条件が全て揃っていた:イスラエルの歴史的勝利・イラン攻撃の詳細とその成果 2025.6.27

sraeli Air Force navigator participated in the attack over Iran (Photo: Israeli Air Force)

停戦から3日目に入り、12日間の攻撃の検証が進んでいる。ハメネイ師は勝利を豪語しているが、実際のところ、イランは、今後何年もイスラエルを攻撃できなくなっているという見方が広がっている。

イスラエルのイラン攻撃は本当に歴史的な勝利

1)整った条件

Times of Israelによると、イスラエルは、イランの核の脅威に対して、何十年もかけて攻撃を準備していた。しかし、条件が整わず、今まではどの作戦も実行には移されていなかったという。

しかし、今年6月になり、その条件がすべて整った状態になったという。「星が一直線に並んだ」と書いている。

まず、イランはウランの濃縮を60%にまであげており、核兵器化する勢いにあり、2ヶ月後には完成すると予測された。また、弾道ミサイルは、この時点での所持数は2500発だが、増産能力を3倍にしており、2年以内に8800発にする計画にもなっていた。

もしイランの弾道ミサイルが9000発になれば、イスラエルが滅亡するレベルの攻撃が可能になる。今、決断していなければ、本当にイスラエルが絶滅に向かう可能性があった。

さらに好条件も整っていた。2023年10月7日のハマスの攻撃をきっかけに、イラン傀儡、ハマスだけでなく、レバノンのヒズボラへも大きな打撃を与えている。

イエメンのフーシ派も、アメリカとイギリスとの戦闘となり、イスラエルも攻撃する中、弱体化していた。

さらに、イスラエルにとっては予想外にも、シリアのアサド政権が崩壊したことである。これにより、1500キロ離れた、イスラエルとイランの間に障害がなくなった形となった。まさに、イランへの攻撃をする条件が整ったといえる。

また、攻撃の決断には、今年4月に新しく就任した、イスラエル軍のザミール参謀総長が大きく関わっていた。ザミール参謀総長は、先制攻撃を6月にするとし、それより遅れたら取り返しのつかないことになると言っていた。そのために、作戦を「ライジング・ライオン」と命名したとのこと。

前のどちらかといえば穏健派の参謀総長が辞任し、まさに新しい出発になっていた時だった。

2)断続的作戦実行:イスラエルが破壊したイランの軍事施設、核施設

June 27, 2025. (Israel Defense Forces)

イスラエル軍は、6月13日から、準備していた作戦を次々に実行していった。まず、テヘランで「レッドウエディング作戦」を行い、イラン軍の最高位司令官3人を含む最高司令官たち30人を殺害した。

イラン軍は指揮系統が乱れて、丸一日、反撃できなかった。

特にこの作戦では、イランに誤った情報を流してIRGC(イラン革命防衛隊)幹部たちを1カ所に集めてから攻撃していた。

また同時に行われた「ナルニア作戦」では、核兵器の開発をしていた、トップクラス核科学者11人以上が死亡した。その後数時間、イランの防空システムを破壊しながら複数の弾道ミサイル発射地と核施設への攻撃も実施した。

IDF

12日の間に、イスラエル空軍は、1500回以上、戦闘機部隊を発進させていた。空軍が攻撃した標的は900カ所。4300発の弾薬が使われた。

イランまでは1500キロあるので、600回以上、空中給油も行ったという。UAVは8機撃墜されたが、戦闘機は一機も撃墜されなかった。

これらの攻撃で、イランは、地対空ミサイル発射地約100基の

弾道ミサイル発射地 IDF

うち80基を失った。また、戦闘機とドローンで、弾道ミサイル発射地400基のうちの200基を破壊。ミサイルなど防空武器生産施設35かを破壊。

イランの戦闘機15機、レーダー70基、空港と空軍基地6ヶ所を破壊。指令センター数十ヶ所も破壊した。

さらに停戦直前のテヘランへの集中攻撃で、IRGCの主にバジンとよ慣れる国内治安部隊の隊員約300人が死亡した。

この日、イスラエルから最も遠いマシュハド空港(イスラエルから2400キロ)で、イランの給油機を破壊した。これでイランからイスラエルまで戦闘機が来ることが難しくなった。

核施設への攻撃については、イスファハンのウラン変換インフラと研究室、ナタンツでは、遠心分離機とその他のインフラも破壊した。

稼働していなかったアラク重水炉も破壊、もしくは重篤なダメージ。これらにより、破壊した遠心分離機は、数千台に及んでおり、高濃度ウランの生産能力、研究、その他関わっている施設も大規模に破壊した。

フォルドーでは、イスラエルが地上施設を攻撃した後、アメリカがバンカーバスターで攻撃していた。

どの程度破壊したかはわからないと言われていたが、元IDF最高司令官のアミドロール氏は、写真を見れば、複数のバンカーバスター爆弾が、投下されたにも関わらず、周りに影響を及ぼすことなく、真っ直ぐに入っていたことはわかると述べ、地下深くの施設を破壊できていることは明らかだと述べた。

なお、イスラエルは、アメリカが参戦しない場合に備えた作戦を持っていたという。

in Vienna, Austria on June 23, 2025. (Joe Klamar / AFP)

その後、IAEAのグロッシ事務局長も、フォルドーへの攻撃は非常に重篤で、遠心分離機はもはや稼働していないとの認識を発表した。

www.timesofisrael.com/iaea-chief-expects-very-significant-damage-at-irans-fordo-site-demands-access/

高濃度に濃縮されたイランは、みつかっておらず、イランが、保持しているままである。

しかし、イスラエルが、地上設備やアクセスを破壊している。また、濃縮工場や核兵器化する施設もほとんど破壊しているので、濃縮ウランがあったとしても、それを核兵器にまで仕上げる施設がないとアミドロール氏は言っている。

こうしてみると、ネタニヤフ首相が言っているように、イスラエルにとっての大きな存続への脅威2つ、イランの核兵器と、弾道ミサイルの脅威を、少なくとも年単位で阻害できたと言えそうである。

www.timesofisrael.com/the-stars-aligned-why-israel-set-out-for-a-war-against-iran-and-what-it-achieved/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。