ガザ市侵攻どうなる?ハマスの呪いは祝福に変わるか 2025.8.30

IDF troops from the 7th Armored Brigade operate in Gaza City’s Zeitoun neighborhood, August 28, 2025 (Lazar Berman/The Times of Israel)

ネタニヤフ首相は、ガザ全域占領に向けて、ガザ市への攻撃を行うことを明言し、準備を開始するとともに、周辺をクリアにする作戦はすでに開始している。

ガザ周辺一掃作戦継続中:ガザ市市民に南部へ避難促す

イスラエル軍は、ガザ市占領に向けて、ガザ周辺地域の解体作業を行なっている。

ガザ市郊外のゼイトゥーンに入っている第7機甲旅団(戦車と地上軍)約400人は、この3ヶ月の間、ゼイトゥーンとシャジャイヤの解体をすすめている。

トンネルや、ハマスの隠れる場所を一掃することで、戦争が終わったあとに、生き残ったハマスがこの地域に戻ることがないようするためである。

一方で、ガザ市民の家屋はできるだけ破壊しないようにしなければならない。部隊が使用する地図には、破壊も戦闘も最小限にするべきエリアが赤で記されているという。

しかし、部隊長によると、民間人家屋とはいえ、爆弾や対戦車砲、ハマスの制服などがない家はほとんどないという。結果的にゼイトゥーンでは、ほぼすべての地上インフラを破壊しているとのこと。

 

Times of Israelによると、第7機構旅団は、10月7日直後に、この地域での戦闘に関わっていた。そのため、今もガザにいる人質48人のうち、6人は、この部隊に所属する兵士で、このうち2人は、今も生存していると考えられている。

10ヶ月の帰国期間を経て今、またガザのこの地域へ派遣されたこの部隊にとっては、特別な意味があるとも言われている。(イスラエル軍は常に同じ部隊単位で徴兵される)

www.timesofisrael.com/back-in-zeitoun-for-the-7th-time-idf-adjusts-its-methods-to-dismantle-hamas-stronghold/

ガザ市から南部へ避難するガザ市民 on August 28, 2025. (Eyad BABA / AFP)

イスラエル軍は、ガザ市にいる市民100万人(ガザ住民のおおむね半分)には、南部への避難を促している。また8月29日(金)、ガザ市とその周辺地域を戦闘区域と指定し、その地域では、それまで行っていた、人道支援物資搬入を円滑にするための約10時間/日の攻撃停止時間を停止すると発表した。

それ以外の地域への物資搬入は継続するとともに、市民を守るためのハマス攻撃は実施すると発表している。

ハマスがのろい?ガザ市攻撃は人質とイスラエル兵の命がリスクになると脅迫

こうした中、ハマス軍部報道官アブ・オバイダが、29日(金)、イスラエルのガザ市制圧は、「人質の命をリスクにさらすことになる。人質の命の責任は、イスラエル政府にある」と表明した。

さらに意地の悪いことに、イスラエルの攻撃で死亡した人質の写真を名前付きで公開すると脅迫した。さらに、ハマスは、その領域とともに、人質も維持する(解放しない)とも述べた。

また、イスラエル軍は、その兵士の血で支払いをすることになる。兵士を誘拐する可能性もある。「ハマスのテロリストの決意は固く、侵攻してくる者たちに厳しいレッスンをすることになるだろう」と語った。

www.ynetnews.com/article/bk6viefqxg

ガザ市侵攻するか・しないで済むか:人質交渉は継続中

ここまでの準備をしているのではあるが、実は、イスラエルは、いまだに、ガザ市への侵攻はするのかしないのか、しないという可能性もゼロではないかもしれない。

ネタニヤフ首相は、攻撃準備と同時進行で、ハマスとの人質交渉はまだ続けている。いわば、するどい刀を振り上げて、ハマスが降参することを待っているという感じである。

しかし、それ以外にも複雑な事情はある。ガザ市には100万人の市民がおり、そこでの戦闘は困難を極め、国際社会からの非難も必須である。

at the IAF’s command center, August 24, 2025. (Ma’ayan Toaf/GPO)

いつガザ市を攻撃するなら早いほうがいいという声もある中、イスラエル軍のザミール参謀総長など、軍司令官たちからは、交渉が進んでいる以上、そちらを優先すべきで、今、戦闘に突入するべきではないとの意見が政府に出していると報じられている。

さらには、イスラエルの国民への負担が相当大きく、国内からは、戦争への反対意見は日に日に大きくなっている。

国内では、ガザ市攻撃に向けて、最終的に6万人が予備役兵として招集されることになっており、筆者の知人もすでに息子2人が招集されたと言っていた。

イスラエルでは、9月1日に、新学期を迎えるが、数百人の校長や教師が予備役兵に招集されて、不在になる見通しになっている。教師たちは、この戦争が始まった時に数千人が動員された、少しずつ学校に戻っていた。その人々がまた再動員されつつある形である。

www.ynetnews.com/article/rk000g2ateg

最終的な決断はネタニヤフ首相とカッツ国防省とその閣議が決めるのだが、ガザ市攻撃をするにしても中止するにしても、どちらの決断でも非常に大きなリスクを伴うことになる。戦闘か交渉か。最後まで選択肢を残しておこうとする、ネタニヤフ首相らしい動きかもしれない。

石のひとりごと

日本にいる20代の若者を見ていると、軍服を着ないですんでいることの祝福をわかっているのだろうかと思う。イスラエル人であるがゆえに、今その世代の若者はどんどん戦場に送られている。

それにしても、ハマスが言っていることは、のろいのようにしか聞こえない。これこそ、人の命を盾にする以外のなにものでもない表現である。国際社会はこれをどう理解するのだろうか。

ハマスの呪いの前に、イスラエルは今、非常に難しいところに立っている。ネタニヤフ首相は、日々、主の前に出ているだろうか。

主がハマスの呪いを聞いてくださったと想う。主が動いてくださり、戦わずしてハマスが倒れること、人質が全員無事に帰ってくること、主の御腕が世界に明らかにされ、のろいが祝福に変えられることを祈る。

バラムは彼のことわざを唱えて言った。「バラクは、アモスから、モアブの王は、東の山々から、私を連れて来た。『来て、私のためにヤコブをのろえ。来て、イスラエルに滅びを宣言せよ。』

神がのろわない者を、私がどうしてのろえようか。主が滅びを宣言されない者に、私がどうして滅びを宣言できようか。(民数記23:7、8)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。