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イスラエル政府が合意に関する審議:命の取引
イスラエルは、15日夜から国会にてこの合意に関する審議を行っている。
ユダヤ教正統派系の正統派、合意で救われる人質がいるならトーラーにかなっているとして、合意を表明。野党代表のラピード氏、ガンツ氏もこれに合意すると表明した。
問題は、強硬右派政党である。ネタニヤフ政権は、かつてギリギリの過半数であったため、ハマスとの合意を絶対に受け入れない、極右のベングビル氏(国内治安相)の意思に反して、合意にいたることは不可能であった。
しかし、昨年、元リクードのギドン・サル氏とその党が、連立に復帰したことから、今は、極右のベン・グビル氏と、強硬右派の宗教シオニスト党スモトリッチ氏の両方が、反対票と投じたとしても、サル氏が合意すれば、なんとか、過半数を確保できる。
サル氏は、「今、合意を延期したら、助かったかもしれない命が助からないかもしれない」と苦渋の合意を表明した。このように、おおむね可決される見通しである。
しかし、助かる人質がいる一方で、残りの65人については、助かる見込みが遠のく可能性が高くなり、助からないかもしれないという、非常に繊細な命の取引である。ネタニヤフ首相としてはできるだけ広範囲の同意を得ておきたいところだろう。
カタールでの合意が発表される前、ベン・グビル氏は、明確に合意に反対を表明し、強硬右派宗教シオニスト政党のスモトリッチ氏(経済相)にも反対するよう呼びかけていた。
スモトリッチ氏は、「この合意は、イスラエルの安全保障にとって悪出かつ危険な取引だ」と非難。合意で戻ってくる人々の喜びではあるが、同時に、これまでの戦争の成果を覆すことになると述べた。
しかし、国会で反対票を投じるかどうかには言及しなかったが、どう出るかはわからない。
ヘルツォグ大統領は、国民に対し、政府と交渉チームの努力を支持すると合意を支持する立場を表明した。ヘルツォグ大統領は、この取引を「正しい」としながらも、この合意が実施された時は、非常に大きな痛みと困難を伴う悲惨な時になるだろうとも語った。
石のひとりごと
これはまさに命の交渉である。確かにサル外相が言うように、たとえ少人数でも、たとえ残る人質がさらなる絶望に陥ったとしても、命があるうちに少しでも、助け出すことが正しい決断なのだろう。
またイスラエル兵も戦死しなくてよくなる。しかし残ってしまう人質を次、どう救出するのだろうか。イスラエル軍は撤退してしまうのである。
また、命の問題ながら、政治との関わりも否定できないことも心痛む現状だ。
今回、ようやく合意に至ることになったのは、強硬右派政治家の立場が変わったこともその要素であったとみられる。人質家族たちは、これまで政府が、強硬右派に振り回された結果、合意がここまで遅くなり、助けられたはずの命も失われたと怒りを表明している。
また、今回、ネタニヤフ首相を合意へと動かしたのは、人質への思いではなく、トランプ氏であったとも言われている。
停戦の発効が1月19日とトランプ氏の大統領就任前日であることから、トランプ氏は、まさに宣言した通り、就任前までにガザでの停戦に持ち込めた。
もしかしたら、ネタニヤフ首相は、今回、痛みを伴う譲歩をしてでも停戦に持ち込むことで、トランプ大統領に借りを作って、次にイランへの攻撃に有利に協力してもらうことも計算しているのではないかとも思ったりする。
もしくは、遠回りをしてでもハマスの殲滅を可能にする作戦があるとか・・・想像にすぎないのではあるが・・
本当にイスラエルは、今に限らず、先が見えない中で、常に究極の決断をさせられている。次のみことばを思い出す。
私は山に向かって目を上げる。私の助けは、どこから来るのだろうか。私の助けは、天地を造られた主から来る。
主はあなたの足をよろけさせず、あなたを守る方は、まどろむこともない。見よ。イスラエルを守る方は、まどろむこともなく、眠ることもない。(詩篇121:1-2)