エル・シェイクでは、ハマスとイスラエルの間接交渉が行われている。

(Telegram / used in accordance with clause 27a of the copyright law)

10月8日(水)からは、仲介のアメリカ(ウィトコフ特使、大統領顧問クシュナー氏)、エジプト、カタールに加えて、トルコ、ハマスとは別に人質を拘束しているテロ組織、イスラム聖戦代表も加わって、ガザ停戦に向けた、交渉に加わっていた。

そして同日、8日(水)(日本時間9日朝8時)、ホワイトハウスで、協議の結果報告を受けたトランプ大統領が、イスラエルとハマスが、交渉の第一段階に合意したと発表した。以下はその瞬間(後半部分)

ハマスとイスラエルが第一段階に合意したことを受けて、ネタニヤフ首相は、国会での承認を得た後、現地時間で本日午後には、ハマス、イスラエル両者が合意に署名する。その後、イスラエル軍は、ガザ内部の合意したライン(黄色?)にまで撤退する。

イスラエル軍の撤退の時間にもよるが、それから72時間以内、まず、生存している人質20人が11日(土)に解放され、場所がわかっている遺体も13日(月)までには解放が完了する見通しである。

最新の情報では、合意がすでに確定したとみえ、イスラエル軍はすでに撤退の準備を開始しているもようである。

トランプ大統領は、SNSに、「恒久的な平和への第一歩であり、中東全体にとって偉大な日だ」と、トランプ大統領は語っている。10日(金)に発表されるノーベル平和賞を意識してか、「平和をつくるものは幸いだ」と、聖書の言葉(マタイ5:9)を思わせる言葉で締めくくっている。

ネタニヤフ首相は、トランプ大統領と電話会談で、このニュースの喜びを共有し、Xに「神の助けで、人質全員を連れ戻す」と書き込んだ。

ネタニヤフ首相は、今週末、トランプ大統領をイスラエルへ招き、国会でメッセージするよう要請。トランプ大統領もそれに応じると答えたとのこと。

しかし、トランプ大統領は、今回、すべての当事者を公正に扱うとしており、イスラエルには、今後ハマスへの攻撃はしないと約束させたとの情報もある。

人質解放に反対する者はいないと思われるが、強硬右派議員たちの出方も気になるところである。

また人質と交換に、イスラエルが釈放する終身刑テロリスト250人とガザで拘束した1700人の釈放についても、これから明らかになってくるとみられる。

停戦が発効した当日には、支援物資トラック400台がガザに入る。それ以降徐々に増やしていく予定である。

www.timesofisrael.com/trump-announces-deal-reached-on-first-part-of-his-gaza-plan-all-hostages-will-be-freed-very-soon/

ヘルツォグ大統領は、「イスラエル人は全て一つになって、人質と共に立つ」と述べ、今この時ばかりは、イスラエル人は、人質家族たちと一つであるべき時だとXに表明した。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/hailing-deal-herzog-says-all-of-israel-stands-with-the-hostages/

相次ぐ人質家族のトランプ大統領への感謝

このニュースが届くと、イスラエルからは、人質家族からの感動とトランプ大統領への感謝が相次いで出ている。

トランプ大統領自身も、それらのコメントをSNSなどで流しているという。以下は、10月7日から2年目を記念して、ワシントンに来ていた人質家族たちから、トランプ大統領への感謝のメッセージ。

リラン・バルマンさんは、双子の兄弟ガリさんとツィヴさんが帰ってくることの喜びを表明。叔母にあたるマカビット・メイールさんも、「こんな幸せなことはない」と語っている。

テルアビブの人質広場では、人々が集まり、感動とトランプ大統領への感謝が出ていた。

その後テルアビブの人質広場では、大雨になったが、黄色の傘やTシャツを着た人々が、集まっている。

ハマスとガザからの反応:トランプ大統領の仲介に感謝

Hamas negotiators, including Khalil al-Hayya (second from left) seen in a photo indicating success in the mediated Israel-Hamas negotiations on a Gaza hostage-ceasefire agreement in Sharm el-Sheikh

ハマスは、人質を全員解放するが、その代わりに、終身刑テロリスト250人含む約1950人のテロリストを受け取ることになる。

ハマスは、250人のリストを提出しているが、その内容についての詳細はまだ出ていない。

ハマスは、「囚人交換に合意し、戦争を終わらせることになった。イスラエル軍はガザから撤退し、人道支援物資が搬入される。」と発表。

戦争を終わらせるよう、仲介したアメリカのトランプ大統領に感謝を表明した。

また、「ガザ、エルサレム、西岸地区はじめ、地域内外で、占領者ファシストに対して、変わらない勇気を示した同胞たちに敬意を表明する」とも表明した。

同時に、“占領政府(イスラエル)”が、合意したことを遅延することなく、実施させるようにとも釘をさしている。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/hamas-demands-mediators-compel-the-occupation-government-to-fully-implement-gaza-deal/

ガザでも喜ぶ人々の様子が伝えられている。

世界首脳からも安堵の表明

ガザでハマスとイスラエルが第一段階であったとしても、停戦に合意したことについて、国際社会からは、平和への希望とともに、両サイドに合意したことを果たすよう求める声明が相次いだ。

スターマー英首相は、「これは世界中で深い安堵の瞬間だが、特に人質とその家族、過去2年間の想像を絶する苦しみに耐えてきたガザの人々にとってはまさに安堵だろう」と語った。カナダ、オーストラリアの首脳も、同様のコメントを出した。

イタリアも合意を歓迎するとし、平和維持軍が必要なら、出す用意があると述べた。

グテーレス事務総長は、「国連は合意の完全な履行を支持する」と表明。占領を終わらせ、パレスチナ人の主権を認めて、平和な二国家解決になるこのような機会を、失わないように求める」との声明を出した。

www.timesofisrael.com/world-leaders-praise-trump-mediators-for-gaza-agreement-express-hope-for-peace/

反イスラエルで大暴動になっていた世界各地にとって、この合意は、どう見えるのだろうか。冷や水になっただろうかとも思う。

石のひとりごと

2年という月日、最後まで諦めなかった人質家族たちとイスラエル市民たち。人質本人はいうまでもない。

また、このために祈り続けてきたクリスチャンたちにとっても、人質の解放はどれほどの感動になることだろうか。土曜日からの様子は想像を超える喜びになりそうである。

An art installation in Tel Aviv’s Hostage Square. Oct. 9, 2025.
(photo credit: GIDEON MARKOWICZ/TPS-IL)

それにしても、トランプ大統領、ノーベル平和賞発表の前日に、ガザ問題を停戦にこぎつけた。受賞になるかどうか注目される。

以前から時々思っていたことだが、ネタニヤフ首相が、トランプ大統領に取り入っている様子や、イスラエル国民だけでなく、ハマスやアラブ諸国指導者までが、トランンプ大統領に感謝を表明している。

トランプ大統領がそうだと言わないが、将来、イスラエルが手を組む反キリストはこんな流れで、世界のトップに立ち、力で黙らせて、第三神殿を実現してしまうのではないかと思ったりする。

実際、エルサレムでは、ベングヴィル氏が、神殿の丘を訪問。堂々と祈りを捧げて、ここに仮庵を立てるとまで言っていた。現代の熱心党ともいえる政治家や人々の第三神殿への熱意は高まる一方である。

最近、トランプ大統領が、関税で世界を大騒ぎさせたが、ローマ書にそのことも出ていて驚いたところであった。(2017年版)

すべての人に対して義務を果たしなさい。税金を納めるべき人には税金を納め、関税を納めるべき人には関税を納め、恐れるべき人を恐れ、敬うべき人を敬いなさい。(ローマ書13:7)

 

さらにあなたがたは、今がどのような時か知っています。あなたがたが眠りからさめるべき時刻がもう来ているのです。

私たちが信じた時よりも、今は救いがもっと私たちにもっと近づいているから。

夜は深まり、昼は近づいて来ました。ですから、私たちは、闇のわざを脱ぎ捨て、光の武具を身に着けようではありませんか。(ローマ書13:11-12)

 

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。