人質交渉どろどろのやりとり:ハマスは19歳人質女性のビデオ公開 2025.1.6

人質のリリー・アルバグさん

トランプ次期米大統領就任までの人質解放は困難?:カタールで交渉また再開

トランプ次期米大統領は、ハマスに対し、自分が1月20日に大統領に就任するまでに、人質を全員解放するよう、要求し、もしそうしないなら、大きな打撃を受けると宣言している。

その1月20日が近づく中、カタールの首都ドーハでは、これまでに何度も挫折を繰り返してきた、ハマスとイスラエルの人質解放と停戦に関する交渉が、新年早々からまた再開されている。

ドーハへは、イスラエルから、モサドのバルネア長官が向かっている他、イスラエル国内では、ネタニヤフ首相が特別閣議を行なっている。

しかし、流れはこれまでと同様で、ハマスが解放する予定の34人の名簿を出したとか出さないとかで、両者の意見は食い違っている。

また、ハマスが完全停戦を求めているのに対し、イスラエルは、ガザに駐留を続ける意向を変えていない。平行線のままである。トランプ次期大統領の就任までに、人質を解放させることは、難しいとの予測が広がっている。

そのぎりぎりの中、イスラエルとハマスは、それぞれが、どろどろのやりとりをすすめている。

ガザではIDFがハマスなど壊滅と負傷テロリスト60人を治療:降参を引き出せるか

イスラエルは、ガザでのハマスやイスラム聖戦のトンネルやインフラの破壊とともにその拠点を破壊する作戦を進めている。

アルーツ7の記事によると、北部ジャバリアでの戦闘に参加したタル・アリハ大尉が、イスラエルの戦闘方針が、変わったと言っている。

これまでは、ハマスやイスラム聖戦などのトンネルや武器庫を探し出すことと、テロリストを殺害か逮捕することが中心だった。

しかし、拠点はそのままにしてきたので、その後、また別のメンバーが戻って来て、イスラエル軍は、また同じ場所へ突入しなければならなくなる。まさに、いたちごっこであった。

このためか、最近のイスラエル軍は、ハマスやイスラム聖戦の拠点をどんどん破壊しているという。拠点がなければ、ハマスたちが戻ってくる場所もないからである。

しかし、拠点を壊すということは、病院や学校など、町の建物も壊すことになるため、アリハ大尉によると、ジャバリヤは、今や崩れたロゴのようになっているとのこと。

アリハ大尉は、ジャバリアでの戦闘に加わり、カマル・アドワン病院から脱出しようとした戦闘員18人と戦う中、対戦車砲で負傷した。しかし、その後、医師の指示に反してガザに戻っていた人物である。

アリハ大尉は、もうハマスが戻ってくるような場所がないほどに破壊したので、ジャバリアに入るのはこれが最後になると思うと語っている。アリハ大尉は、この戦闘は、背後にいるイスラエル市民を守るためだと語っている。

www.israelnationalnews.com/news/401840

一方で、エルサレムポストによると、イスラエル軍は、カマル・アドワン病院で拘束したハマスとイスラム聖戦戦闘員60人を、イスラエル国内のイチロフ病院などで、治療していると報じている。

こうした状況の中、ハマスが交渉で、降参するかどうかといったところだろうか。

www.jpost.com/breaking-news/article-836218

ハマスは心理作戦でイスラエルの妥協をねらうか:人質リリー・アルバグさん(19)の映像を公開

ハマスとイスラエルは、違いに、早く戦争を終わらせなければという思いを掻き立てようとしているようである。

ハマスは、これまでからも、残酷なクリップを家族に送りつけるという悲惨きわまりないことをしてきた。

今回も、交渉が行われる中で、生存しているとみられる人質リリー・アルバグさん(19)の3分半にわたる映像を、家族に送りつけてきた。

家族はあまりに悲惨な映像の公開を望まないとして、静止画の一部だけが公開されている。

アルバグさんは、2023年10月7日のハマス襲撃時、ガザ国境に近い、キブツ・ナハル・オズの軍事基地で監視兵として駐留していた。この時、一緒にいた監視兵15人が殺害され、リリーさんを含む6人がガザへと拉致された。

悲壮な表情の両親が、ネタニヤフ首相と関係者に交渉と進めるよう要求する声明を出したている。

両親は、映像の中で、リリーさんが見ているかもしれないので、リリーさんにむかって、必ず生きて帰らせるとの約束を呼びかけている。

www.timesofisrael.com/hamas-releases-video-with-sign-of-life-from-19-year-old-hostage-liri-albag/

www.ynetnews.com/article/ryellvdlkl#autoplay

人質解放を訴えるデモ:テルアビブとエルサレム

リリーさんのビデオが公開された後、1月4日日没からの政府に人質解放を訴えるデモが、テルアビブとエルサレムなど全国で行われた。

テルアビブでは数千人が参加する中、5人が逮捕された。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。