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イスラエル閣議で合意承認で可決:停戦は明日19日(日)朝8:30発効
イスラエルとハマスは、1月16日(木)、カタールでの交渉において、1月19日(日)の停戦発効と、人質33人の解放、パレスチナ囚人の釈放を順次行っていくことで合意。少し遅れて17日(金)に、両者は署名も終えた。
イスラエルでは、署名後すぐに、この合意に関して、まず治安閣議が行われ、合意への了承で可決した。
その後の閣議全体での審議は、安息日に入ってしまうことから、土曜安息日明けまで延期されると予想され、そうなると、人質の解放は、20日(月)にずれ込むと言われていた。
しかし、治安閣議で合意が承認されたあと、全閣僚による審議も続いて開始され、安息日が始まっても継続されて、約7時間後に、賛成24、反対8と、こちらも合意に承認で可決された。これをもって、イスラエルは、政府をあげて、正式に合意を承認したことになった。
カタールは、42日間の停戦は、予定通り明日19日(日)朝8:30(日本時間午後15:30)に発効すると発表した。
多くの議論がある問題で、反対票を投じた8人の閣僚は、極右政党と、リクードからも2人の閣僚が反対票を投じていた。1人は棄権していたとのこと。
閣議にあたり、カタールで、交渉にあたっていたモサドのバルネア長官は、この交渉は人質の命を救うという道徳的な観点からも正しいことであると訴えた。
また、危険なテロリストが釈放されることについては、2011年に、ハマスとの交渉で、シャリートさん一人を取り戻すためにハマス1027人を解放した際、釈放されたテロリストの82%がテロ活動に戻っていたという、厳しい現状があるが、今のイスラエルにはそれに対処する力があると主張したとのこと。
解放される人質33人のリスト
イスラエルが合意した、順次、解放予定の人質33人は、以下の人々である。大部分生きているとみられてはいるが、まだわからないという。どの順番で解放されるかは、初回解放の24時間前に知らされるとのこと。
解放は、初日は3人、7日後に4人、その後、毎週4週間、毎週3人が解放され、第一段階の最後の週(2月末)に14人が解放予定である。
1列目(左から右):ロミ・ゴネン(23)、エミリー・ダマリ(27)、アーベル・イェフッド(29)、ドロン・スタインブレチャー(31)、アリエル・ビバス(5)、クファー・ビバス(2)、シリ・ビバス(33)、
2列目:リリ・アルバグ(19)、カリーナ・アリエフ(20)、アガム・バーガー(21)、ダニエル・ギルボア(20)、ナアマ・レヴィ(20)、オハド・ベン・アミ(58)、ガディ・モシェ・モーゼス(80)
3列目:キース・シーゲル(65)、オファー・カルデロン(54)、イーライ・シャラビ(52)、イツィク・エルガラト(70)、シュロモ・マンスール(86)、ヤハド・ヤハロミ(50)、オデッド・リフシッツ(84)
4列目:ツァヒ・イダン(50)、ヒシャム・アル・サイード(36)、ヤルデン・ビバス(50)、サギ・デケル・チェン(36)、ヤール・ホーン(46)、オメル・ウインケルト(23)
サーシャ・トルハノフ(28)、エリヤ・コーヘン(27)、オール・レビ(34)、アベラ・メンギツ(38)、タル・ショラム(39)、オメル・シェム・トブ(22)
この中には、12人の女性と子供が含まれており、2人の幼児を含むビバスさん一家は全員含まれている。なお、クファルちゃんは、8か月で人質となり、本日1月18日に2歳の誕生日を迎える。
息子2人が人質になっているルース・ストロムさんは、2人のうち1人、イエールさん(46)だけが、33人のリストに名前があがっている。
もう一人の息子、エイタンさん(38)は残されることになる。非常に複雑だと報じられている。
www.timesofisrael.com/a-mothers-anguish-one-son-to-be-freed-from-gaza-another-left-behind/
イスラエルが第一段階で釈放するパレスチナ人は囚人737人含む1904人
イスラエルが代わりに、第一段階で、刑務所から釈放するパレスチナ囚人は737人と、ガザで身柄を拘束したパレスチナ人1167人(10月7日襲撃に参加していなかった者)で、最大で計1904人を釈放することになる。
このうち、95人が、明日19日(日)、人質3人と交換に釈放される予定とのこと。ただし、イスラエルは、95人の釈放は、人質3人の解放を確認してからになるとし、午後4時以降になると言っていた。
釈放される囚人のリストに名前が上がっているのは735人。ハマス、イスラム聖戦、ファタハ(パレスチナ自治政府)に所属し、テロ行為で逮捕され、イスラエルの刑務所にいる者たちで、殺人級極悪犯で、終身刑の者も含まれている。
特に注目されたのが、ファタハのアルアクサ殉教団司令官ザカリヤ・スベイディである。
ズベイディは、2000年代の第二インティファーダを導いた指導者の一人で終身刑である。
2021年、イスラム聖戦の5人とともに、イスラエル北部の刑務所からの脱獄を試みたが、逮捕されていた。
加えて、イスラエル軍は昨年、ジェニンで、突出したテロ指導者とされる、ズベイディの息子モハンマドをドローンで殺害。
ズベイディの兄弟ダウードも昨年、イスラエルとの戦闘で重傷を負った。ズベイディは、イスラエルへの憎しみを十分維持していると考えられる。
信じがたいことに、ズベイデイは、西岸地区のあのテロリストの巣窟、ジェニンに戻ることが許されている。
第二段階へ移行についての意見の相違
第一段階開始では合意したが、まだ意見の不一致は残されている。現時点での大きな意見の違いは、第二段階で、イスラエルがハマスへの攻撃を再開するか否かである。
ハマスは、停戦から、恒久的な停戦に持ち込んで、戦力の回復を図ろうとしている。このため、汚い手を使ってでも、イスラエルが残り65人の人質を優先して、恒久的な停戦を余儀なくさせる手を使ってくるかもしれない。
その場合、残り65人の人質を取り戻せるかもしれないが、ハマス殲滅という目標は放棄することになり、今後のガザ運営にハマスが影響力を及ぼすことは避けられなくなる。
逆に、ハマスのこうした動きを、停戦の約束破りだとして、イスラエルが戦闘を再開した場合、残り65人の人質は、事実上、見捨てることになり、戦闘が長引いていくことになる。
ネタニヤフ首相は、閣僚に対し、トランプ次期大統領が、第二段階で、もし停戦が崩壊し、イスラエルが戦闘に復帰した場合、アメリカはこれを支持し、バイデン政権下で保留とされた武器支援の搬送を再開すると約束したと伝えていた。
国民の意志は?恒久的停戦になっても合意すべき55%
非常に難しい決断だが、17日に公共放送カンが行った世論調査によると、国民の55%は、たとえハマス殲滅を断念することになっても、人質を全部取り戻すべきだと答えていた。
第一段階の後、戦争を再開すべきだと答えた人は27%にとどまっていた。
ネタニヤフ政権を支持する右派系市民でも、45%は、人質を取り戻すことに合意に賛同していた。しかし、第二段階で戦闘を再開すべきだと答えた人は46%だった。
国民の過半数は、ハマスとの合意に賛同してはいるが、なぜここまで交渉がかかってしまったのかについて、ハマスに責任があると考える人は36%で、イスラエル政府に責任があると考える人が25%、どちらにも責任があると答えた人が22%と、イスラエルにも責任があったと考える人が、半数近くいることも明らかになっている。
石のひとりごと
総合的に見て、イスラエルはハマスをかなり無力化したのだが、その後の合意は、なんともイスラエルにとって、不条理な合意に見える。
テロリストが西岸地区、しかもジェニンに戻ることが許されるというのも理解困難である。
ここまでトランプ次期政権に譲歩する?ということは、ネタニヤフ首相になにかそうとうな魂胆があるのかなと思ったりする。石のひとりごと。