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世界でイスラエル兵を戦犯として訴える動き
昨年11月、国際刑事裁判所(ICC)は、ネタニヤフ首相とガラント前防衛相に対し、戦争犯罪と国際人道法違反で逮捕状を出した。ICC加盟国の124か国は、もしネタニヤフ首相が訪問してきた場合、義務ではないが、基本的には逮捕することが求められる形である。(アメリカは非加盟)
こうした中、世界では、実際にガザ現地で戦闘に加わったイスラエル軍兵士たちの中で、過激な発言や攻撃をした者を戦争犯罪者として告訴し、逮捕しようとする動きが出ている。
2024年11月、あるイスラエル兵がキプロスにいた際、SNS上で、兵士の個人情報やガザでの行動の映像が出された後、危うく逮捕されそうになり、直前に脱出してイスラエルに戻るという事件が発生していた。
その後、アラブ首長国連邦、オランダでも3人の兵士があやうく逮捕される前に、帰国を余儀なくされた。
今年に入ってからは、1月5日(日)、ブラジルでも同様の事件が発生し、イスラエル外務省が動いて、予備役兵が危機一髪でアルゼンチンへ逃れることができた。
兵士はまだイスラエルには戻っていないが、無事とのこと。この兵士は、10月7日のハマスの襲撃を受けたノバ音楽フェスにいて、生き延びた兵士だった。
www.jpost.com/international/article-836100
この件では、外務省が関わったこともあり、今後、ブラジルとの外交関係に発展する可能性があると言われている。
イスラエル外務省によると、イスラエル兵に対する告訴状が、ブラジル、スリランカ、タイ、ベルギー、オランダ、セルビア、アイルランド、キプロスで、少なくとも12件、提出されているとみられている。
対象となる、イスラエル兵の名前が発表されていないため、たとえ、予備役として徴兵された兵士(職業軍人ではない)であっても、これらの国々を訪問した際に、突然、逮捕される可能性がある。
反イスラエル団体ヒンド・ラジャブ財団:ICCにイスラエル兵1000人に逮捕状を要請
これらの背後にいるのが、ベルギーに拠点を置く、反イスラエル団体、ヒンド・ラジャブ財団(HRF)である。この団体は、国際社会において、法的にイスラエル軍兵士を訴えようとする反イスラエル団体である。
ヒンド・ラジャブ財団(HRF)は、ベルギーを拠点にして、2024年9月に設立され、2ヶ月後の11月、イスラエル兵によるガザでの封鎖、インフラ破壊、家屋占拠や略奪、民家人への攻撃などの証拠8000点をもって、ICC(国際刑事裁判所)に対し、イスラエル兵1000人の逮捕状を要請している。
この財団は、2024年1月下旬に、ガザ市でイスラエル軍による攻撃で死亡したとされる、6歳の少女ヒンド・ラジャブちゃんの事件を元に、2024年9月に設立された。
ヒンド・ラジャブちゃんとその家族5人は、車の中にいる時にイスラエル軍の砲撃を受けて死亡したとされる。
HRFによると、家族と共に銃撃を受けたヒンドちゃんが必死に救助を求める中、救助に向かっていた救急車をイスラエル軍が、故意に妨害し、医療スタッフも2人死亡したと訴えている。
この時の悲壮な会話の録音なども残っているとのこと。以下は攻撃された救急車。もし事実であれば、非人道的な出来事といえる。
What remains of the PRCS ambulance sent to rescue Hind Rajab 12 days ago. The ambulance was bombed by the Israeli occupation, resulting in the deaths of the crew, Yusuf Al-Zeino and Ahmed Al-Madhoun.#Gaza #NotATarget ❌#IHL #TheyKilled_Hind_YousefAndAhmed pic.twitter.com/TrCqRSvZYA
— PRCS (@PalestineRCS) February 10, 2024
しかし、イスラエル軍は、事件当時、イスラエル軍がその地域にはいなかったと主張。また救急車は多数行き来していた時であり、特定の1台を標的にすることはないとも言っている。
なお、HRFを立ち上げたのは、長年反イスラエル運動を継続してきたレバノン出身のディアブ・アブ・ジャジャである。エルサレムポストによると、ジャジャは、ヒズボラ支援者で、ヒズボラの軍事訓練を受けたと主張しているとのこと。
また、ジャジャは、ヒズボラのナスララ党首が死亡した際、Xに、「抵抗組織の指導者は殺しても、おまえたち(イスラエル)への証になるだけだ。歴史は書き残すだろう。彼らは立ち上がり、Noといい、道を示して、大勢がそれに従った。おまえたちの支配は終る。そうなることになっている。」と投稿していた。
www.jpost.com/israel-news/article-836118
石のひとりごと
なんとも恐ろしいばかりの憎しみが滲み出ている。しかし、ジャジャと呼ばれる人が、イスラエル人に直接会ったことはあるのだろうか。
6歳の少女が戦争の中で、死亡したことは、確かにあってはならないことである。混乱の極みの戦場なので、イスラエル軍であっても、正常でありつづけることは難しいという可能性も絶対にないとはいえないかもしれない。
しかし、イスラエル人に会ったことがある者として言うなら、実際にイスラエル軍が、意図的に救急車を攻撃、妨害するとは、どうにも考えにくい。とにかく命を大事にする人々で、特に子供をかわいがり、人生の中で、家族を最も大事にする人々だからである。
人生途上で徴兵され、苦しい日々を送った若い20歳そこそこの予備役兵たちは、北部が停戦になるなどして、今は多くが兵役をい終えて、帰国している。この機会に世界に出ていく人も少なくない。
そこで、戦争犯罪社として、逮捕されるかもしれないという状況である。彼らの身の上だけでなく、心もまた心配である。