イスラエルとハマス交渉進まず:ガザ戦闘激化で死傷者増 2025.7.16

Mourners pray beside the bodies of Palestinians who were reportedly killed by an Israeli airstrike, during their funeral at Shifa Hospital in Gaza City, July 15, 2025. (AP Photo/Jehad Alshrafi)

ガザに関する交渉進まず:交渉は継続中

ガザ停戦60日、人質解放(生存10人、遺体18人)について、カタールの首都ドーハで行われているイスラエルとハマスの間接交渉は、2-3日以内に動きがあると、先週末、トランプ大統領とネタニヤフ首相も言っていた。しかし、まだ結果は出ていない。

ハマスが、アメリカとイスラエルが提示している案に同意しないからである。争点は、停戦中もイスラエル軍が、ガザ南部で、ラファとハンユニスを分断するモラグ回廊に駐留するとなっていた点であった。

www.ynetnews.com/article/sjywgsxixe

イスラエルは、7月14日(月)に、停戦中に軍が駐留する地域を緩和した案を提出したが、国境からラファを含む3キロの地域とそこに人道居住地を設置する案も加わっていた。

いわば仮設住宅地域を作って、ガザ市民に移動を求めることにはなるが、とりあえず、生活環境を改善し、これからどうするかに備える場所ということである。

実際のところ、国連によると、2023年10月7日以来、ガザ地区では、住宅92%が破壊され、190万人(総人口の90%)が避難状態にある。その中で戦闘もあり、巻き添えで死亡する人も続いている。

こうした状況を改善するために、南部の人道居住地を設立して、避難民を1箇所に集め、ハマスの影響なしに、物資を届けるなどの支援活動をすることが目的だとネタニヤフ首相とその政権は主張しているのである。

しかし、これについては、イスラエル軍は、治安上無理という見解を出して政府と対立。野党党首たちからは、予算(30-45億ドル)を考えても反対意見が出ている。また人々を強制的に移動させての強制収容所みたいだとの批判も出ている。

仲介するカタールは、ハマスからの返答は、2―3日を要すると、合意の可能性が低いことを示唆した。

イスラエルは、その後、15日(火)夜に治安閣議を開催。撤退に関する新たな地図をハマスに提示した。しかし、ガザ市民を収容する人道居住地の計画は残ったままで、ガザ地区周囲にイスラエル軍が駐留する形になっているとのこと。

ハマスはイスラエル軍がガザ国境から1キロ内までの駐留は認めると言っているが、イスラエルは、2キロまでを主張しており、譲る様子はない。カタールやアラブ諸国、また国内からも、ネタニヤフ首相は結局、今のこの段階で、ハマスと合意に至る気はないのだとの批判が出ている。

www.timesofisrael.com/israel-has-eased-stance-on-idf-pullback-in-gaza-but-not-enough-for-hamas-diplomat/

www.timesofisrael.com/amid-heated-debate-no-real-plan-for-humanitarian-city-in-gaza-officials-say/

ガザでの戦闘による死者数増加・食料水問題も悪化か

交渉でもめている間も、ガザでのイスラエル軍による、地下トンネルの破壊や、ハマス関連地域での戦闘は続いている。10月7日の襲撃に関与したテロリストや戦闘員たちの殺害報告も続いている。

しかし、ハマスは、連日、民間人の死者も相次いでおり、7月15日(火)だけで、少なくとも93人が死亡。278人が負傷したと主張している。

www.timesofisrael.com/93-palestinians-killed-in-israeli-strikes-in-gaza-hamas-run-health-ministry-says/

イスラエルは、各地での攻撃の前に避難呼びかけを行っているのだが、ハマスは今も、病院など市民たちの背後で活動しているので、巻き添えは避けられないようである。

ハマスによると、13日(日)には、ヌセイラト難民キャンプの水配布所で、子供20人、大人14人が並んでいたところに、イスラエル軍の攻撃があり、10人が死亡した。

イスラエル軍は、調査の結果、イスラム聖戦を攻撃していた際に、技術的なミスで、この地点への攻撃に至ったと、この件の責任を認めている。以下は、その現場の様相である。

なおこの日は、食料配布所でも10人以上が死亡したとハマスは主張していた。

以下は、Xで出回った映像だが、おそらくラファのGHF食料配布センターの銃撃の様子。イスラエル軍によると、この時、このエリアで、死者は出ていないとのこと。

なお、ガザ市民の食料、飲料水事情は、悲惨になっている可能性がある。国連のパレスチナ支援組織UNRWA(イスラエルはハマスとの連携で批判している)が、数万人のガザの子供たちで調査したところ、栄養失調の子供の割合は、2025年初頭で5.2%だったのが、最近では、10.7%に上昇していた。

国境なき医師団も急性栄養失調の人が急増していると言っている。こうした状況を受けて、イスラエルは、乳幼児や妊婦を意識した食料の搬入を再開したところである。

飲料水については、水道がないので、人々は、供給される水を、遠くまで取りに行かなければならない。

気温はガザでも真夏で、日中は35度を超える日もある。水を取りに行って、イスラエル軍の攻撃を受けて死亡した人が10人という状況である。

www.timesofisrael.com/israel-said-hampering-entry-of-baby-formula-into-gaza-as-child-malnutrition-climbs/

石のひとりごと

ガザ情勢は長引くにつれ、状況はますますカオスになっており、解決がますます見えないくなっている。

しかし、もう止めないと、双方に犠牲者が増えるだけで、イスラエルにとっても不都合なことになっていくだろう。心が沈む思いに負けず、双方を覚えて、取りなしを続けていこう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。