7月30日(水)、保守系右派、多くは正統派ユダヤ教徒のイスラエル人数百人が、ガザに近いスデロット郊外から、ガザ国境から1キロ未満というギリギリの地点に向けて、ガザへの再定住を訴えるマーチング・デモを行った。多くの女性や子供たちもいた。
ガザには、かつて、ハイテクの農場を開拓し、すばらしい収穫を得ていたユダヤ人たちがいた。これらの農場では、近隣のパレスチナ人を雇って、両者はそれなりに平和に過ごしていたのであった。
しかし、徐々にガザにいるユダヤ人たちを攻撃するテロが頻発するようになり、イスラエル軍が保護しなければならなくなった。
イスラエル軍に戦死者も続出したことから、2005年、当時のアリエル・シャロン首相は、ガザに住んでいたユダヤ人全員を、電撃的、強制的にイスラエル領内に引き上げさせるという作戦を敢行した。
この時、ユダヤ人がガザから引き上げることは、将来イスラエルに大きな問題なるとの分析もあった。その通りに、その2年後の2007年に、イスラム主義テロ組織ハマスが、ガザからパレスチナ自治政府を追い出し、ハマスだけでガザを統治するようになったのである。
その後、ハマスは、イスラエルを打倒するための武力蓄積、地下のトンネルの構築に全力を尽くしたのであった。ガザ市民はどんどん貧しくなるとともに、ハマスの洗脳を受けて、イスラエルを憎むようになっていったのである。
ちょっと話はそれるが、今世界が、パレスチナ自治政府を国にして、ガザも治めさせることが可能だと考えていることが、無謀というか、ありえないことであることがわかってくるというものである。
今回のガザ国境にむけてのマーチング・デモでは、かつてガザでも最も繁栄していたユダヤ人地域グッシュ・カチーフの象徴であったオレンジ色の旗がひらめいていた。「ガザは、永遠に私たちのもの」と叫ぶ人もいたという。
このデモは、政府の右派政治家たちに支持されて行われていた。政府は、混沌とするガザ情勢の解決として、ガザの一部をイスラエルが併合することも示唆している。
しかし、右派政治家たちは、一部ではなく、トランプ大統領が言っていたように、ガザ全体を一掃し、ユダヤ人が再び住むことを主張している。
www.timesofisrael.com/ours-forever-hundreds-march-from-sderot-to-gaza-border-to-demand-resettlement/
石のひとりごと
ガザ問題のカオスは、まず世界が、パレスチナ人に国を与えて、イスラエルと平和な隣人になると、本気で考えているという、驚異的な非現実性である。
パレスチナ人の間では、宿敵イスラエルというイメージが、何世代にもわたって引き継がれており、パレスチナ人、特にガザのパレスチナ人にとっては文化的側面になっている。アイデンティティといっても言い過ぎではないだろう。
また、仮に、国際社会が、パレスチナ人の国を承認したとしても、パレスチナ人たち自身はばらばらで、その中心的な母体となるものは存在していない。危険なテロ組織が渦巻いているだけなのである。ここからどうやって国にするというのか。
一方、イスラエルでも、強硬な右派たちが、ガザに再定住するという、少なくとも現時点では、およそありえないことを真剣に訴えている。このタイミングでは、国際社会のイスラエル非難を煽ることにもなりえない行動である。こちらも、かなりのカオスと言えるのではないだろうか。
このカオスの中で、現場で戦争に駆り出されている兵士たちのことを思わされる。多くが心を破壊され、自殺者が増えている。
また、この暑い中、水や食料を求めて走り回るガザの人々の様子。乾いた食糧を必死で抱き抱える様子。人間としての誇りはどうなっていると叫んでいるガザ市民の訴えもあった。
本当に戦争は、人間を破壊するだけだということがよくわかる。ともかくも終わらせなければならない。しかし、もはや私たち人間には、ここまでのカオスをどうやって終わらせたらいいのかわからなくなっている。主に頼みこむしかない。皆で、主にその声を上げ続けていこう。
