ハマスとイスラエルが交渉で合意:19日から42日間停戦・人質33人解放開始予定 2025.1.16

Demonstrators embrace each other after the ceasefire and hostage release agreement between Israel and Hamas is reported, Tel Aviv, January 15, 2025. (Jack GUEZ / AFP)

ハマスとイスラエルが停戦と人質交換に合意

ハマスに1200人を残虐に殺され、人質251人を取られてから15か月。カタールで進められていた停戦と人質交換に関する交渉で、1月15日(水)午後、イスラエル、ハマス、仲介のアメリカ、エジプト、カタールが合意する条件に到達した。

カタールのアル・サーニ首相が記者会見で合意の確認を表明している。

しかし、詳細はまだ確定しておらず、解放される人質の名簿も、イスラエルが釈放するパレスチナ囚人の名前も明らかでない。イスラエルは、この合意を持ち帰って国会での審議を行っているところである。

しかし、イスラエル軍は、すでに解放される人質を受け入れる準備を始めており、そのプロジェクトを「Wings of Freedom(自由の翼)」と名づけて、待機している。

現時点での合意内容

1)停戦と人質解放について

両者は1月19日(日)午後12:15(日本時間午後19:15)、第一段階とされる42日間(6週間)の停戦に入る。ハマスは、初日にイスラエル人女性人質3人を解放する。

7日目に女性4人が解放され、以後、7日ごとに3人が解放され、停戦最終の週に14人の計33人を解放する。

その内訳は、Ynetが伝えるところによると、民間女性4人、女性兵士5人、ビバスさん一家の母と2人の子供たち、ビバスさん一家の父親を含む50歳以上の男性10人、高齢者、病人、負傷男性11人となっている。

最新の情報では、この中に、アメリカ人人質も2人含まれているもようである。

しかし、ハマスはまだ解放する人質の名簿をイスラエルに提出しておらず、停戦から7日後に提出するとなっている。しかし、まず生きている人質から解放し、遺体はその後になるとのこと。

残りの65人の解放は、第二段階に合意したら解放され、第二段階に関する協議は停戦開始から16日後に開始する。

2)イスラエルのパレスチナ囚人釈放

イスラエルは、合計すると、終身刑でイスラエルの刑務所にいる290人と、その他の囚人1687人を釈放する・その内容は以下の通りである。

しかし、これは最終決定ではなく、実際に生きて解放される人質がどれぐらいいるかにも関わってくる数字である。遺体になっている囚人の変換も検討されている。

民間人人質5人とビバスさん一家の2人の子供の解放に対し、パレスチナ人囚人の中で、未成年と女性の210人を釈放する。

女性兵士5人の解放に対し、終身刑に処せられているパレスチナ人テロリスト150人と追加で100人の計250人を釈放する。

病人・負傷者人質9人の解放に対し、終身刑のパレスチナ人テロリスト110人と、追加の100人を釈放する。

10人の成人人質の解放に対し、終身刑30人のパレスチナ人と、追加の270人を釈放する。

2014年にガザに迷い込んでそのまま帰れなくなった2人の男性に対し、パレスチナ人囚人60人と、シャリート兵士解放の際に交換で解放され、再びテロリストとなって、再びイスラエルに収監されたテロリスト47人を釈放する。

この他、10月7日以降にガザで逮捕された1000人を釈放するが、10月7日当日虐殺に関わった者は含まれない。

釈放される先は、ガザはいうまでもなく、西岸地区でもない。カタール、トルコ、アルジェリアなど、第3国となっている。ただ、殺人に関わっていない囚人は、ヨルダン川西岸地区に自宅がある場合は、帰宅できるとされている。

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3)イスラエル軍のガザからの撤退

イスラエル軍は、上空での活動を1日10時間に制限し、人質交換の間は12時間に制限する。ガザの町々とガザを南北に分断するネッアリム回廊から徐々に撤退する。

フィラデルフィ回廊に駐留するイスラエル軍を縮小し、50日目までに全部撤退する。

まだ全てが終わったわけではない

合意に至ったとはいえ、まだすべてが終わったわけではない。第一段階がどう進むのか。途中で頓挫してしまう可能性は、まだ十分ある。

また仮に第一段階で人質33人が戻ったとしても、果たしてハマスは残り65人質を全部返すだろうか。それはハマスの終焉を意味することである。

さらには、ガザの再建について、戦後、だれがどのようにするのかなど、まだ全く合意には至っていない。

国際社会はパレスチナ自治政府を管理者にと考えているが、イスラエルはこれに断固反対である。イスラエルは、戦後のガザにハマスが帰らないよう、国際社会ではなく、自身で行うことを主張している。

問題はまだまだ山積以上で、解決には、まだ程遠いということである。

ローラコースターに乗った人質家族たち

テルアビブの人質広場に祝いの様子はない。人質が本当に帰ってくることは喜びではあるが、まだ本当に帰ってくるのかわからない。帰ってきても全員ではない。

複雑な思いと、今まで合意しなかった政府への怒りもあり、今後また合意をひっくり返すかもしれないといった心境を表明している。

また、33人が解放されるとのことだが、まだ解放される人質の名簿は発表されていないので、特に人質家族にとっては、ローラーコースター状態である。

まず生きているのか死んでいるのか。いよいよ明らかになるかもしれない。

また、第一段階で、自分の愛する家族が解放されたら、それこそ究極の喜びだが、もし第一段階の33人の中に入っていなかったら、解放される可能性は一気に遠のくことになる。

まさに心に地獄のような時をすごしている。

www.timesofisrael.com/hostage-families-on-roller-coaster-as-they-celebrate-deal-worry-for-loved-ones-fate/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。