ハッカビー在イスラエル米大使がクリスチャンへのビザ問題でイスラエルに警告 2025.7.19

US Ambassador to Israel Mike Huckabee delivers remarks as US President Donald Trump hosts Prime Minister Benjamin Netanyahu for a dinner in the Blue Room of the White House on July 7, 2025, in Washington, DC. (Andrew Harnik / Getty Images via AFP)

現在、在イスラエル米大使を務めるマイク・ハッカビー氏は、キリスト教福音派牧師でもある。明らかなイスラエル支持者だが、そこに疑問が発生するような動きが報じられている。

キリスト教福音派は、聖書に書かれていることをそのまま信じるキリスト教徒である。聖書によれば、イスラエルは、多くの苦しみを通りながら、神を証するために選ばれた国であることがわかる。イエスキリストも、イスラエルで生まれ、イスラエルで十字架にかかり、イスラエルでよみがえったのである。

すべてではないが、福音派の多くは、クリスチャンの信仰は、イスラエルなしにはありえないものと考えている。そのため、1948年にイスラエルが再建されて以来、イスラエルを支持し、献金や、ボランティア活動で、実質的な支援を続けてきたのである。

しかし、最近の、特に強硬右派系のイスラエル政府は、外国人の滞在を最小限にしようとする傾向にある。右派系議員の中には、福音派がユダヤ人をキリスト教に強制改宗しようとしていると警戒する中で、福音派たちの滞在に反対する人も少なくない。

そのため、近年、イスラエル国内で、イスラエルのためにボランティア活動をするクリスチャンたちですら、イスラエルでの滞在ビザが取りにくくなっている。

ハッカビー大使は、この問題について、5月27日に、モシェ・アルベル内務相(ユダヤ教正統派シャス党)と議論していた。しかし、その後も大きな変化が出ていないことから、ハッカビー大使は、これに苦言を訴える書簡を、アルベル内務相に提出した。

その内容が、かなり厳しかったことや、このアレベル内務相むけの個人的とみられる手紙のコピーを、ネタニヤフ首相と、ヘルツェル大統領、サル外相、ダーマー戦略大臣、オハナ国会議長にも提出していたので、公に取りあげられることになったのである。

ハッカビー大使は、書簡の中で、イスラエルは、キリスト教徒を歓迎していないと公に発表することになると警告。また、アメリカのクリスチャンたちに、イスラエルへの献金は暖かく受け入れられていないとして、この件が解決するまで、イスラエル旅行を思いとどまるように通告するしかないと警告していた。

さらには、イスラエルが、これまで何十年も、普通に継続してきたビザの発行を出し渋るなら、アメリカの領事部に対し、アメリカのビザを取ろうとするイスラエル人に対して、同様の待遇をするよう指示せざるをえなくなるとまで書いていた。

アルベル内務相は、ハッカビー大使のこの動きに、驚きを表明。アルベル内務相は、この問題は、事務的なことであり、イスラエルとクリスチャンたちとの関係に障害となるものではない。福音派たちへの変わらぬ奉仕には、心から感謝していると語った。

この手紙が公になったのが、ガザのキリスト教会が、イスラエルの攻撃で破損したタイミングであったこと。

また、これに先立ち、ハッカビー大使が、西岸地区の過激右派ユダヤ人入植者の暴力で死亡した、アメリカ国籍のパレスチナ人の件について、詳細を調べるよう、イスラエルに要求していたことからも、なんとなく、イスラエルとハッカビー大佐の関係に、水を指すような感じになっている。

しかし、Times of Israelは、イスラエル国内で働く福音派のクリスチャンの声として、「イスラエル政府が、反ユダヤ主義や強制改宗を懸念することは理解できる。しかし、このことでイスラエルとクリスチャンの関係にヒビが入るのは残念だ」と言っていると記録している。

www.jpost.com/israel-news/article-861463

www.timesofisrael.com/huckabee-threatens-to-declare-israel-not-welcoming-christians-as-visa-row-blows-open/?utm_campaign=most_popular&utm_source=website&utm_medium=article_end&utm_content=1

石のひとりごと

筆者も福音派で、イスラエルで奉仕し続けている福音派の知人を多く知っているが、福音派のイスラエルへの想いというのは、そう簡単に変わるものではないと思う。

ハッカビー大佐の思いも本当のところはどうなのかはわからない。しかし、これからの時代、ここにも揺さぶりがくるのかもしれないとも思う。

かつて、宗教改革で、プロテスタントを生み出したマルチン・ルターは、ユダヤ人たちを愛そうとしていた。

しかし、彼らがイエス・キリストをどうしても受け入れなかったので、逆に極端な反ユダヤ主義者に一変したのであった。「ユダヤ人とその虚偽について」というルターの著書がそれを物語っている。残念なことであった。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。