仮庵(スコット)の初日にあたる10月7日(火)は、イスラエル南部にハマスが侵攻して1200人を虐殺、251人を拉致して行ってからちょうど2年目であった。
この件を覚える式典やイベントについては、昨年も、政府と民間の間で一致せず、別々に行っていた。今年は、10月7日が、仮庵の祭りとちょうどかぶったことから、政府によるイベントは、来週行うとしている。
一方、人質家族とその周辺の民間団体によるイベントは、10月7日を中心に行われた。
300人以上の犠牲者を出した、ノバ・ミュージック・フェスティバルの会場や、被災したキブツ、モシャブでは、7日(火)朝、サイレンとともに黙祷するとともに、被災現場で、犠牲者と人質、悲惨な出来事を覚え、残された人質の解放を訴えるイベントが行われた。
テルアビブでは、7日(火)夜、ヤルコン公園で、犠牲者や人質になっている人々を覚えるイベントが行われ、約3万人が参加した。

ステージには、実際に当日、ハマスに破壊された車が置かれ、近くには、弾丸だらけのシェルターも設置されていた。人々は、「Bring Them Home」と書かれたTシャツを着て、黄色のリボンをつけていた。
イベントでは、ノバ・ミュージック・フェスでの襲撃を生き延びて、ユーロビジョンにも出場したユバル・ラファエルさんが歌った他、人気ポップスターのエデン・ハソンさんが、「What do you want from me」という歌を歌った。
この歌は、苦難に直面する中で、「私にいったい何を求めるのですか。もう十分です。何か語ってください」と神に疑問、というよりは率直な怒りを投げかけるような歌である。
これらのイベントでは、不思議なほどに、ハマスへの怒りは出てこない。一方で、政府への怒りが目立っている。
イスラエルが、中東で最強の軍備を持つとうことは、イスラエル市民も自覚するところである。それが、一テロ組織であるハマスにここまでの犯罪を許してしまった原因は、ネタニヤフ政権と軍の失策であったとして、政府を非難している。
また、政府はハマス殲滅を主張して戦争に入ったが、2年たってもまだ戦争は終わらない。それなら、もっと早くに、ハマスとの交渉を行って人質を取り戻すべきだったと訴えている。
政府への嫌味のごとく、トランプ大統領に、あなただけが人質を取り戻せると、訴えていた。
石のひとりごと
ベン・アリさんの歌からは、理解を超えた主の選びの中で苦悩するイスラエル人と主との関係が、聖書時代と変わりがないと感じ、なんとも心が動かされた。
また、イスラエルでは、ハマスへの憎しみが、訴えの中心になっていないことに注目させられる。
憎しみが何をも生み出さないことをユダヤ人はよく知っていると思う。一方で、将来に目を向け、これからどうするのか、何をなすべきなのかで、意見が分かれているのである。
世俗派で左派傾向にあるテルアビブでは、上記のように、ハマスとの交渉に積極的でないネタニヤフ首相を非難している。一方、エルサレムに多く在住する保守派で宗教的な右派たちは、逆にネタニヤフ首相が、ハマスとの交渉に臨んでいることに不満を訴えている。
世界では、保守派とリベラルの対立が、目立ち始めているが、イスラエル国内でもその傾向はみられるということである。
このように、イスラエルでは、このように、自由に政府を非難できていることに世界は注目すべきである。一方で、ガザの人々は、ただただハマスへの恐怖に流されて、言うことも行動も支配されている。
10月7日において、ガザの人々も、何が発端となって、こんな悲惨な惨めな状況に陥ったのかを考えているだろう。ハマスが原因であることは、わからないはずはないが、ガザ内部からハマスを非難する声は出ていない。
それでも世界はイスラエルを非難し、ハマスを支持する者までいる。この様子からも、世界が、どこか脱線し始めているのではないかと想うところである。
